アゼライン酸を中和せず有効性保って製剤中に溶解させる技術開発 ロート製薬

痤瘡への有効性を示す低刺激セラム剤型を確立

図1:低濃度アゼライン酸セラムの特徴

 ロート製薬は8日、アゼライン酸(AZA)を中和することなく有効性を保ちながら製剤中に溶解させる技術を開発し、刺激や使用感にも配慮したAZA20%クリームと同程度の痤瘡への有効性を示す低刺激セラム剤型を確立したと発表した。
 AZAは尋常性痤瘡に対する選択肢の一つとして推奨される成分だ。一方、水にも油にも溶けにくく、高濃度での溶解製剤化が難しい成分として知られ、従来は、AZAをクリーム中に「分散」させる方法が広く用いられてきた。
 また、溶解性を高めるために、誘導体化やアルカリ添加による中和なども行われているが、これらの方法ではAZA本来の機能が低下する場合がある。今回、本技術を開発するとともに、その技術を用いたAZA3%配合溶解型セラムと、従来のAZA20%配合分散型クリームについて、12週間の臨床試験による評価を行った。
 その結果、AZA3%溶解型セラムは、AZA20%分散型クリームと同程度の総皮疹数の減少を確認し、使用初期のかゆみ・刺激感が少ない傾向が確認された。
 また、AZA3%溶解型セラムは、AZA20%分散型クリームと比較して皮膚への浸透効率が高く、低濃度でありながらアクネ菌に対して高い殺菌効果を示した。同研究結果は、第44回日本美容皮膚科学会総会・学術大会(2026年8月1日)で発表された。
 AZAは弱酸性で、pH条件によって電離状態が変化する。殺菌作用は低pH条件で高くなることが報告されており、ロート製薬の検討でも、中和度が高くなるほど皮膚への浸透性が低下することを確認した。
 一方、AZAは中和すると溶解しやすくなるため、中和せず溶解させることが技術的な課題であった。そこで同社は、AZAを主として中和することなく製剤中に完全溶解させる技術を開発。低濃度でありながら皮膚への効率的な新党特性や殺菌作用などの特性を生かし、刺激にも配慮したセラム製剤の実現に至った。

◆結果1:AZA3%溶解型セラムで、12週間後に総皮疹数が減少

 軽症~中等症の尋常性痤瘡を有する28名を対象に、12週間の評価者盲検無作為化左右比較試験を実施した。対象者の左右の半顔に、AZA20%分散型クリームまたはAZA3%溶解型セラムを、それぞれ1日2回使用した。
 その結果、AZA3%溶解型セラムはAZA20%分散型クリームと同程度まで、総皮疹数が減少することを確認した。また、AZA3%溶解型セラムは使用開始から比較的早い時期においても皮疹数が減少し、4週後の総皮疹数の変化率ではAZA20%分散型クリームと比較し、より大きな減少が認められた。

◆結果2:副作用の発現はなく、使用初期のかゆみ・刺激感も少ない傾向

 12週間の試験期間中、試験品との因果関係が認められた副作用はなく、中止・脱落例もなかった。塗布後のかゆみおよび刺激感について被験者自身が評価したところ、いずれの製剤でも使用期間が長くなるとともに「感じなかった」と回答する人が増加した。特に2週間使用時点で、AZA3%溶解型セラムはAZA20%分散型クリームと比較し、「かゆみを感じなかった」と回答した方の割合は23.0ポイント、「刺激感を感じなかった」と回答した方の割合は18.4ポイント高くなり、AZA3%溶解型セラムは使用初期の刺激を感じにくい傾向がみられた。同技術により刺激に配慮しながら、AZAの有効性を生かせる可能性が示された。

◆結果3:AZA3%溶解型セラムで、皮膚へのAZA浸透効率が約4倍に

 ヒト皮膚を用いて、AZA20%分散型クリームとAZA3%溶解型セラムの皮膚への浸透性を比較しました。製剤塗布24時間後に、角質層、表皮・真皮およびレシーバー液中のAZA量を測定した。その結果、塗布したAZA量のうち、皮膚(角質層、表皮・真皮およびレシーバー液)の角質層以降に移行したAZAの割合は、AZA3%溶解型セラムでAZA20%分散型クリームの約4倍となった。
 この結果から、AZAを中和することなく溶解させることで、低濃度でもAZAを効率的に皮膚へ浸透させられる可能性が示された。

◆結果4:アクネ菌に対する高い殺菌効果を確認

 AZA3%溶解型セラムと20%分散型クリームについて、アクネ菌に対する殺菌力を評価した。その結果、AZA3%溶解型セラムは20%分散型クリームと同等の殺菌効果を示した。低濃度でありながら、AZAを溶解状態で配合することで、その特性を生かした製剤となっていることが示唆された。

 今回の研究から、難溶性であるAZAを中和することなく刺激に配慮しながら溶解させる製剤技術によって、低濃度でありながらAZAを効率的に皮膚へ浸透させ、その特性を発揮できる可能性が示された。
 さらに、軽症~中等症の尋常性痤瘡を有する方を対象とした臨床試験において、AZA3%溶解型セラムはAZA20%分散型クリームと同程度まで皮疹数が減少し、かつ使用時において刺激を感じる人が少ないという結果が得られた。また両試験品との因果関係が認められた副作用はなかった。
 AZAを「高濃度で配合する」という従来の考え方だけでなく、成分の状態をコントロールし、浸透効率を向上しつつ刺激を低減するという新たな製剤設計の可能性を見出した。ロート製薬は今後も、成分そのものが持つ力を引き出しながら、顧客が日々使い続けやすい製剤の開発を目指し、研究を進めていく。

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