2024年度は米国3新製品の伸長でコア営業利益黒字化に 住友ファーマ野村博社長

5年先から自社製品がうまく循環する体制作りが我々の使命

 住友ファーマの野村博社長は8日、大阪市内で会見し、今後の業績見通しを予測。「2022年度はキンモビ(パーキンソン病に伴うオフ症状治療剤)の減損損失約544億円により最終利益は赤字になる。2023年度はラツーダ(非定型抗精神病薬)が特許切れし、米国3新製品がまだこれをカバーするほど拡大していないためコア営業利益は赤字になる」との見込みを示した。
 だが、2024年度は、「米国3新製品の順調な伸長により、コア営業利益は黒字回復する」と明言し、「現在策定している中期経営計画(2023-2027)もそのビジョンに沿って進めて行く」と力を込めた。
 野村氏は、前臨床、P1段階化合物の開発促進にも触れ、「しっかりと見極めて開発し、その後のコマーシャルに繋がることも必達条件としている」と強調。
 その上で、「この5年間は、米国3新製品の最大化、ウロタロント(抗精神病薬)、他家iPS細胞由来製品(パーキンソン病)の上市、北米でのコストシナジーを図ってしのぎつつ、自社製品の創出に備えたい」と訴えかけた。
 2027年以降にも言及し、「精神神経系の様々なモダリティ製品を中心に、iPS細胞由来製品、フロンティ事業製品などの自社製品がうまく回転していく循環作りが我々の大きな使命である」と言い切った。
 ラツーダは、米国で2023年2月20日に特許切れする。ラツーダに依存した収益構造からの転換期について野村氏は、「現在発売中のオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫治療剤および子宮内膜症治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱)の外国人助っ人(導入品)に、2030年代半ばまで収益の柱になってもらう」と話す。
 オルゴビクス、マイフェンブリーについては、「ファイザーが何時までコラボレーションを望むか判らないが、ファイザーとともに伸長して行きたい。利益はファイザーと折半なのでラツーダと同じ利益にはならない」とした上で、「この2品目については、マイオバント社の100%子会社化も含めてキャッシュフローの成長の柱にしたい」考えを強調した。
 また、大塚製薬との提携により製品価値の早期最大化を目指すウロタロント(住友ファーマオリジン)は、統合失調症(米国P3、日中P2/3)、大うつ病補助療法(米国P2/3)、全般性不安障害(日米P2/3)の適応症で開発されており、米国では2024年上市を見込んでいる。
 野村氏は、「ウロタロントは、3本の臨床試験を並行して実施している。薬の値段を上げない制約が掛かかりつつあるが、人口が増え、経済も成長している米国において、ウロタロントの伸長に尽力したい」と強調した。
 自社製品を創出するための研究開発のあり方にも言及し、「これまでの研究から開発までの縦割り組織を一本化し、個々のテーマ毎のプロジェクトリーダーが予算をしっかりアレンジして、プロジェクトに参加する人材も決定できるように改善した。研究が独りよがりにならないようアカデミアとも協力する」と説明した。
 いわば、プロジェクトリーダーがバイオベンチャーの社長のように運営することで、研究者のモチベーションを高く維持しつつ、成功確度をあげていく戦略が取られるようになった。
 さらに、「今後5年間は、潤沢に研究開発費は使えないので、非臨床やP1にあるものをどうして行くのか経営も入って見極めていく。テーマ、成功確度、市場性を総合的に判断して、自分たちでやる物、第三者と協力する物、ライセンスアウトする物をカテゴリーの中に落とし込んでいき、自分たちでやる物についてはしっかり製品化する」制度を訴求した。

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