武田薬品は12日、卵巣がん患者がたどる「疾患の認識、診断、治療、その後の生活に至る道のり」であるペイシェントジャーニーの分析・可視化に関する共同研究結果を学会発表したことを明らかにした。
同研究結果は、9日に米国マサチューセッツ州・ボストンで開催された国際医薬経済・アウトカム研究学会(International Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research 2023:ISPOR)で発表したもの。
研究では、2013年5月から2020年10月までに国立がん研究センター東病院タの電子カルテシステム上に記録された卵巣がん患者574名分の診療データ(テキストデータとして記録された情報を含む)を抽出・構造化し、医学的観点を加えて分析した。
その結果、卵巣がん患者の同センター東病院での診察から治療、治療後までのペイシェントジャーニーが可視化され、通院頻度や治療期間が多岐にわたることが明らかになった。
また、患者単位で時系列に分析することで、実臨床の多様な治療のパターンや、長期的な治療の流れが可視化された。
同研究は、卵巣がんの個別化治療の質向上および治療結果向上に寄与する臨床の課題抽出を目的として、2021年5月に武田薬品が、富士通と、国立がん研究センターと締結した共同研究契約に基づく。富士通がプラットフォームとなるICT(Information and Communication Technology)を提供し、国立がん研究センターからはペイシェントジャーニーの分析に必要となる匿名化された診療データおよび医学的知見が提供され、武田薬品がペイシェントジャーニーの分析対象データの選定および分析を実施した。
武田薬品は、現在、同研究の学術論文の掲載に向けて準備を進めている。また、引き続き、治療の多様性に関連する要因を更に詳細に分析することで、患者の治療選択への貢献や、治療成績の向上に貢献できるよう取り組みを進めていく。
◆土原一哉国立がん研究センター先端医療開発センタートランスレーショナルインフォマティクス分野分野長のコメント
本研究によって、日常診療を記録した電子カルテデータがペイシェントジャーニーの可視化に活用できることが明らかになった。
今回得られた結果から、当院のがん患者さんの治療成績の向上や、他施設での診療の参考に繋がることを期待する。がん克服に向け研究パートナーと医療ニーズを捉え、今後のさらなる進展を望んでいる。