アイ・ピースのiPS細胞用いて高純度心筋の安定作製に成功 Heartseed

自家iPS細胞による心筋再生医療推進に大きく前進

 Heartseedは1日、個人向けiPS 細胞バンキング企業のアイ・ピースと共同で、アイ・ピースのiPS細胞株を用いて高純度心筋の安定した作製に成功したと発表した。
 アイ・ピースが作製した複数のドナー由来iPS細胞株に対して、Heartseed 独自の心筋分化・純化精製方法を用いて分化誘導した結果、そのすべてのiPS細胞株から高純度の心筋細胞を安定して作製したもの。今回の成功により、患者自身の細胞から製造したiPS細胞を用いる自家心筋再生医療の実現に向けて大きく前進した
 自家iPS細胞を活用した医療の大きな利点は、細胞移植を行った際に免疫反応が起こらず免疫抑制剤が不要となる点にある。
 だが、iPS 細胞の目的細胞への分化にはバラツキがあり、各ドナー由来の iPS 細胞から心筋細胞を効率よく作製するためには、iPS 細胞ごとに心筋作製方法を最適化する必要がある。これが自家 iPS 細胞を用いた医療の実現へのハードルとなっていた。
 アイ・ピースでは、個人向けiPS細胞バンキングサービス(マイピース)の実現に向け、複数のドナーからiPS細胞を同時並行で作製する技術を確立し、多数の医療用グレードiPS細胞を安価かつ安定的に製造している。
 Heartseed は、他家iPS細胞から作製した高純度の心筋細胞を微小組織(心筋球)にした HS-001(開胸投与)および HS-005(カテーテル投与)の開発に取り組んでおり、心筋細胞の性質と、効率的な心筋細胞の分化誘導方法に関する知見を蓄積している。
 こうした中、Heartseed は、アイ・ピースが作製した複数のドナー由来のiPS細胞株を使用して、Heartseed 独自の心筋細胞の分化・純化方法による高純度心筋の作製を検討してきた。
 実際に、通常の心筋分化方法を用いてiPS細胞から心筋細胞へ分化した場合、分化効率が低いiPS細胞のラインが多く存在した(図 1)。
 一方で、Heartseed独自の心筋分化方法を適用することで、4人の異なるドナーを含む8つの iPS 細胞ラインの全てにおいて、高い分化効率で心筋細胞を作製することに成功した(図 2)。
 さらに、得られた心筋細胞にHeartseed独自の純化方法「メタボリックセレクション」を適用することにより、8 つのライン全てを医療応用に適した99%近い純度にまで高めることに成功した。

心筋トロポニン T: 心筋細胞のマーカーで、このマーカーが陽性の割合が心筋細胞の純度を示す。
 これらの結果によって、自家心筋再生医療の展望が大きく広がる。Heartseedは、アイ・ピースとの協力をさらに推し進め、患者自身の iPS細胞を利用した心筋再生医療の一日も早い実現を目指していく。

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