住友ファーマは、6月11日~14日までスウェーデン・ストックホルムで開催された欧州血液学会(EHA)2026において、抗がん剤として開発中の選択的経口PIM1キナーゼ阻害剤「ヌビセルチブ」(TP-3654、骨髄線維症)および選択的経口メニン阻害剤「エンゾメニブ」(DSP-5336、急性骨髄性白血病)に関する予備的な臨床データおよびトランスレーショナル研究の新たな知見を発表した。
同学会では、再発または難治性の骨髄線維症患者を対象としたヌビセルチブとモメロチニブの併用療法の予備的な臨床データが初めて発表され、進行中のヌビセルチブのP1/2試験において骨髄線維症患者で観察されたヘモグロビン改善の作用機序に関する新たなトランスレーショナル研究の知見が示された。
これらに加え、急性白血病におけるエンゾメニブの耐性機構に関する新たな研究データが報告された。
ヌビセルチブとモメロチニブの併用療法については、安全性と有効性を評価する目的でグローバルP1/2試験が進行中で、2025年12月6日時点において、再発または難治性の骨髄線維症で貧血を伴う患者26例が登録された。
全例が骨髄線維症患者の標準治療であるJAK阻害剤による前治療歴があり、41%の患者に高分子リスク変異が認められた。
ヌビセルチブ(240、360、480、720mg 1日2回、食後投与)とモメロチニブ(200mg 1日1回)の併用療法は良好な忍容性を示し、用量制限毒性(DLT)は認められなかった。20%以上の患者で認められた主な治療関連有害事象は下痢、悪心および血小板減少であり、このうちグレード3は出血を伴わない血小板減少が3例であった。また、24週間の治療期間を通じて、ヘモグロビン平均値および血小板数は安定して推移した。
有効性評価が可能で、少なくとも12週間の投与を完了した患者(15例)においては、臨床活性が観察された。脾臓容積25%以上減少(SVR25)が認められた患者の割合は12週時点で73%、24週時点で100%(n=5)に達し、全身症状スコア50%以上軽減(TSS50)した患者の割合は12週時点で53%、24週時点で60%(n=5)であった。
また、IWG ELN2024基準に基づく貧血改善がいずれかの時点で認められた患者は50%であった。さらに、24週時点において60%の患者が、症状改善、脾臓縮小および貧血改善の3つの指標をすべて満たすトリプルレスポンスを達成した。
ヌビセルチブとモメロチニブの併用療法の開発は、骨髄線維症の進展に関与する複数のシグナル経路を包括的に抑制する必要性に基づいている。従来の治療法は、JAKシグナル経路の阻害が中心であるが、PIM1の発現はしばしば亢進しており、NF-κBやERGといったJAK非依存的な代替経路によって誘導される可能性が指摘されており、これらの経路はJAK阻害剤治療下でも疾患の存続・進行を可能にする要因となる。ヌビセルチブとモメロチニブの併用により、これらの代替シグナル経路も包括的に抑制することで、より持続的な治療効果が期待されている。
ヌビセルチブの作用機序をより明確化するためのトランスレーショナル研究では、ヌビセルチブはPIM1阻害作用に加えてACVR1にも結合・阻害し、鉄代謝の主要な調節因子であるヘプシジンのmRNA発現が低下するというin vitro試験および生化学的なデータが示された。
これらの知見と一致して、ヌビセルチブ単剤療法のP1/2試験において、再発または難治性の骨髄線維症患者でヘプシジン濃度の低下が認められ、ヘモグロビン値の安定化および改善効果の作用機序である可能性が示唆された。
また、白血病およびメニン阻害に関するトランスレーショナル研究では、急性白血病患者におけるエンゾメニブ治療後の獲得耐性と関連するMEN1遺伝子の特異的な変異パターンが同定された。治療前後で遺伝子の状態を連続的に調べた結果、E368K変異が再発時に最も多く見られる耐性獲得の要因であることが明らかになり、初回治療では効果があったものの再発した患者のうち53%でこの変異が認められた。
前臨床研究では、このE368K変異がエンゾメニブの主要な耐性変異となることが予測されるとともに、この変異が他のメニン阻害剤の活性に影響を及ぼさない可能性が示唆された。
これらの知見は、急性白血病患者における治療成績の改善に向けて、逐次的なメニン阻害療法のさらなる検討を支持するものである。
同学会で発表した結果は、骨髄線維症および急性白血病といった血液腫瘍に対して、複数の作用機序に基づく治療アプローチの重要性を示すものであり、引き続きヌビセルチブおよびエンゾメニブの臨床開発を推進していく。

