北海道大学と共同で包括的な「ひきこもり家族教育支援プログラム」提供開始 大塚製薬

 大塚製薬は、北海道大学大学院医学研究院 神経病態学分野精神医学教室 加藤隆弘教授と共同で、既存のFACEDUO「ひきこもり家族支援プログラム」をアップグレードし、包括的なプログラムの提供を開始した。
 国内では140万人以上の方々がひきこもり状態にあると推計されている。ひきこもりの背景にある、うつ病など精神疾患やひきこもりに対する偏見や誤解のために、当事者および家族が相談・医療機関への来所・受診をためらい、支援の開始が大幅に遅れ、ひきこもりの長期化が問題となっている。
 ひきこもりは早期介入が必要であり、ステップ・バイ・ステップのアプローチが必要であると言われている。ファーストステップは、家族への支援であり、当事者の身近にいる家族が支援するスキルを身につけること、つまり、家族が最初の支援者になることが早期介入実現の第一歩になる。
 こうした中、昨年2月に提供を開始した同プログラムは、VR(仮想現実)で具体的な場面の体験を通して、家族がひきこもり状態を見極める方法を学ぶことができる。加えて、家族が「自身の視点」と「子供の視点」の両方から同じ場面を体験することでコミュニケーションを図るうえでの気づきを促し、家庭内における当事者との関係性改善をサポートする。
 北海道大学大学院医学研究院の協力を得て、家族支援の重要性と具体的な方法を学ぶトレーニング動画と冊子など一連の資材も活用できるコンテンツが加わり、ひきこもりの家族に対する包括的な教育支援の展開が可能となった。北海道大学 加藤隆弘氏が代表を務める「ひきこもり研究ラボ@九州&北海道」では、ひきこもりの包括的な支援法開発のための研究を進めてきた。ラボでは、当事者や家族支援に取り組んでいる。
 精神疾患をもつ当事者に対する応急対応法を習得するメンタルヘルス・ファーストエイド(MHFA)と認知行動療法に基づくコミュニティ強化と家族訓練(CRAFT)のエッセンスを取り入れ、講義に加えてロールプレイなどの演習を通じて体験的に当事者への対応法を身につけてもらう教育プログラムの研究が進められてきた。5つのステップで、家族がひきこもりや精神疾患への理解を深め、ひきこもる当事者の来所・受診がスムーズに進むための声かけなど、具体的な対話スキルを習得できるように実践力の向上を目指すものだ。
 今回アップグレードされた「ひきこもり家族支援プログラム」は、これまでの研究結果による家族支援のプロセスに、理論を学ぶ動画と冊子、対話スキルを実践的に学ぶVR体験を取り入れることで、臨床で効果的に家族支援ができるように開発された。活用するVR技術は、大塚製薬とジョリーグッドが提供するFACEDUOソーシャルスキルトレーニングVRの仕組みや経験が活かされている。
 プログラムは、2D動画と学習ブックを使って、家族支援の重要性とひきこもり支援の5ステップの理論を学ぶパートと、VRを活用してコミュニケーションの方法を学ぶパートの2つで構成されている。支援者が当事者と向き合うために必要なスキルを実践的に学べるよう設計されている。

家族支援5つのステップ
                                       理論を学ぶための学習ブック

 VR体験には5つのステップ毎に複数の場面が設定されており、豊富な体験を通じて、より深い理解と効果的なスキルの習得を目指すことができる。視点(家族本人、当事者)を入れ替えることで、家族が当事者視点を体験し、対応を振り返ることができる。これにより、コミュニケーションを図るうえでの気づきを促し、家庭内における当事者との関係性改善をサポートする。

 また、専門家の知見に基づいた解説を通じて対話スキルを学べるほか、言葉だけではなく表情などの非言語的なニュアンスもVR上で学べる。

 なお、同プログラムは、全国のひきこもり支援を行う自治体、相談機関・施設が実施する家族教室における活用を想定している。

◆加藤隆弘医師北海道大学大学院医学研究院神経病態学分野精神医学教室 教授(ひきこもり研究ラボ@九州&北海道 代表)のコメント
 ひきこもり研究ラボ@九州&北海道では、2013年世界初のひきこもり専門外来を大学病院内に立ち上げた。この研究外来を拠点として、国内外の医療研究機関やひきこもり支援団体と連携し、ひきこもりの多面的理解に基づく具体的な支援法の開発をすすめている。
 今回、我々これまでの経験と知見を基に、ご家族がひきこもりや精神疾患への理解を深め、ひきこもる当事者の来所・受診がスムーズに進むことを願い、5つのステップでひきこもりの状態の評価、具体的な対話スキルを習得できるように、家族支援の包括的なプログラムを開発した。
 こうしたプログラムを基にしたご家族向けの教育支援が全国のひきこもり支援機関で活用されることで、当事者による直接の来所・受診が早まり、ひきこもりの長期化解消の一助となることを期待している。

◆大西弘二氏(大塚製薬ポートフォリオマネジメント室)のコメント
 「FACEDUO」は2022年10月にサービスを開始して以降、全国の自治体、医療・福祉・教育施設で利用が拡がっている。今回アップグレードした「ひきこもり家族支援プログラム」は、社会課題の1つである、ひきこもりの長期化を解決するための一助になると期待されている。
 大塚製薬は、「FACEDUO」を通じて、当事者やご家族・支援する方々が抱える課題を解決するため、今後も新たなコンテンツの開発を行っていく。

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