職場に信頼できる人が「いない」社員は7人に1人  ドクタートラスト

“ストレス”と”仕事への熱意”に悪影響を及ぼす

 ドクタートラストのストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者300万人超のデータを活用し、さまざまな分析を行っている。今回は、2024年度にストレスチェックサービスを利用した受検者のうち、「職場内に信頼・尊敬できる人はいますか」の回答が得られた16万8940人のデータをもとに、職場内における信頼できる人の有無とストレスとの関係を調査した。

1、職場に信頼・尊敬できる人が「いない」社員は約7人に1人
 その結果、16万8940人のうち、職場内に信頼・尊敬できる人が「ひとりもいない」と回答したのは14.7%(約7人に1人)であった。また、信頼・尊敬できる人が「いる」グループと「いない」グループでは、高ストレス者率に最大13ポイントの差が見られ、信頼できる人が多いほど高ストレス者率は低下する傾向が明らかになった。

2、信頼関係は「仕事への熱意」や「ワーク・エンゲイジメント」にも影響

 信頼・尊敬できる人が「いない」グループで不良回答率が高かった5つの設問のうち、4つが「仕事への熱意」や「ワーク・エンゲイジメント(仕事への前向きな姿勢)」に関わる内容であった。「いる」グループと「いない」グループの回答割合を比較すると、すべての設問で20ポイント以上の差があり、職場内の信頼関係が「仕事への熱意や前向きな姿勢」に大きく影響することが示唆された。

3、信頼関係の不足は離職リスクにも直結

 厚労省「雇用動向調査」では、前職を辞めた理由の上位に「人間関係」が挙げられており、信頼関係の不足は離職リスクとも密接に関わっている。職場での気軽な意見交換や相談ができる雰囲気づくり、定期的なチームミーティングや1対1の面談など、コミュニケーションを促す場を設けることが、従業員が安心して働き続けられる職場づくりにつながる。

 ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調の予防を目的として、2015年以降従業員数50人以上の事業場で年1回の実施が義務づけられている。ドクタートラストでは制度開始から9年間にわたり、全国官公庁・事業団体などさまざまな組織にストレスチェックを提供してきた。
 ドクタートラストのストレスチェックでは、独自の追加設問8問を用意している。また、集団分析結果のフィードバックや受検後相談窓口等のアフターフォローも提供しており、国内トップクラスの受検者数を誇る。
 今回の調査では、2024年度にストレスチェックを受検した方のうち、ドクタートラスト独自の追加設問「職場内に信頼・尊敬できる人はいますか」に回答した16万8940人の最新結果から、信頼・尊敬できる人の有無がストレスに与える影響について解説する。

◆回答内訳と割合
職場内に信頼・尊敬できる人が「いない」社員は全体の14.7%(約7人に1人)

図1は「職場内に信頼・尊敬できる人はいますか」の回答内訳です。最も多かったのは「2~4人」であり、職場内に信頼・尊敬できる人が「ひとりもいない」と回答したのは14.7%であった。

◆信頼・尊敬できる人の有無と高ストレス者率
 職場内に信頼・尊敬できる人が「いる」と「いない」で高ストレス者率は最大13pt差
 高ストレス者率とは、実際に受検をした人の中で、高ストレスと判定された人がどれくらいいるかを示した割合である。
<高ストレス者とは>

・ ストレスの自覚症状が高い人

・ ストレスの自覚症状が一定程度あり、かつ仕事の負担と周囲のサポート状況が著しく悪いと判定された人

 図2は、「信頼・尊敬できる人」の有無と高ストレス者率を示したものだ。信頼・尊敬できる人が「いない」グループと「1人いる」グループの間では13ptの差が見られた。また、信頼できる人が多いグループほど高ストレス者率は減少している(※1)。

※1 4つのグループのストレスレベルをkruskal-Wallis検定(Bonferroni補正)で比較したところ、すべての組み合わせで有意な差が確認された。(検定統計量:25,339. p***<0.001)

◆信頼・尊敬できる人が「いる」「いない」で差がみられた項目
 信頼・尊敬できる人の有無は「仕事への熱意」や「ワーク・エンゲイジメント」にも影響

 同調査では職場内に信頼・尊敬できる人が「いる」グループと「いない」グループで2つに分けた。さらに信頼・尊敬できる人が「いない」グループにおいて、不良回答の割合が多かった5項目を抽出し、両グループの回答割合を比較した。(図3~7)

 職場内に信頼・尊敬できる人が「いない」グループで、不良回答の割合が多かった5項目のうち4項目については、「仕事への熱意」や「ワーク・エンゲイジメント」に関わる内容であった。また、信頼・尊敬できる人が「いる」グループと「いない」グループの回答率を比較すると、すべての設問において20pt以上の差がある。

図3

図4

図5

図6

図7

まとめ
1、 職場に信頼・尊敬できる人が「いない」社員は全体の14.7%
 「職場内に信頼・尊敬できる人」が「いる」と答えた人は約85%で、「いない」と答えた人は約15%でした。信頼・尊敬できる人の数が多いグループほど、高ストレス者の割合は低くなる傾向があり、信頼できる人の有無が働きやすさやストレスの感じ方に大きく影響していることがわかる。

2、 信頼関係は「仕事への熱意」や「ワーク・エンゲイジメント」にも影響
 また、信頼・尊敬できる人が「いない」グループにおいて不良回答率が高かった5つの設問のうち、4つが「仕事への熱意」や「ワーク・エンゲイジメント」に関わる内容であった。

 さらに、「いる」グループとの回答割合の比較では、すべての設問において20pt以上の差が見られ、職場内の信頼関係が仕事への熱意やワーク・エンゲイジメントに影響を及ぼす要因の一つであることが示唆された。

3、 信頼関係構築に向けたコミュニケーション
 厚生労働省「雇用動向調査」(※2)では、前職を辞めた理由の上位に「人間関係」が挙げられており、信頼関係の不足は離職リスクとも密接に関わっていると考えられる。職場によっては雑談やコミュニケーションがしにくい環境も存在する。こうした状況を改善するには、気軽に意見交換や相談ができる雰囲気づくりが欠かせない。定期的なチームミーティングやワークショップの開催、上司や同僚との1対1の面談など、コミュニケーションを促す場を設けることが効果的です。小さな信頼関係を積み重ねていくことが、従業員が安心して働き続けられる職場づくりにつながるだろう。

※2 厚生労働省「令和5年 雇用動向調査結果の概況」

文責:押切愛里氏(ストレスチェック研究所 アナリスト)

タイトルとURLをコピーしました