7割以上の人が「うつ病と食生活」の密接な関係知らず Meiji Seikaファルマがアンケート調査

うつ病改善には従来の治療に加えて食生活の見直し・改善が重要

 Meiji Seikaファルマは1日、過去にうつ病と診断されて治療を行った、あるいは現在治療を行っている男女500名を対象にした「うつ病治療と食生活」に関するアンケート調査、および精神科・心療内科のクリニックを運営する医師(開業医)110名を対象にしたアンケート調査結果を発表した。
 調査結果では、「うつ病は普段の食生活による栄養状態と深い関係があるといわれている」ことについて「知らなかった」と答えた回答者は72.8%に上った。さらに、「うつ病は普段の食生活による栄養状態と深い関係がある」という理解を前提にして「食生活の改善に取り組みたいと思うか」という問いには、回答者の70%が「取り組みたいと思う」と回答。うつ病を治療する目的で食生活や栄養摂取状況を改善することに対する意欲は非常に高いことが明らかになった。 今回のアンケート結果は、「うつ病と食生活」について適切な情報提供が必要であることを示唆している。
 うつ病と食生活・栄養の関連について研究している功刀浩帝京大学医学部精神神経科学講座主任教授は、「生活リズムや食生活の乱れなどがメンタルヘルスに大きく影響している」と指摘する。
 加えて、精神科・心療内科のクリニックを運営する医師(開業医)を対象にしたアンケート調査では、約60%の医師が「うつ病の改善には、従来の治療に加えて食生活の見直し・改善が大切だ」という認識を示している。
 うつ病の症状改善には、「うつ病と食生活」についての適切な情報提供や医師による食生活指導が重要な役割を果たす。Meiji Seika ファルマはこれからも、客観性と科学性、エビデンスに基づいた情報を発信し、患者やその家族の安心と医師の日常の診療をサポートしていく。今回の調査概要、患者および医師を対象としたアンケート結果の詳細、功刀浩教授の解説は次の通り。

【調査概要】
◆調査内容:うつ病と食生活に関するアンケート調査
◆実施期間:2022年12月22日〜2022年12月23日
◆実施対象:現在うつ病治療中の男女377名、過去にうつ病治療の経験がある男女123名(計500名)
◆実施方法:インターネット調査

【患者対象アンケート結果の詳細】

問1:うつ病と診断された頃の食生活について、当てはまるものを全て選んでください。(複数回答)

 うつ病と診断された当時の食生活について尋ねた問いでは、「食欲がわかず、食事量が減っていた」(39.6%)に次いで「栄養が偏りがちな食生活だった」(36.8%)、「朝食や昼食を抜くなど不規則な食生活になりがちだった」(35.0%)、「暴飲・暴食することが多かった」(26.0%)と食生活の乱れに関する回答が続く結果に。
 また、「野菜を食べることが少なかった」(25.2%)、「魚を食べることが少なかった」(24.8%)「外食やテイクアウトが中心」(24.0%)などにも回答が集まっており、「いずれも当てはまらない」は約2割にとどまる結果に。食生活や栄養摂取のバランスが乱れている人も多いことが明らかになった。

問2:下記の中で、うつ病の通院治療で行っている(行った)ものを全て選んでください。(複数回答)

 うつ病の通院治療において、具体的にどのような治療を行っているかを尋ねた質問では、「薬による治療」が96.2%と最も多く、次いで「カウンセリング」が54.4%と続いた。
 一方で、睡眠や休息といった生活習慣の改善指導は27.4%、食事内容や栄養改善といった食生活の指導は10.6%と少数であるという結果に。うつ病の治療を行っている(いた)多くの回答者が、主に「薬による治療」に留まっている実態が明らかになった。

問3:うつ病の治療をする(していた)中で、食生活の改善に取り組んだことはありますか。(択一回答)

 うつ病を治療する中で食生活の改善に取り組んだことのある人は、「とても積極的に取り組んでいる(取り組んでいた)」「やや積極的に取り組んでいる(取り組んでいた)」を合計して34.8%という結果になった。
 一方で、「全く取り組んでいない(取り組んでいなかった)」という人も34.6%という結果になり、問1の回答から食生活の乱れ、栄養摂取バランスの乱れがある人が多い一方で、その改善に取り組む人は多いとはいえないという実態が明らかになった。

問4:うつ病は食生活による栄養状態と深い関係があるといわれています。ご存じでしたか。(択一回答)

 「うつ病と食生活」の関係性について、その認知度を尋ねた質問では、「知っていた」と回答した人は27.2%にとどまり、72.8%が「知らなかった」と回答した。うつ病は普段の食生活の栄養バランスと密接に関係しているといわれているが、その認知度は低いことが判った。

問5:うつ病は普段の食生活による栄養状態と深い関係があるときいて、これからご自身の食生活の改善に取り組みたいと思いますか。(択一回答)

 「うつ病は普段の食生活による栄養状態と深い関係がある」という前提で食生活の改善に取り組みたいかを尋ねた質問では、「積極的に取り組みたい(23.2%)」「やや積極的に取り組みたい(46.8%)」を合わせて70%の人が「積極的に取り組みたい」と回答しており、食生活改善の意欲が高い人に対して「具体的にどのように改善すべきか」という正しい知識を提供し、サポートすることが重要であることが示されている。

