リリーは14日、バリシチニブについて、P3相BRAVE-AA-PEDS試験で青少年の重症円形脱毛症患者において高い毛髪の再発毛率を示したと発表した。
BRAVE-AA-PEDS試験において、12~18歳の青少年の重症円形脱毛症患者にバリシチニブ4 mgまたは2 mgを1日1回経口投与したたところ36週時点において、毛髪、眉毛と睫毛で臨床上意義のある改善を示したもの。BRAVE-AA-PEDS 試験の最新の結果は、3 月 7~11 日にオーランドで開催された米国皮膚科学会(AAD 2025)のレイト・ブレイキングセッションで発表された。
バリシチニブは、米国を含む75ヵ国以上において中等度から高度疾患活動性の成人関節リウマチの治療薬として承認されているほか、40ヵ国以上において年齢2歳以上で全身療法の候補となる中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者に対する治療薬として承認されている。欧州と日本では重症円形脱毛症の成人患者の治療薬としても承認されている。また、複数の国々で、COVID-19の入院患者に対する治療薬としても承認されている。
円形脱毛症は、頭皮や顔、そして時には身体の他の部位に斑状の脱毛を引き起こし、徐々に進行する自己免疫疾患で、発症時の年齢が20歳以下の患者が全体の約40%を占める。
BRAVE-AA-PEDS 試験は、257名の患者を無作為化し、バリシチニブ4mg、バリシチニブ2 mgまたはプラセボをそれぞれ1日1回服用する群に割り付けた。
主要評価項目は、36週時点のSALT(Severity of Alopecia Tool)スコアが20以下に低下すること(毛髪の再発毛した面積が頭部全体の80%以上に達する)に設定した。患者の試験開始時の頭髪の脱毛面積は平均 89%(ほぼ頭部全体が脱毛)で、眉毛または睫毛が「ほとんどない」および「全くない」(医療者評価アウトカムClinROでスコア2または3)とされた患者の割合は65%および57%であった。36週時点の結果は次の通り。
・ 頭髪の脱毛に50%以上の改善がみられた患者の割合は、バリシチニブ4mg群は60.0%、バリシチニブ2mg群は36.9%、プラセボ群は5.7%であった(p=0.001)(SALTスコアで測定)
・ 毛髪の再発毛した面積が頭部全体の80%以上に達した患者の割合は、バリシチニブ4mg群は42.4%、バリシチニブ2 mg群は27.4%、プラセボ群は4.5%であった(p=0.001)
・ 毛髪の再発毛した面積が頭部全体の90%以上(SALTスコア10以下)に達した患者の割合は、バリシチニブ4mg群は36.5%、バリシチニブ2mg群は21.4%、プラセボ群は2.3%であった(p=0.001)
・眉毛で有意な再発毛(ClinROスコアが0または1で、ベースラインから2ポイント以上の改善がみられると定義)がみられた患者の割合は、バリシチニブ4mg群は50.0%、バリシチニブ2 mg群は24.1%、プラセボ群は0%であった(p<0.01)
・ 睫毛で有意な再発毛がみられた患者の割合は、バリシチニブ4mg群は42.9%、バリシチニブ2mg群は25.5%、プラセボ群は14.0%であった(4 mg群p=0.002、2mg 群p=0.097)
青少年患者の36週時点の結果は、52週時点の成人患者の結果と同等であり、青少年患者は成人患者よりも髪の再発毛が早い可能性があることを示唆してる。BRAVE-AA1試験とBRAVE-AA2試験では、52週時点に毛髪の再発毛した面積が頭部全体の80%以上に達した成人患者の割合は、バリシチニブ4mg群では40.9%、バリシチニブ2mg群では21.2%であった。 安全性では、BRAVE-AA-PEDS試験で発現した有害事象(TEAE)のうち、高頻度でみられた事象は、ざ瘡、インフルエンザと上気道感染であった。重篤な有害事象の発現率は、プラセボ群がバリシチニブ群を上回った。死亡、日和見感染、主要心血管イベント、静脈血栓塞栓イベントや、悪性腫瘍の報告はなかった。
円形脱毛症の青少年患者におけるバリシチニブの安全性プロファイルは、若年性特発性関節炎や中等症から重症のアトピー性皮膚炎の青少年患者の試験でみられた安全性プロファイルと一致しました。臨床試験でバリシチニブの投与を受けた1万4600名以上の患者のうち、1ヵ月超~18歳未満の患者は866名である。リリーは、BRAVE-AA-PEDS試験の追加データを今年中に学会発表し、試験成績を査読論文誌に投稿する予定である。 バリシチニブは、インサイトが創製し、リリーがライセンスを取得している1日1回投与の経口JAK阻害剤である。米国FDAは2022年にバリシチニブ(商品名:オルミエント)を重症円形脱毛症の成人患者の治療薬として承認し、米国初の重症円形脱毛症の全身投与治療薬となった。
◆Brittany Craiglowイェール大学医学部皮膚科准教授のコメント
早期発症の円形脱毛症はより重症化することがあり、広範囲の脱毛を引き起こすことがあるが、ファーストラインで処方される既存の局所療法やステロイドでは改善が見られないことがよくある。
36週時点でバリシチニブの投与を受けた青少年の患者さんに有意な毛髪の再発毛が見られた今回の結果は興味深く、本剤が重症の青少年の患者さんに対して有効な治療薬となる可能性を示していると考える。
◆Anabela Cardosoリリー自己免疫領域メディカルアフェアーズ担当バイスプレジデントおコメント
今回のデータ取得により、バリシチニブは重症円形脱毛症という青少年の患者さんやご家族に社会的・心理的苦痛をもたらす可能性のある慢性の免疫系疾患で、最も研究が進んでいるJAK阻害剤となった。
今回の初期結果は、バリシチニブが青少年の患者さんの有意な毛髪の再発毛を提供できること、成人患者さんと比較してより速やかな毛髪の再発毛が期待できる可能性があることを示しており、たいへん嬉しく感じている。今後の学会で長期データを報告し、世界の規制当局との協議を進めていきたい。