自社創薬やデサイフェラプロジェクト等による海外展開に手応え 小野薬品滝野十一社長COO

 小野薬品の滝野十一代表取締役社長COOは31日、2025年3月期中間決算説明会で会見し、同中間期や通期業績予想が減益となることに言及。「デサイフェラの買収は、当社がオプジーボの特許切れを乗り越えてグローバルスペシャリティファーマに成長するための大型投資である。LCBとの契約も、将来有望なADC(固型がん治療薬)に対する積極的な投資である」と説明し、「成長投資への理解」を求めた。
 さらに、「当社は、今までの右肩上がりの増収・増益から、現在は少し踊り場のタイミングに差し掛かっている」と指摘した上で、「まだマーケットの評価には至ってないが、自社創薬に加えてデサイフェラプロジェクト、それ以外にも製品が出る可能性がある。大型投資で描いた成長路線の実現が私の役割で、遣り甲斐を感じている」と強調した。
 小野薬品の2025年3月期中間決算は、売上収益2403億3900万円(対前年同期比7.1%減)、営業利益558億8100万円(42.4%減)、税引前利益546億3700万円(45.0%減)、中間利益416億4700万円(44.1%減)となった。
 当中間期の一株当たりの配当は40円。「通期業績はフルベースで下方修正したが、成長投資もありコア業績ではマイナスになっていない。通期配当80円も継続する」
 売上収益の内訳は、製品商品売上1633億円(2.1%増)、ロイヤリティ・その他770億円(22.0%減)。国内では、フォシーガ錠(糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病)は、慢性腎臓病が拡大し、437億円(対前年同期比21.7%増)となった。
 その一方でオプジーボは、薬価引き下げ(15%)の影響で626億円(同16.5%減)に留まった。
 海外では、デサイフェラ買収により獲得したキンロック(消化管間質腫瘍治療剤)の売上高が81億円(7~9月)となった。同剤の通期売上予想は235億円。
 ロイヤリティは、オプジーボによるBMS(ブリストルマイヤーズスクイブ)からの収入は564億円(同19.1%増)であったが、キートルーダ(メルク社)は料率低下に伴い128億円(同50%減)となった。
 同中間期の研究開発費は688億円(39.4%増)、半場費および一般管理費は584億円(22.7%増)。
 また、2022年12月に米国イクィリーム社と締結した「イトリズマブ」(急性移植片対宿主病)のアセット契約は、本年10月、戦略上の理由によりオプション権を行使しないことを決定し、減損損失35億円を計上した。
 会見で滝野氏は、デサイフェラ買収により獲得したキンロック(消化管間質腫瘍治療剤)、ビムセルチニブ(腱滑膜巨細胞種[TGCT]、慢性移植片対宿主病[GVHD]治療薬)に対する期待について説明した。
 キンロックは、ジストのフォースライン治療(既存の3剤で効果のない患者の治療オプション)として適応を取得しているものの、「米国で成長している。欧州や米国以外の海外でも販売国を増やしている」と報告。
 加えて、ジストである特定遺伝子変異の変異がある患者に対してセカンドラインで使用する臨床試験を進めており、「これが承認されれば、さらに拡大する」と強調した。
 一方のビムセルチニブは、関節が動き難くなるTGCTの治療薬として注目されている。先行の治療薬はあるものの、「安全性と有効性のプロファイルのバランスが悪く、アンメットメディカルニーズが高い」。実際、FDAから「優先審査」の通知を受けており、米国では今年度末に向けての承認、その後欧州での承認が予定される。
 先行しているキンロックとビムセルチニブの処方医の被りも見逃せない。「約7~8割が被っており、事業効率性が高いので販売の積み上がりが見込まれる」(滝野氏)。また、ビムセルチニブは、慢性移植片対宿主病(GVHD)を対象とした臨床試験(P2)も進められており、そのポテンシャルは高い。
 滝野氏は、「キンロックとビムセルチニブには、小野薬品の欧米展開の早期プロジェクトとしてを牽引する役割を期待したい」と強調した。
     

タイトルとURLをコピーしました