新型コロナ経口治療薬「ゾコーバ」 P2/3相試験Phase 3 partおよびPhase 2b/3 partで好結果 塩野義製薬

コロナ症状再燃は稀で、ウイルス力価陰性時間を大幅に短縮

 塩野義製薬は5日、新型コロナ経口治療薬「ゾコーバ」について、P2/3相臨床試験のPhase 3 partおよびPhase 2b/3 partより得られた最新のデータを発表した。
 同データにおいて、「ゾコーバ投与後のCOVID-19症状の再燃は稀であり、ウイルスリバウンドに起因しない」、「症状が軽度のみ、あるいは無症候のSARS-CoV-2感染者でも、プラセボ比でウイルス力価が陰性になるまでの時間を大幅に短縮した」などの結果が得られた。これらの結果は、4月15~18日にデンマーク コペンハーゲンで開催される第33回 欧州臨床微生物学感染症学会議(ECCMID)で発表される。
 同日、同学会のウェブサイトに2演題の要旨および発表資料が公開された。概要は、次の通り。

◆1演題目の最新ポスター発表:ゾコーバ投与後のウイルスのリバウンドと症状の再燃について探索的に評価したPhase 3 partの解析結果が含まれる。ゾコーバによる治療開始後21日までにPCR検査でウイルスRNA量のリバウンドが観察された患者の割合は、ゾコーバ125mg投与群(n=590)で7.8%、プラセボ群(n=574)で4.7%であった。
 少数の患者でRNAのリバウンドが観察された一方で、症状の再燃が観察された患者はごく少数であり、ウイルスRNAのリバウンドとは関連していなかった。
 感染性を有するSARS-CoV-2ウイルス(ウイルス力価)のリバウンドは追跡調査期間中に1例低いレベルで観察されたのみで、感染性や伝播の懸念がないことが示唆された。

◆2演題目のポスター発表:PCR検査陽性で無作為化割付時に無症候または軽度症状のみ有するSARS-CoV-2感染者を対象に実施中のPhase 2b/3 partにおける最新の結果が含まれる。同速報は、ゾコーバによる治療開始後10日間追跡調査された被験者データに基づくもの。
 既報の軽症/中等症患者における結果と同様に、これらの対象集団においても、エンシトレルビル125 mg投与群は、投与4日目(3回投与後)のプラセボ群との比較において、ウイルスRNA量を有意に低下させた(ベースラインからの変化量のプラセボ群との差異:1.12 log10 copies/mL、p<0.0001)。
 また、ゾコーバ125 mg投与群は、ウイルス力価の陰性化が最初に確認されるまでの時間をプラセボ群と比較して有意に短縮した(力価陰性化までの時間の中央値:本薬125 mg投与群38.3時間、プラセボ群66.7時間、p<0.0001)。
 同試験partは、探索的な位置づけであるものの、ウイルスRNA量の減少とウイルス力価陰性までの時間の短縮は、感染期間の短縮を示唆するものであり、ウイルスの伝播リスクの減少に寄与する可能性がある。
 同試験partで登録された無症候感染者の部分集団において、ゾコーバ125mg投与群は、プラセボ群と比較して無症候状態から症状発現に至った被験者の割合を数値的に減少させた(同薬125 mg投与群4.3% [1/23例]、プラセボ群18.2% [4/22例])。
 軽度症状のみを有する感染者の部分集団では、ゾコーバ125mg投与群は、プラセボ群と比較して軽度症状からの悪化が認められる被験者の割合を数値的に減少させた(同薬125mg投与群17.4% [29/167例]、プラセボ群23.9% [39/163例])。
 同試験partにおいても、ゾコーバの忍容性は良好で、新たな安全性の懸念は確認されなかった。
 塩野義製薬は、COVID-19が長期にわたり人々の生活に大きな影響を与える中、パンデミックの早期収束による社会の安心・安全の回復に貢献するためにゾコーバの有効性、安全性に関するエビデンスの集積に引き続き注力する。
 また、海外での実用化に向けた提携先との緊密な連携ならびに生産を含むグローバルサプライチェーンの強化を図り、今後も状況に変化があり次第告知する。

◆土井洋平藤田医科大学医学部微生物学講座・感染症科教授のコメント
 COVID-19は、世界中の多くの人々に影響を与え続けている。いくつかの治療薬が存在する中、患者の症状を改善し、リバウンドの発生やウイルスの伝播を抑制することができる治療薬へのニーズは依然として残っている。
 それは、社会がCOVID-19による混乱から回復し、人々が安心して生活できるようになるために重要なツールとなるだろう。

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