医師対象全身性SLE患者対象の国際調査で日本での臓器障害リスク課題が判明 GSK

 GSKは、世界 7 カ国(日本、米国、カナダ、中国、フランス、ドイツ、スペイン)のリウマチ専門医、腎臓専門医および内科専門医648名を対象に、全身性エリテマトーデス(SLE)患者に関する国際調査から日本の結果を公表した。
 同調査は、ループス腎炎を有する患者を含むSLE患者の臓器障害および疾患修飾へのアプローチの実態把握を目的としたもの。
 調査期間は、2022年7 月~9 月。各国サンプル数648名の内訳は、日本(n=100)、米国(n=103)、カナダ(n=41)、中国(n=100)、フランス(n=102)、ドイツ(n=102)、スペイン(n=100)で、SLE患者の臓器障害リスクに関する課題が明らかになった。
 主な結果概要は、①新型コロナ感染症の蔓延による診療機会の減少などにより、臓器障害のリスクが高まった、②臓器障害に関する患者と医師との対話は診断時に行われることが重要と示唆、③臓器障害発症のリスクを正確に予測・判断するためのデータやツールの必要性が示唆ーの3点。
 臓器障害は、腎臓、皮膚、心臓に多く発症し SLE の長期予後不良の主な要因であり、そのほとんどが診断から5年以内に発症することから、臓器障害のコントロールには、早期診断と早期治療が重要とされている。
 だが、新型コロナ感染症の蔓延などにより、多くの患者が診療の予約や最適な治療の機会を逃し、さらに一部の患者では臓器障害の発症や増悪につながるなどの臓器障害のリスクが高まったと世界の約半数(44%)の医師が回答した。日本においても40%の医師が同様の回答をしており例外ではなかった。
 また、新型コロナス感染症の蔓延による影響以外にも、臓器障害リスクを高める要因が確認された。

【診断時の臓器障害に関する患者と医師の対話の重要性示唆】
 日本において、4 人に 1 人(24%)の医師が、患者に症状がなくても臓器障害が生じるリスクがあると認識している一方で、85%の医師が、診断後1年以上経過してから臓器障害のリスクを患者に伝えていることや、また、2 人に1人(46%)の医師が、患者から先に臓器障害について話をされるまで待つことが頻繁にあると回答した。
 同調査に回答した医師は、SLE 患者の臓器障害リスクとその発症のタイミングについても熟知しているが、どの患者が最も臓器障害のリスクを抱えているかを判断する上での課題も挙げている。

【SLE患者の臓器障害リスク予測や進行抑制に役立つデータやツールの必要性を示唆】
 日本において、半数以上(64%)の医師は、重大な臓器障害リスクのある SLE 患者を簡便に特定できる方法を求めていると回答した。また、2人に1人(43%)の医師が、SLEによる臓器への影響をモニタリングおよび測定することは困難であると回答。3人に1人(76%)の医師が、現状の臓器の機能および障害のより正確な状況を示すバイオマーカーを特定したいと回答した。

【医師が利用できる治療法の情報が多ければ、現状の症状の緩和に努めながら、長期的な治療計画も立てられ、短・長期の治療目標の両立の可能性があることを示唆】
 5人に4人(88%)の医師が、「臓器障害は、主に活動性の基礎疾患と標準治療薬によって引き起こされることを認識している」と回答した。一方で、48%の医師が、「高用量ステロイドを使用するのは SLE 患者に提供できる治療選択肢が限られているから」と回答した。さらに、92%の医師が、「生物学的製剤により臓器障害の進行を遅らせることが可能だと考えている」にもかかわらず、54%の医師が、「患者に免疫抑制剤およびステロイドを使用したが無効であった場合にのみ生物学的製剤を使用すべき」と回答した。

【SLEの病因およびSLEは修飾可能な疾患という見解に対する医師の意見統一性は無し】
 84%の医師が、SLEが複数の要因によって引き起こされていると回答し、また半数以上(66%)の医師が、「この疾患の多様性と全身の様々な部位に起こる臓器障害により、疾患を根治することは不可能である」と考えていることが判った。
 さらに、4人に3人(63%)の医師が、疾患修飾薬の不足によりSLEの治療が困難になっていると回答しているが、別の研究では、炎症プロセスを阻害する疾患修飾薬によって SLEの症状を緩和できると示されている。

◆マイク・ドネリー世界ループス連盟事務局コミュニケーション担当副社長のコメント
 臓器障害に関して、SLE 患者さんと医師は対話をしているが、SLE 患者さんの臓器障害が患者さんとその家族に及ぼす影響を真に軽減するためには、さらに多くの対話が必要である。さらに、その対話は、診断時に行われるべきである。

◆Rajeev Raghavanヒューストン大学ティルマン・フェルティッタ・ファミリー医科大学腎臓専門医・医学部臨床教授、ベイラー医科大学非常勤准教授のコメント
 臓器障害は、SLE と共に生きる人々にとって非常に現実的なリスクである。この調査結果は、ツールやガイドラインの改善の必要性を強調している。
 また、我々医師が、診断時に臓器障害のリスクについてSLE患者さんの理解を深めるために行動し、臓器障害リスクを積極的に低減する長期的な治療管理計画を患者さんと一緒につくることが重要である。

◆Roger A. Levy GSK Immunology & Specialty Medicine グローバルメディカルエキスパートのコメント
 SLE は、早期診断と早期治療によってより良く管理することができるが、臓器障害は、診断から5年以内に患者さんに影響を及ぼす。今回の調査結果では、パンデミックから脱却する際に、臓器障害のリスクと短期および長期の治療目標との整合性を取りながら、患者さんと医師が積極的に対話することの必要性も示された。

◆ポール・リレットGSK代表取締役社長のコメント
 このたびの国際調査で、日本のSLE患者さんの臓器障害リスクに対するアプローチの現状をより正しく理解し、SLEの治療環境のさらなる改善に寄与する課題創出の機会が得られたことを光栄に思う。
 今回の調査に加えてGSKでは、ループス腎炎の既往を有するSLE患者さんの治療におけるエビデンスを創出する産学連携の取り組みも実施している。今後も、患者さんおよび医療従事者の先生方に役立つ情報を提供できるよう注力していきたい。

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