■多くの医師が「うつ病治療における食生活改善」に意欲

 「飽食の時代」といわれる現代社会において、我々の食生活は「エネルギーの過剰摂取」「偏った食生活による栄養不足」といった課題を抱えている。なかでも、私たちの食生活に欠かせなくなった加工食品は、ビタミンやミネラル、食物繊維といった食材が本来持つ栄養素が精製・加工の段階で失われているといわれており、エネルギーの摂取が過剰になっている一方で、必要な栄養素は欠如するという矛盾が生まれている。
 加えて、肉が中心の欧米型に食生活が変化し、健康に良いとされている魚由来の油(DHAやEPA)の摂取量が減少傾向にあることで、身体的な健康への影響やメンタルヘルスへの影響を生み出しているといわれている。偏った食生活から生まれる肥満、メタボリック症候群、糖尿病といった様々な身体的な問題は、うつ病の発症リスクを1.5倍に高める。
 また、葉酸をはじめとするビタミンや亜鉛などのミネラルの不足もうつ病の発症リスクに影響を与えるとも指摘されている。栄養バランスの乱れが、うつ病をはじめとしたメンタルヘルスの問題を引き起こすトリガーになる。

【医師を対象としたアンケート結果】

 うつ病と食生活の関係について、Meiji Seikaファルマが精神科、心療内科のクリニックを運営する医師(開業医)110名を対象にしたアンケート調査では、医師の60%が「食生活、生活習慣の改善はうつ病治療にとって重要だ」と回答しており、うつ病の治療において、患者の食生活や生活習慣を見直し、積極的に改善していくことが症状緩和・改善にとって重要な役割を果たしていくことを示唆している。

問1:うつ病患者の治療にあたり、食生活をはじめ生活習慣の把握・指導を行なっていますか?(択一回答)

 うつ病治療のうち食生活をはじめとした生活習慣の把握・指導を行なっているかを尋ねた質問では、「すべての患者に対して行なっている(6%)」「患者の症状に応じて行なっている(42%)」を合わせて約半数の48%が「食生活をはじめとした生活習慣の把握・指導を行なっている」と回答した。

問2:うつ病患者の治療にあたり、食生活の見直し、生活習慣の改善は重要でしょうか?(択一回答)

 食生活の見直しや生活習慣改善の重要性を尋ねた質問に対しては、60%もの医師が「食生活、生活習慣の改善は重要」と回答。投薬やカウンセリングだけでなく、患者自身の食生活や生活習慣を見直し、改善していくことの重要性がわかる結果となった。

【うつ病治療の専門家が語る「うつ病と食生活」】
功刀浩帝京大学医学部教授

エネルギーの過剰摂取による生活習慣病とうつ病は相互に悪影響

 加工食品の拡大や欧米化した食生活による栄養バランスの乱れとエネルギーの過剰摂取、移動手段の利便性が高まったことによる運動不足、昼夜を問わず明るい場所で活動することによって生じる生活リズムの乱れ、インターネットの普及によるスマホ依存やゲーム依存の拡大といった現代のライフスタイルの変化は、メンタルの不調に大きく影響している。
 加えて、コロナ禍による対人関係の変化、ストレスの蓄積、アルコール摂取量の増加、生活リズムや食生活の乱れなどもメンタルに大きく影響していると考えられる。
 なかでも、エネルギーの過剰摂取は肥満、メタボリック症候群、糖尿病といった生活習慣病の罹患リスクを高めることになり、こうした疾患はうつ病の発症リスクを約1.5倍高めるといわれている。
 一方で、うつ病自体も、これらの生活習慣病の発症リスクを高めるといわれており、うつ病と生活習慣病は相互に悪影響を与え合う関係にあるといえる。

魚に含まれる栄養素がメンタルの健康にも良い影響

 加工食品の拡大や欧米化による栄養バランスの乱れによるビタミン(ビタミンDや葉酸など)やミネラル(亜鉛など)の不足が生じるとうつ病の発症リスクが高まる。北米イヌイットの魚を中心とした食生活が身体的な健康に良いことは古くから指摘されていたが、近年の研究により、メンタルの健康にも良い影響を与えていることが明らかになってきた。
 日本人の食生活は、かつての魚中心のものから肉中心のものへと変化しており、魚の脂に含まれるEPAやDHAといった成分の摂取が減少してきている。このような栄養素の摂取量の減少はうつ病の発症リスクを高めると考えられる。

バランスの良い食生活を

 メンタルを健康に保つためには、エネルギーの過剰摂取に注意しながらビタミンとミネラルのバランスが取れた食生活を送ることが重要である。うつ病の治療においても、薬物治療やカウンセリングと並んで食生活をはじめとしたライフスタイルの見直しが不可欠になってきている。メンタルの健康は身体が作っており、身体の健康はメンタルヘルスと密接に関わっている。

タイトルとURLをコピーしました