抑うつ症状のタイプ適応メンタルヘルスケアが健康寿命を延伸する可能性示唆

東北大学産学連携機構イノベーション戦略センター特任教授の永富良一氏らの研究グループは、仙台市鶴ヶ谷地区在住の高齢者を約18年間追跡調査した「鶴ヶ谷プロジェクト」において、抑うつ症状のタイプ(構造)と健康寿命(要介護化または死亡までの期間)との関連を検討し、抑うつ症状は4つの「症状のタイプ(構造)」によって健康寿命への影響がそれぞれ異なることを明らかにした。
女性は「不幸感」が要介護化・死亡リスクを低下
男性では「無価値感」が、女性では「不安感」が要介護化または死亡リスクの上昇と関連があることが判った。その一方で女性では「不幸感」が要介護化または死亡リスクの低下と関連することを確認した。同研究により、抑うつ症状のタイプに応じたメンタルヘルスケアが健康寿命の延伸に寄与する可能性が示唆された。
日本では健康寿命の延伸が重要課題となっている。だが、高齢者の抑うつ症状は要介護化や死亡リスクと関連するものの、「気分の落ち込み」「不安」「無力感」など、抑うつ症状のタイプの影響や性差については明らかにされていなかった。
同研究では、「鶴ヶ谷プロジェクト」のデータを用いて次の解析を行った。2002年に高齢者総合的機能評価を受けた70歳以上の高齢者585名 を対象に、抑うつ評価(GDS-15(高齢者用抑うつ尺度)の回答結果の因子分析を行い、抑うつ症状のタイプ分類を行った。また、約18年間の追跡調査期間中の抑うつ症状タイプごとの要介護認定または死亡のリスクを比較した。
その結果、男性では「無価値感」が強いほどリスクが上昇することが示された(ハザード比[HR]1.85、95%信頼区間[CI]0.98–3.49、傾向性P=0.04)。一方、女性では「不安感」が強いほどリスクが上昇するものの(HR 1.88、95%CI 1.15–3.07、傾向性P=0.02)、「不幸感」はリスクの低下と関連があることが分かった(HR 0.51、95%CI 0.30–0.87、傾向性P=0.01)。
この結果から、抑うつ症状の質と性別によって健康寿命への影響がそれぞれ異なる可能性があることが確認された。
同研究の結果により、高齢者の抑うつ症状の評価においては、総点数だけでなく症状の内容によってその後の健康寿命への影響が異なり、また男女では抑うつ症状の内容によって健康寿命への影響が異なる可能性があることが明らかになった。
これは、高齢者における抑うつ症状において、内容や性別によって異なる介入戦略を考慮する必要があることを示すもので、抑うつ要因を起点とした地域の要介護予防・健康寿命延伸の政策に重要な示唆を与えるものである。同知見をもとに、今後は高齢者の抑うつ症状である「無価値感」や「不安感」に対してそれぞれどのような介入戦略が有効なのかを、公衆衛生の立場から検討していくことが重要となる。

