厚労省のコロナ・インフル同時流行対策 杉並区 柿田医院院長 柿田豊

 厚労省は13日、この冬の第8波を見込んだコロナ・インフル同時流行対策を発表した。発熱外来の受診は、高齢者や小学生以下の子ども、基礎疾患のある人など重症化リスクの高い人らを優先するものだ。それ以外の人が発熱した場合は、自宅で新型コロナウイルス検査キットで判定し、陽性者は自宅療養、陰性者は電話やオンラインでインフルエンザかどうかの診断を医師に受けるように促している。
 だが、この対策だと、小児と高齢者・ハイリスク者以外は、発熱して陰性だったら電話診療やオンライン診療で検査をせずにインフルエンザとしてタミフルなどの処方を受ける例が相当数生じる。
 これまでの何もしないで「緊張感を持って注視する」方針よりは積極性が見える分いくらかマシだがいろいろ問題がありそうだ。
 コロナ抗原定性陰性ならインフル扱いにしても良いとするのはあまりにも短絡的。冬場に熱が出る病気はコロナとインフルだけではない。インフルでもないのにタミフルを処方されるケースも増えるだろうし、それ以外の病気の見落としも懸念される。一度コロナ抗原陰性でも後日陽性になることもよくある。
 従来、オンライン診療は、病状が安定した慢性疾患の診察だけが認可されていたもので、コロナ対策の一環としてなし崩しに要件が緩和されてきているものの、本来急性疾患の診察には不向きな診療手段なのに、一気に発熱性疾患の対応のためのツールとして推奨するのは無謀だ。
 さらに、オンライン診療に対応している医療機関は少ないため、電話での対応も可能とするようだがなおさら危険だと思う。
 これらは素人でも分かるはずで、おそらくこの対策では患者さんの不安は払拭できず、結局発熱外来対応医療機関への相談・受診の集中による混乱がどこまで解消できるかわからない。
 よほど確率の高い場合を除き、タミフルなど抗インフルエンザ薬の処方は確定診断例に限定されるべきで、せめてインフルエンザ抗原定性の自己検査も容認されれば、陰性なら無駄・無益な処方の抑制になるし、陽性であれば普段のかかりつけ医で対応とすれば、発熱外来への負担が軽くなるのではないだろうか。

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