アストラゼネカは3日、抗 RSウイルスヒト化モノクローナル抗体製剤「シナジスについて、RSウイルス感染症の重症化リスクの高い乳幼児を新たに投与対象とする適応追加承認申請を行ったと発表した。
適応は、RS ウイルス感染症の重症化リスクの高い、肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患を有する乳幼児。
RSウイルスは、乳幼児の気管支炎や肺炎を含む下気道感染(LRTI)の原因となる一般的な病原体であり、2歳までにほとんどの乳幼児が感染すると言われており、早産児や生まれつき肺や心臓等に疾患を抱える乳幼児に感染すると重症化しやすいとされている。
シナジスは、これらの重症化リスクを有する乳幼児に対し発症抑制の適応として既に承認されている。同本申請は、森雅亮聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科/東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座教授が実施した医師主導治験の結果に基づくもの。
同治験は、日本医療研究開発機構(AMED)が、本邦における革新的な医薬品・医療機器の創出を目的とした臨床研究や治験の更なる活性化を目的とした研究を推進する「臨床研究・治験推進研究事業」に採択されている。
同治験は、肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患を有する乳幼児におけるシナジスの有効性、安全性、および薬物動態を検討した試験である。
なお、アストラゼネカは、日本で RS ウイルス感染症における唯一の抗体薬の承認を得ている。
◆同治験を率いた森雅亮教授のコメント
これまで薬事承認のなかった肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患は、RSウイルス感染症が重症化するリスクが高く、その重症化による換気能力低下または喀痰排出困難を伴うリスクを有していることが知られている。
これらの5疾患群を原疾患に持つ24カ月齢以下の新生児、乳児、および幼児に対して、シナジスを30 日おきに4回以上連続して投与することにより、RSウイルス感染症の重症化による重篤な呼吸器症状の発現と、それに続く入院を回避できることが示唆された。
今後、そのような患者さんに対しても、シナジスが臨床の場で広く使用されることを願っている。