5種類のヒト培養細胞から新たな1074種類の難溶性RNA同定 早稲田大学の研究グループ

がんの発生・進行、ウイルスのRNAの分解など疾患研究の基盤的リソースとして期待

図1 配列解析による難溶性RNAの様子

 早稲田大学理工学術院総合研究所 次席研究員の曽超、浜田道昭同大理工学術院教授らの研究グループは、5種類のヒト培養細胞の独自の実験データを、新規に構築した情報解析パイプラインで解析。
 その結果、細胞内の非膜構造体形成に関与している可能性がある1074種類の「抽出しにくいRNA(難溶性RNA)」を同定し、それらの特徴を明らかにした。
 同研究では、5種類のヒト培養細胞(A10、A549、HAP1、HEK、HeLa)に対する独自の実験データから、1074種類の難溶性RNAを特定。さらに、難溶性RNAを塩基配列の類似性に基づいて4つのグループに分類し、それぞれが異なる機能を持つ非膜構造体から派生している可能性があることが示された。
 これらの研究成果は、7月19日、英国オックスフォード大学出版局によって発刊される『Nucleic Acids Research』(論文名:Landscape of semi-extractable RNAs across five human cell lines)に掲載された。
 同研究は、世界で初めて多様な細胞株における難溶性RNAを同定したもの。これらのRNAはそれぞれ異なる機能を有する、細胞内のさまざまな非膜構造体から派生する可能性があり、RNA中心の相分離を研究するための重要なリソースとなる。
 相分離は疾患などのさまざまな生命現象に関与していることが知られており、今回の研究により提供されるリソースは、がんの発生や進行、ウイルスのRNAの分解、細胞のストレス反応などの研究の基盤的なリソースとなることが期待される。
 様々なストレス状況下では、ストレス特異的な相分離構造体の形成が誘発される。そのため、今後は、異なるストレス条件下でのRNAの難溶性質と潜在的な機能を調べることが課題となる。また、難溶性RNAがどのように相分離に関係しているかの詳細メカニズムの研究も重要な研究テーマとなる。

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