「健康リスク」「ストレス過多な人」は “睡眠5時間未満”に集中 ドクタートラストがストレスチェックデータより算出

 「健康リスク」「ストレス過多な人」は “睡眠5時間未満”に集中していることが、ドクタートラストのストレスチェックデータより算出された。
 ドクタートラストのストレスチェック研究所では、ストレスチェックサービスを利用した累計受検者163万人超のデータを活用し、さまざまな分析を行っている。今回は2022年度にストレスチェックサービスを利用した受検者のうち、「平均睡眠時間」についての回答が得られた約5600人のデータをもとに、平均睡眠時間と総合健康リスク、ストレス度合の関係性を調査したもの。
 調査結果では、①「総合健康リスク」と「高ストレス者率」ともに最も高いのは、平均睡眠時間が「5時間未満」、②「総合健康リスク」と「高ストレス者率」ともに最も低いのは、平均睡眠時間が「7時間以上9時間未満」、③平均睡眠時間が「5時間未満」の群では、仕事量の多さや、注意集中して業務を行うことによる負担で、そのストレスが仕事以外の時間にまで悪影響を及ぼしていると感じている人が多い、④「7時間以上9時間未満」の適切な睡眠時間を確保できるように、個人としてだけでなく会社としてもサポートしていく視点が重要ーなどがポイントとなった。
 ストレスチェック制度は、従業員のメンタル不調の予防やその気付きを促し、ストレスが高い人の状況把握やケアを通して職場環境改善に取り組むことを目的として制定され、2015年12月以降、従業員数50名以上の事業場で年1回の実施が義務づけられている。
 ドクタートラストの提供するストレスチェックサービスでは、ストレスチェックと同時に、生活習慣に関する6つの設問が追加できる。今回は、生活習慣設問の一つである「平均睡眠時間」と「総合健康リスク」、「高ストレス者率」の関係をそれぞれ分析した。調査概要および調査結果の詳細は、次の通り。

【調査概要】

◆調査期間:2022年4月1日~2023年3月31日

◆調査対象:ドクタートラスト・ストレスチェック実施サービス2022年度契約企業・団体の一部

◆有効受検者数:5637人

図1 
 図1は平均睡眠時間の分布を示したものです。最も多かったのは「5時間以上6時間未満」、以下「6時間以上7時間未満」、「5時間未満」と続きます。

【調査結果の詳細】

1、総合健康リスクが最も高いのは、平均睡眠時間が「5時間未満」の群
 総合健康リスクとは仕事のストレス要因から起こり得る疾病休業など健康問題のリスクを示す指標である。基準値を「100」として、数値が高いほど高リスクと判断するもの。たとえば総合健康リスクが「110」の場合、その集団は、健康問題が起きる可能性が平均より「10%高い」ことを示している。総合健康リスクを平均睡眠時間別に算出したものが図2「平均睡眠時間と総合健康リスク」である。

  

図2

 図2のとおり、総合健康リスクが最も高いのは、平均睡眠時間が「5時間未満」の群であり、同リスクは119(疾病休業の発生リスクが平均より19%高い)であった。
 また、同リスクが最も低いのは「7時間以上9時間未満」の群で、同リスクは79(疾病休業の発生リスクが平均より21%低い)であった。
 平均睡眠時間が長くなるにつれ、総合健康リスク値は低くなる傾向が見られたものの、9時間以上では一転、わずかに高まった。

2、高ストレス者率が最も高いのは、平均睡眠時間が5時間未満の群
 高ストレス者率とは、実際に受検をした人の中で、高ストレスと判定された人がどれくらいいるかを示した割合である。

<高ストレス者とは>

・ ストレスの自覚症状が高い人

・ ストレスの自覚症状が一定程度あり、かつ仕事の負担と周囲のサポート状況が著しく悪いと判定された人

図3

 図3は高ストレス者率を平均睡眠時間別に算出したものである

 高ストレス者率が最も高かったのは、平均睡眠時間「5時間未満」の群で、全体の29.9%を占めていた。一方、高ストレス者率が最も低かったのは、平均睡眠時間「7時間以上9時間未満」の群で、高ストレス者率は7.4%であった。
 高ストレス者率の傾向も、総合健康リスク同様に、平均睡眠時間「5時間未満」の群が最も悪く、「7時間以上9時間未満」の群までは睡眠時間が長くなるにつれ高ストレス者率は低くなり、9時間以上で再び高ストレス者率が高まる結果となった。

3、平均睡眠時間「5時間未満」の群は仕事の量的負担と質的負担の不良回答率が高い
 ここまで見てきたとおり、平均睡眠時間「5時間未満」の群は、高ストレス者率が最も高いことがわかった。
 その中で、特に不良な回答をしている割合の高かった設問を示したものが、図4「平均睡眠時間5時間未満の群における不良回答設問」である。

図4

 図4のとおり、不良回答率の最も高かった設問は「かなり注意を集中する必要がある」、以下「一生懸命働かなければならない」、「非常にたくさんの仕事をしなければならない」が続く。

 仕事量の多さや、仕事で注意集中を求められるなど質的な業務負担から、そのストレスが仕事以外の時間にまで悪影響を及ぼしていると感じている人が多いことが読み取れる。

 平均睡眠時間と総合健康リスク、ストレス度合いの関係性を調査した結果、「総合健康リスク」「高ストレス者率」ともに、平均睡眠時間が「5時間未満」の群が最も高く、「7時間以上9時間未満」の群が最も低い結果となった。
 このことから、日々の生活習慣とストレスは密接に影響しあっており、一人ひとりが適切な睡眠時間の確保が、部署や会社全体としての総合健康リスクの低下防止および高ストレス者の減少につながると考えられる。ただし、平均睡眠時間が「5時間未満」の群の不良回答率の高い設問からもわかるように、適切な睡眠時間を確保するためには、個人として良い生活習慣を心がけるだけでなく、会社として適切な睡眠時間が確保できるよう環境を整えることも重要である。

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