「HPVワクチン男性接種定期接種化」 厚生科学審議会小委員会の継続審議に対しステートメント発表 MSD

 MSDは28日、7月22日に開催された「第35回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会」において、HPVワクチンの男性接種の定期接種化について議論が行われ、結論には至らず継続審議となったことに対して、次のステートメントを発表した。
 MSDは、既に約4年にわたって小委員会で議論されているにもかかわらず、男性の定期接種化がさらに先延ばしとなったことは、日本の公衆衛生上、深刻な問題であると考えている。
 HPVは男性にも深刻ながんや疾患を引き起こすにも関わらず、男性からその実質的な予防の機会を奪い続けている現状は憂慮されるべきである。女性も含めた社会全体をHPV感染から守るという公衆衛生上の観点は重要なものだ。
 昨今、日本政府が掲げた「攻めの予防医療」では重点領域として「がん」が掲げられたが、これに沿った政策決定が望まれる。男女問わず日本の人々を様々なHPV関連がん・疾患から守るためには、一刻も早い男性接種の定期接種化が必要であると考える。
 同小委員会では、厚生労働科学研究による費用対効果の分析結果が示され、その研究に用いられた分析モデルや前提条件では、9価HPVワクチンの男性への2回接種における費用対効果には課題があるとされた。この分析では、男性が接種することによる女性への間接効果という観点が評価されていない。
 HPVは主に性交渉で感染する。男性へのHPVワクチン接種は、HPVの感染伝播を抑制し、女性の子宮頸がん予防にもつながることが期待されている。
 こうした間接効果は、ワクチンの役割を評価するうえで欠かせない視点であるにも関わらず、同小委員会では間接効果の分析結果が示されていない。男性接種の定期接種化が先延ばしになることは、男性自身のHPV関連がん・疾患の予防が遅れるだけでなく、女性の子宮頸がん予防も遅滞することになる。
 また、同小委員会の議論において、ワクチンの効果の持続期間も海外で分析に使用されている期間よりも短く設定されており、将来発生する予防効果を低く見積もっている可能性があるとの説明があった。
 同小委員会では、今年度中を目途に、間接効果の分析手法としてグローバルスタンダードとなっているダイナミック・トランスミッション・モデルを構築し、男女間での間接効果を分析することが示されたことは、大変意義のある一歩だと考えているが、議論が長期化しており、速やかに男性の定期接種化を実現することが必要である。
 同小委員会では、複数の委員の方から、費用対効果だけで判断することなく、男女公平性の観点や社会全体での集団免疫の向上などの観点も総合的に勘案して、男性の定期接種化を検討すべきという意見が出された。実際にイギリス、フランス、韓国など他国では、費用対効果だけでなく、男女両方にがん予防の機会を提供する公平性の観点や、女性への間接効果なども総合的に考慮して、男性への定期接種が判断されている。
 G7加盟国のなかで男性接種の定期接種を導入していないのは日本だけで、アジアを見ても、台湾は2025年から、韓国は2026年から男性接種の定期接種を開始している。現在、男女を対象に定期接種を行っている国・地域は85以上にのぼり、その数は女性だけを対象としている国・地域の数を上回っている。
 日本はもはや、先進国だけでなく発展途上国からも大きな後れをとっている。男女両方においてHPVワクチンの接種率が高いオーストラリアでは、子宮頸がんは、2028年には排除(10万人当たりの罹患者が4人未満)されると推計されている。
 HPVワクチンの男性接種の定期接種化を要望する声は、様々な関連学会や患者団体などから上がってきている。例えば、予防接種推進専門協議会は20以上の加盟学会に加えて複数の非加盟の学会も名を連ねて、2024年3月には計27学会から、2025年10月には計32学会から2回にわたり厚生労働省に要望書が提出されている。
 また、2026年7月には自民党のHPVワクチン推進議員連盟が、2027年4月を目途に男性への定期接種化を実現するよう厚生労働省に要望するとともに、学生の有志も定期接種化を求める署名1万9000筆を厚生労働省に提出した。東京都をはじめ、独自に男性接種に公費助成を行う自治体も90以上と増えてきており、独自助成を行っていない自治体との格差も生じ始めている。

◆プラシャント・ニカムMSD代表取締役社長のコメント
 世界では、既に男女ともに10代前半でHPVワクチンを接種することがスタンダードになっている。日本は約9年間、女性に対するHPVワクチン接種の積極的勧奨が差し控えられていた経緯があり、女性の接種率も十分に高い状況とは言えない。男性への接種は、男性自身のHPV関連がん・疾患の予防だけでなく、間接効果として女性の子宮頸がん予防にもつながり、社会全体でHPV関連がん・疾患予防を推進することができる。
 つまり、男性接種の定期接種化が遅れるたびに、日本全体としても人々をHPV関連がん・疾患から守る機会が失われていっている。MSDが2025年に査読付き論文Journal of Medical Economicsで発表した費用効果分析では、女性のみにHPVワクチンを接種したときと比較して、男女ともに接種した場合の増分費用効果比(ICER)は費用対効果が良いとされる閾値500万円/QALY以下となり、費用対効果に優れるという結果が出ている。
 最近、イングランドでは、HPVワクチン接種率の高い若年女性の世代で子宮頸がんによる死亡は確認されなかったという結果が報告されたが、こうしたニュースを聞くたびに、日本の現状とのあまりにも大きな違いを思い知らされ、悔やまれてならない。一刻も早く、日本の男性も女性と同様に公費による接種機会が公平に提供されるべきである。

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