
大阪府薬が会員薬局を対象に慢性不足の医療用医薬品の実態を明らかにするために実施した第5回「医薬品の流通状況アンケート」においても、医薬品供給不足が未だ続いていることが明らかになった。
アンケートは、大阪府内の全会員保険薬局3452軒に対して昨年の11月25日から12月12日までWeb形式で実施したもので1729軒が回答。回答率は50.09%に上り、今回初めて50%を超えた。
2020年初旬から新型コロナ感染症が蔓延し対処療法薬の不足、原薬不足により製造できない状況に加え、2020年12月の小林化工の抗真菌薬への異成分混入事故を皮切りに後発品会社の不祥事、品質管理違反に対する製造停止などの行政処分が相次いで起こり、多数の医療用医薬品不足に陥った。
また、度重なる薬価改定の影響も大きく、医療用医薬品の供給状況悪化に拍車をかけ、現時点においても、出荷調整・停止、製造中止に至る情報が日々更新されている。後発医薬品に留まらず、医療用医薬品全般にわたり需要と供給のバランスは不安定な状況が続いており、現在、2322品目の医薬品が限定出荷・供給停止になっている(2025年の医療用医薬品供給状況報告より)。
第5回「医薬品の流通状況アンケート」調査結果について羽尻氏は、「昨年と比べると供給状況は少し改善している感はあるものの、供給不安定に陥る前の状況には程遠い」と総括する。 その上で、「不足する医薬品の種類が変化しながらの流通不足が続いており、依然として必要とする患者さんに医薬品を安全・安心に供給できていない」と警鐘を鳴らす。羽尻氏に、同調査結果の詳細と考察を聞いた。
まず、説問1の回答を紹介したい。

後発医薬品が発注通り納品されている薬局は1729件中わずか19件であり、「約84%以上の薬局が供給不安定で調剤業務に支障がある」と回答。先発医薬品においては、「70%の薬局が供給不安定で調剤業務に支障がある」との結果を得ている。
卸の納入状況(後発品)の年度毎推移について羽尻氏は、「後発医薬品の供給状況は、令和6年度と比べ令和7年度は改善傾向が伺えたが、未だ、後発医薬品の供給で約84%、先発医薬品の供給状況も70%もの薬局が調剤に影響が出ているとの回答があった」と明かす。
その上で、「総合的な観点では、医療用医薬品全般にわたり需要と供給のバランスは依然として不安定な状況が続いており、患者に対し安定した医薬品供給を通じた安心感を十分に提供できておらず、満足な業務が行えていない」と推察する。
納品が滞る或いは発注できない製品について卸担当者は次の理由を挙げている。

後発医薬品について、既に発注はしているが、現在納品が滞っている品目数は次の状況だ。

医療用医薬品不足は、先発品にも及んでおり、既に発注はしているが、現在納品が滞っている先発品の品目数は次の通り。

羽尻氏は、「発注しても納品が滞る状況の改善が未だに見えず、医療用医薬品の供給不足により、患者に安定した医薬品供給を通じた安心感を十分に提供できていないことを心苦しく感じる」と話す。
では、現在、どのような医薬品が不足しているのか。医療用医薬品の品目に関する入手状況の設問では、62.5%の薬局が「鎮咳剤が入手困難」と回答しており、不足品目は、1位:鎮咳剤(1081軒)、2位:去たん剤(705軒)、3位:抗生物質製剤(608軒)の順となり、これらは高い割合であった。

羽尻氏は、過去5回のアンケート調査の中で鎮咳剤、去たん剤が上位を占めている理由を「当該医薬品の流通不足に加えて、コロナ禍以来、咳をするのを嫌がる患者さんが増えたためだと考えられる。確かに人前で咳が出るのを気にする患者さんが増加している」と考察する。
抗生剤は、アモキシシリンの不足が要因になっているようだ。「昨年同様、感染症への対応においては、抗菌スペクトルを鑑みた処方に対して適切な薬物治療が行えているのか心配される」
また、今回の調査では、昨年11位であった降圧剤が4位に浮上した。アテノロール(β遮断薬)不足がその要因となっている。その一方で、昨年3位であった総合感冒剤は7位に後退している。
これらの結果を総合すると、「不足する品目は変化しながら依然として医薬品供給不足が続いている現状が把握できる」
納品が滞っている場合、薬局では次の対処方法を実施している。

また、医薬品の変更に対する患者の反応は次の通り。

羽尻氏は、「後発品不足が長年続いているので、理解して頂ける患者さんも増えてきたようだ」と話す。とはいえ、患者側からみた不利益となった事例もアンケートでは取り上げられた。

2024年10月より長期収載品の選定療養費の仕組みが導入されことも後発品の流通不足を後押ししている。長期収載品に係る選定療養について、患者に説明を行った際の患者の理解度では次の回答が寄せられている。

選定療養については、患者への説明に要する時間は平均5分であり、「薬局において説明するまで全く理解できていなかった方が多い」と答えた薬局は64%であった。この結果から「国民への周知は進んでいないと考えられる」と考察する。
「長期収載品に係る選定療養について問題点があったか」の回答では33.2%が「あった」と回答している。

長期収載品に係る選定療養に関する問題点 (539件、重複した意見を含む)は、次の通り。
① 患者への説明が困難、混乱があった。(243件)
② 患者負担・費用への不満があった。(234件)
③ 調剤業務での業務負担増があった。(159件)
④ 在庫・供給状況による不公平感を感じる。(110件)
⑤ 選定療養制度設計への問題がある。(87件)
羽尻氏は、本年6月より選定療養の自己負担が価格差の4分の1から2分の1に引き上げられることにも言及し、「そうなれば、さらに後発品の確保が必要になる」と予測する。その上で、「現状では、30日処方でも全て同じメーカーの製品が揃わず、違うメーカーの製品も含めて取り揃えるケースも増えてくるのではないか」と危惧する。
「今後の法改正により、薬局における患者への説明がこれまで以上に求められると予想される。薬局において、患者が納得して薬剤を選択できるように円滑に説明を行うためにも、国、保険者等にも選定療養費制度の周知を強く要望したい」と強調した。
さらに、「薬局薬剤師はこのような事態を数年に渡り、繰り返し日々対応しているとともに、選定療養費の仕組みも加わり、患者の不安、不信感・不満を受けて対応している。こうした不本意な患者対応の繰り返しが重なることで疲弊し、職務を十分に果たせていないのではないかと心理的な不安を抱いている」と指摘。
最後に、「一日も早く、供給不安定に陥る以前の安定供給が確保されていた状態に戻し、医薬品提供が行えるよう、強く関係各位の迅速・適切な対応を切望する」と訴えかけた。特に、後発品メーカーに対しては、「医薬品供給不足を解消するために国と交渉して薬価を引き上げても良いと思う。また、大手後発品メーカーで製造する医薬品を分担する対応も取ってほしい」と要望した。

