ニプロと日医工は5日、注射用抗菌薬の後発医薬品の安定供給に向けた協業に合意し、注射用抗菌薬製造所を集約すると発表した。
近年、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックを経験し、国民の生命と健康を守る上で、特に抗菌薬の安定供給は喫緊かつ最優先の課題として認識されている。
抗菌薬は、重篤な感染症の治療や術後感染予防など、患者の生命に直結する場面で使用されるため、治療において欠かすことのできない存在で、特に後発医薬品は抗菌薬の供給を支える重要な役割を担っている。だが、2020年以降、品質問題に端を発する供給停止や出荷調整が頻発し、後発医薬品全体の安定供給も大きな課題となっている。
厚労省は、こうした状況に対し、後発医薬品企業の連携を促し、製造所集約を円滑化するための薬事手続きを迅速化する特例措置「医療用医薬品の品目統合等に伴う製造方法等の変更手続に係る手続の迅速化について」を設けた(標準処理期間を6ヵ月から1.5ヵ月に短縮)。
今回、両社は、同施策を活用し、後発医薬品である注射用抗菌薬の製造所集約を進め、生産効率を高めるとともに、感染症対応を含めた抗菌薬の安定供給体制構築に取り組む。協業の概要は、次の通り。
◆協議中の対象品目数:注射用抗菌薬3成分8品目(2025年11月現在の計画)
それぞれで製造していた品目を一方の製造所に集約する
◆開始時期:2026年以降、準備が整い次第順次
◆山崎剛司ニプロ代表取締役社長のコメント
医療を取り巻く環境が目まぐるしく変化する現代において、ニプログループは、医薬品の安定供給を社会的責任と位置付けている。特に基礎的医薬品である注射用抗菌薬の供給強化は、人々の健康を支える医療体制の構築に不可欠である。
今回の協業は、注射用抗菌薬の供給不安の早期解決に大きく寄与すると考えており、両社の強みを活かし、ユーザー目線に立脚した医療の“インフラ”としての役割を果たしていきたい。
◆岩本紳吾日医工代表取締役社長のコメント
当社は2023年3月より新経営体制のもと、医薬品の安定供給のため生産体制と品質保証体制の強化に取り組んできた。その中でも注射用抗菌薬は、感染症治療や術後感染予防など幅広く使用され、医療の現場において重要な役割を果たしており、その安定供給は医薬品企業の使命であると自覚している。今回のニプロとの協業により、注射用抗菌薬において持続可能な安定供給体制を構築したい。


