アストラゼネカは17日、同社とIonis社が開発したeplontersenについて、成人のトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー治療薬として米国で承認を取得したと発表した。
対象は、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(hATTR-PN または ATTRv-PN)の成人患者。
Eplontersenは、ATTRv-PN の治療薬として、オートインジェクターによる自己投与が可能な唯一の薬として承認された。今回の承認は、P3相NEURO-TTRansform試験の35 週時点での中間解析の良好な結果に基づくもの。同試験において、eplontersen投与群は、主要評価項目である血清トランスサイレチン(TTR)濃度と修正ニューロパチー障害スコア(modified Neuropathy Impairment Score)+7(mNIS+7)で測定された神経障害、および重要な副次評価項目である、Norfolk QOL 質問票 – 糖尿病性神経障害(Norfolk QOL-DN)で評価された生活の質(QOL)において一貫した持続的なベネフィットを示した。
同試験結果は、The Journal of the American Medical Association (JAMA)誌に発表され、35週、66 週、85 週時点における ATTRv-PN の有する多様な特性にわたるeplontersen のベネフィットを実証した。
ATTRv-PN は、診断から5 年以内に運動障害を伴う末梢神経損傷を引き起こす衰弱性の高い疾患で、治療が行われない場合には、10 年以内に致命的な転帰をたどることが一般的である。 Eplontersenは、リガンド結合アンチセンスオリゴヌクレオチド(LICA)薬で、遺伝性および非遺伝性トランスサイレチン型アミロイドーシス(ATTR)の両方を治療するため、TTRタンパク質の産生をその産生源で抑制するように設計されている。
グローバル開発および販売契約の一環として、アストラゼネカおよび Ionis 社は、米国でATTRv-PNの治療薬としての eplontersenの共同販売を行うとともに、欧州・その他地域でも、規制当局への販売承認申請を計画中である。
同剤に関するlonis社との契約における合意内容が拡大され、米国以外のその他のすべての国に加え、中南米でアストラゼネカが同剤の独占的な販売権を有することが盛り込まれた。
Eplontersen は、ATTRの治療薬として、米国およびEUで希少疾病用医薬品指定を取得した。なお、同剤は、2024年1月に米国で使用可能になる。
Eplontersenは、現在、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)を適応とするP3相CARDIO-TTRansform試験を実施している。ATTR-CM は、一般的に進行性の心不全に至ることで、疾患発症から3~5年以内に死亡する確率の高い全身性かつ進行性の致死的な疾患である。
◆NEURO-TTRansform試験の治験担当医師のMichael J. Polydefkis氏(Johns Hopkins 大学医学部神経学教授)のコメント
ATTRv-PNは、絶え間なく進行し、衰弱させる疾患であるため、患者さんの多くが生活を十分に楽しむことができない。今回のeplontersen に対する承認は、ATTRv-PNの治療における意義ある進歩であり、この疾患に罹患した患者さんにとって病勢管理の一助となるだろう。
◆Ruud Dobberアストラゼネカエグゼクティブバイスプレジデント兼バイオファーマ研究開発部門責任者のコメント
ATTRv-PNの患者さんには、新たな治療法が喫緊に必要である。Eplontersenの米国での承認は、ベースラインと比較して血清 TTR 濃度を一貫して持続的に低下させながら病勢進行を抑え、この衰弱性の高い疾患に罹患している患者さんの生活の質を改善する新たな治療選択肢をもたらす。
◆ Isabelle Lousadaアミロイドーシス研究コンソーシアム代表取締役社長兼CEOのコメント
ATTRv-PN をはじめとするアミロイドーシスの患者さんは、他の病気によっても起こりうる症状が現れることで、しばしば誤診される。この疾患と正しく診断されるまでに、多くの時間と苦労を重ねることも少なくないため、症状が現れる患者さんだけでなく、ご家族などにとっても、迅速かつ正確に診断がなされることが重要である。
見過ごされたり、軽視されてきたことが多いこの疾患領域において、新たなイノベーションがもたらされ、啓発に向けた機運が高まるのは大変うれしい。
◆Brett P. Monia Ionis社最高経営責任者(医学博士)のコメント
FDAによるeplontersenの承認は、ATTRv-PNに罹患している患者さんにとって重要かつ画期的なものである。この衰弱性の高い疾患と闘うため、オートインジェクターにより自己投与できる効果的で忍容性のある治療法が提供できるようになったからだ。
また、本剤は当社にとって継続的な商業化が期待できる最初の製剤であったため、今回の承認取得は極めて重要な瞬間となった。