データでみる医療・医薬の世界 八野芳已(元兵庫医療大学薬学部教授) 第2回

第1節:食生活と栄養

(2)食生活とライフステージ&附則「天寿を全うする」って・・・

われわれが自分の人生を「明るく、元気に、イキイキと」健やかに歩んでいくには、毎日の食事が重要かつ不可欠であることは言うまでもなく、意識してバランスよく食するよう心掛けることが何より大切である。そして、その達成のためには生まれてから終末を迎えるまでのライフステージ(乳幼児から高齢期まで)において、各々のステージの特徴を踏まえ、それぞれのライフステージでどのような「健康な食事」のあり方が望ましいのかを考えることが重要である(1)。そして、健康寿命を長く保ち「人生100年時代」を有意義に全うできるよう自分自身も果敢に努力し取り組むことで成し得るものと考える。

 では、ここで『日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会』が平成26年10月にまとめた報告書(厚生労働省)(1)によって一つの方向性が示されているので、以下にその関係するところを抜粋させていただいた。各人が各人の置かれているライフステージで「健康な食事」を考えてはいかがでしょうか。

わが国は言うまでもなく世界でも有数の長寿国で、平均寿命は、男性では80.21年、女性では86.61年と男女とも過去最高を更新している。また、男性でははじめて80 年を超え(平成25 年簡易生命表)、今後さらに伸長し、2060年には男性で84.19年、女性で90.93年に到達すると将来推計で予測されている。このため、日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方を考える時、①長寿の背景にある社会変化②健康状態など食事をめぐる状況について、これまでの変遷や諸外国との比較などから全体像を掴み、今後の社会や健康課題などを見据えて、その望ましいあり方を明らかにしていく必要がある。その中で食料費の項目別支出割合を世帯類型別にみると、単身世帯では他の世帯に比べて、外食及び調理食品が多い傾向にあり、今後はそうした需要の増大も見込まれることになる(1)

 一方、「働き方改革」が推し進められている中、共働き世帯が増加傾向にあるなど、生活時間の実態も様々になっている。生活時間について、家事関連時間では、男女間で大きな差がある。また、就学前の子どもがいる場合に家事関連時間が多いなど、生活時間はライフステージやライフスタイルによって異なっている。生活背景の違いにより、食品・食事の選択、整え方や食べ方も多様になっているといえる(1)

このように生活環境はライフステージやライフスタイルによって異なっていて、生活背景の違いにより、食品・食事の選択、整え方や食べ方も多様になっているといえる。「健康な食事」は、実に多様な要素から成り立っている。これらを食に関わる行動の面から整理し直してみると、大きく、“食べる”、“つくる”、“伝え合う”という3つの面から整理できる。“食べる”は、何を、どのように、誰と食べるのかといったこと、“つくる”は、いわゆる調理だけではなく、食品を選択したり、食事の準備をしたり、食卓を整えたりすること、“伝え合う”は、食に関する知識や技術、情報を共有したり、学んだり、教えたりするといったことであり、これらは複合的な行動や状況から構成されているととらえることができる。また、こうした行動や状況は、地域特性を生かしたフードシステム、地域の気候・風土に根ざした食文化、多様な地域産物と暮らしとのつながり、人と人とのつながりなど、様々な背景により、そのあり方も異なってくる(1)

そこで、ライフステージごとに「健康な食事」に関わる特徴について、“食べる”“つくる”“伝えあう”という側面から整理し、あわせて健康課題や社会環境の特徴にも触れることとした(表6)。子どもについては、肥満傾向児の割合が1割程度みられる。「朝、昼、夕の三食必ず食べることに気をつけている」と9割近くの子どもが回答する一方で、食事づくりや家族と一緒に食べる共食などの生活体験が乏しい子どもがみられ、子どもの貧困など、社会経済的課題も生じている。成人については、男性では肥満者の割合が3割を占める一方で、20 歳代の女性ではやせの者の割合が2割を占める。男性では、自分で調理し食事づくりをする機会が少なく、外食の頻度が高い傾向にあり、女性でも20 歳代は同様の傾向にある。また、20 歳代では単独世帯が6割を超えている。高齢者については、低栄養傾向の者が2割弱みられる。要介護認定者数は500万人を超え、介護が必要となった主な原因は、脳血管疾患、認知症の順で多い。主食・主菜・副菜のそろう食事をはじめ食事に関する意識や実践は良好だが、単独世帯の割合が増加しており、家族や友人と楽しく食卓を囲む機会がほとんどない人もみられる(1)

こうしたライフステージごとの特徴を踏まえ、それぞれのライフステージにおいて、どのような「健康な食事」のあり方が望ましいのか、例として整理してみることとした(図25)。子どもにおいては、様々な食に関する体験を通して、健康な心身や豊かな嗜好を育んだり、食事づくりや食卓を整えたりする力を養ったり、食に主体的にかかわる力を養ったりすることが望ましく、そうした体験を積み重ねていくことが重要である。

成人においては、生活習慣病の発症予防や重症化予防を図るため、多様なライフスタイルにあわせて食事づくりや食べ方を工夫し、そのために必要な情報を様々な場面で発信・共有することで、健康な心身を維持・増進する生活を続けることが重要である。高齢者においては、加齢による虚弱を予防し、生活の質の維持を図るため、心身の状態にあった食生活を無理なく続け、これまでの経験や知恵を身近な人々に伝えながら、満足のいく生活をより長く続けることが重要である(1)

また、いずれのライフステージにおいても、それぞれの望ましいあり方を無理なく続けるためには、社会環境の整備も必要となる(1)。また、ライフステージでの食事については大阪府栄養士会(2)など多種多様なサイトから情報が発信されているので各人が取捨選択して活用されることを期待したい。

最後に、松下幸之助氏の「天寿を全うしよう ~松下幸之助 人生後半を生きる~」(3)から次の文章を引用させていただき、今後の人生の糧としたいと思う。

『私が80歳になったときに、ある人が〝半寿の祝い〟というのをくれたんですよ。〝半寿の祝い〟とはどういうことかわからなかったので、くれた人にきいたんです。そうしたらその人が、「古来、中国にそういうことがある。〝天寿〟というと160歳である。それで80歳になったら、ようやく半分に達したから、〝半寿の祝い〟というのを出すのである」と。それで初めて、80歳になったら〝半寿〟という祝いをお互いに取り交わしてもいいということを知ったのであります。
それを知って私は非常に勇気が出て、天寿を全うしてやろうと、こう考えてみたんです。160まで生きることは、まあ、おそらくありえませんけれどね。そやけれども〝天寿を全うする〟という言葉を使う以上は、160歳を目標にしてやらなきゃいかん。
ということで、今、天寿を全うする闘争を開始してるんですよ(笑)。160まで生きんならん。ずいぶんありますからな、楽しいな、とこう思っているんですよ。もう3回ぐらい結婚し直さないとあかん(笑)。』

出典:「日本経営者団体連盟創立30周年・日経連タイムス1500号記念講演会」(昭和五十三年六月二十三日)『松下幸之助発言集5』

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参考資料:

(1)日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会 報告書 平成26年10月

厚生労働省

(2)ライフステージの食事 | 大阪府栄養士会 https://www.osaka-eiyoushikai.or.jp/lifestage/index.html

(3)PHPsyakai 2018年3月15日 天寿を全うしよう ~松下幸之助 人生後半を生きる~2018-02-14T10:57:00+00:00 松下幸之助トピックス

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