触らないタッチセンサーを開発 インテリジェント医療への応用期待 中国 青島大学

 青島大学(中国)ならびに中国―韓国の共同研究者らによって、直接触れずに立体構造認識やワイヤレスデータ伝送が可能なセンサーが開発された。
 ロボット工学や生物模倣デバイスなどに向けた新たなタッチセンサーは、検出する対象物と直接接触していなくても動作することができる。対象物から100ミリメートル離れていても、対象物とセンサー間に発生する電界の干渉を感知して作動するというもの。
 接触・非接触システムにおけるセンサーの性能は、障害物回避や歩行モニタリングといった人間の動体検知に対する可能性を示唆しており、インテリジェント医療への応用が期待できる。同センサーの研究は、『Science and Technology of Advanced Materials(STAM)』で発表された。
 電子皮膚(electronic skin)は生物模倣ロボットの重要な要素技術であり、外部刺激を瞬時に検知し、動作に繋げることを可能にしている。
 また、ロボット装置が物体の形状分析をしたり、必要に応じて持ち上げたり、操作したりすることもできるようになる。
 現行のほとんどのタッチセンサーは、タッチすることで接触層に物理的な変形が生じ、その結果生じた電気容量の変化を検知している。だが、触る位置によって感度が変わってしまい、結果としてこの種のセンサーのボトルネックとなっていた。
 「より高い感度と汎用性を実現するために、我々は非常に有用な電気特性を持つ新しい複合フィルムを開発した」と青島大学研究チームのXingling Li氏は話す。
 最も驚くべきことは、誘電率(電界に対する反応性の指標となる)が高い2つの材料を組み合わせたときに生じる。この複合材料は予想に反して低い誘電率を示したが、(低誘電率からもたらされる)直感的な予想に反して、電界に対してより感度の高いセンサーを作るのに理想的であることを示す結果となった。
 この複合材料は、ポリジメチルシロキサンに少量の黒鉛状の窒化炭素を添加したものだ。この複合材料は、ディスペンス印刷と呼ばれる特殊な3D印刷法によって製造・加工することができ、高粘度インクを用いた印刷の構造やパターンを細かく制御できる。
 研究チームはこれを利用して、物体の表面から5~100ミリ離れた位置で物体を感知できるグリッドを作成し、研究者の指を検知対象として、グリッドの近くまで接近させながら、実際には接触させずにグリッドの能力をテストした。
 「その性能は、感度、反応の速さ、繰り返しの使用における堅牢な安定性という点で、傑出していた」と話すLi氏。さらに、「これは、ウェアラブル製品や電子皮膚の分野における新たな可能性を開くものである」と強調し、「同技術がウェアラブル技術に必要な物理的に柔軟なセンサーの製造に適している」と説明する。
 これらは、医療モニタリングや、急速に発展している「モノのインターネット」(IoT)において、より一般的な用途に応用される可能性がある。
 また、センシング・グリッドをプリント基板に組み込むことで、収集したデータを、携帯電話で広く使われている4Gネットワーク経由で送信することが可能になった。
 研究チームは、大量生産に適した技術を開発するため、この技術を改良する計画だ。また、単に形状や動きを検出するだけでなく、さらなる可能性を追求ていく。
 例えば、センサーアレイにおいて異なるユニットが順次応答する能力を持つことで、ジェスチャー認識のような人間とコンピュータのインタラクションを実現する可能性を提供できる。 また、接触・非接触システムにおけるセンサーの性能は、障害物回避や歩行モニタリングといった人間の動体検知に対する可能性を示唆しており、インテリジェント医療への応用が期待できる。

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