細胞科学研究財団「第三回塩野賞」に平野俊夫氏(量子科学技術研究開発機構理事) 塩野義製薬

 塩野義製薬は1日、細胞科学研究財団「第三回塩野賞」に平野俊夫氏(量子科学技術研究開発機構理事)が選出されたと発表した。 受賞対象研究は、「インターロイキン6 の発見と疾患との関連の解析および治療応用に対する貢献」
 塩野賞は、同財団が生命科学の研究の振興を図るために行う助成事業の対象となった助成研究の中から、トランスレーショナルリサーチに則って進捗発展に顕著な功績のあった研究業績に対して行う褒賞である。

 過去に当財団が助成事業において研究助成を行った研究者で、その分野において研究を進捗発展させて疾病の予防・治療に顕著な業績をあげた者が対象となる。受賞理由は、次の通り。
 IL-6などのサイトカインは、細胞の増殖、分化、生存を制御することにより、免疫応答、造血反応、炎症反応を調節している重要な生理活性因子である。
 1970 年代には、これらの因子の実体は不明であったが、平野氏はBリンパ球に作用し、抗体産生細胞への分化を誘導するサイトカインの精製を試みることを開始した。
 1978年、大阪府立羽曳野病院勤務時に、「結核性胸膜炎患者胸水中のリンパ球は、B リンパ球を抗体産生細胞に分化させる因子を多量に産生する」ことを見出し、生理活性分子の精製を始めた。
 1986年にそのcDNAのクローニングに成功し、IL-6 の発見に至った。さらに、IL-6 の受容体をコードする遺伝子をクローニングし、その全構造を明らかにした。引き続き、IL-6 が関節リウマチ患者関節液中に高濃度存在することを発見し、IL-6 が関節リウマチなどの自己免疫疾患に関与している可能性を見出された。これらの成果に基づき、「IL-6 とそのレセプターに関する研究」課題で昭和 63年度の当財団研究助成を受けた。
 平野氏は、IL-6 受容体を介するシグナル伝達機構を解明するとともに、IL-6 受容体を介する抑制シグナルを特異的に欠失した変異 IL-6 受容体 gp130 を発現しているノックインマウス(F759 マウス)の作製によって、IL-6 シグナルの異常により関節リウマチに類似した自己免疫疾患が自然に発症しうることを証明した。
 また、炎症を増幅するIL-6 増幅回路「IL-6 アンプ」を見つけるとともに、関節などの病変が生じる非免疫組織での感染や損傷、あるいは神経刺激などの「局所引き金」がIL-6アンプ活性化を介して、非免疫組織と免疫系の相互作用を引き起こすことが、関節リウマチなどの慢性炎症疾患の発症機序であることを見出した。
 加えて、IL-6アンプがヒトの様々な疾患や病態(糖尿病、関節リウマチ、認知症、がん、心臓血管疾患など)に関与していることを明らかにするとともに、重症の新型コロナウイルス感染症にみられるサイトカインストームで中心的な役割を果たしていることを提唱した。
 IL-6は、個体発生・組織再生や老化現象、さらには老化に伴う慢性炎症や疾患に深く関与していることなどが明らかにされており、同博士の研究成果は免疫学の範疇を超えて広く生命科学全般に影響をもたらした。
 それは、IL-6 阻害抗体医薬開発の基盤ともなった。IL-6 阻害薬は関節リウマチや、白血病の CAR-T 治療における重篤な副作用であるサイトカインストームの治療薬として、また重症の新型コロナウイルス感染症の薬剤として使用されるに至っており、疾病の治療にも大きく貢献し、塩野賞の対象者としてふさわしい研究業績を上げた。

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