途上国の保健システム強化で新たに4団体とパートナーシップ締結 タケダのグローバルCSRプログラム

 武田薬品は14日、途上国や新興国の人々のための保健システムの強化に向けた長期的な取り組みを展開している「タケダのグローバル CSR プログラム」に、4団体(Ipas、国際 NGO プラン・インターナショナル、Pure Earth、国連人口基金[UNFPA])の新たなパートナーシップを追加したと発表した。
 優れたクリニックや病院においても、人々がアクセスできなければ一貫した適切で質の高いケアを提供することはできない。アクセスしやすい医療システムを構築するには、医療従事者、持続可能なサプライチェーン、適切なリソースの確保などが重要となる。
 武田薬品は、意思決定のプロセスとして毎年2万3000人以上の従業員による投票が重要な役割を担っており、今回の2022年度グローバルCSRプログラムとして、Ipas、国際 NGO プラン・インターナショナル、Pure Earth および国連人口基金を選出した。
 2016年の発足以来、同社のグローバルCSRグログラムでは、19の国際機関や非政府組織に総額197 億円(約1億4070万米ドル)を拠出している。これには、「持続可能な開発目標(SDGs)」の23を超えるターゲットに取り組む世界79カ国で実施される長期的な24のプログラムの支援を含んでいる。
 2022 年度に新たに追加されたパートナーへの支援内容は次のとおり。
• Ipas に9億9900 万円(約 713万米ドル)を拠出し、エチオピア、インドネシア、パキスタンの孤立した地域で暮らす女性と少女を対象に、包括的な性と生殖に関する健康(Sexual and Reproductive Health、SRH)サービスへのアクセスと利便性を改善する4年間のプログラムを支援する。
 同プログラムを通じ、人材、保健システムおよびコミュニティによるサポート体制の強化により、質の高い SRH ケアへのアクセスを促進させ、予期せぬ妊娠、安全ではない中絶による死亡や外傷、その他の教育機会および経済機会の喪失をもたらす可能性を低減させる。

• 国際 NGO プラン・インターナショナルに4億9700 万円(約355万米ドル)を拠出し、ソマリアの取り残された人々、特に女性器切除(Female Genital Mutilation、FGM)の合併症に苦しむ少女と女性の医療サービスへのアクセスを改善する。
 FGMは、母子の死亡率に大きな影響を与える。特に、適切な訓練を受けた女性医療従事者が限られる遠隔地でその影響は顕著である。今後4年間、同プログラムは、巡回診療によるその年齢や性別に適した最低限必要な医療サービスを提供するとともに、巡回診療ガイドラインと FGM 臨床ガイドラインを作成し、保健システムを強化する。

• Pure Earthに10 億円(約714万米ドル)を拠出し、コロンビア、インド、インドネシア、キルギスタン、ペルーの子どもを鉛中毒から守る手助けを支援する。
 現在、世界の子どもの3人に1人の血中に、脳に永久的な損傷を与える量の鉛が混入しているものの、多くの国でそれに効果的に対応するシステムや技術力が十分ではない。この5年間のプログラムでは、各国の医療システムを強化し、子どもの鉛への曝露の要因を特定、監視、治療し、削減するための医療従事者を養成するとともに、親、教師、学童への教育により、こうぢた子どもたちが潜在能力を最大限に発揮する機会をより多く得られることを目指している。

• 国連人口基金(UNFPA)に9億9800 万円(約713万米ル)を拠出し、アゼルバイジャン、エルサルバドル、インドネシア、マダガスカル、ジンバブエにおけるジェンダーに基づく暴力(Gender-Based Violence、GBV)のサバイバーが利用可能なケースマネジメントサポートのレベル、およびその質を高める支援を行う。
 この4年間のプログラムにより、最前線で活動するGBV サバイバーの支援を行っている人々のメンタリングやモニタリング方法能力の習得により、最も社会から取り残された人々を含む、すべての女性と少女を支援する。加えて、教育機関、政府および市民社会と連携して社会サービスシステムを強化する。
 武田薬品は、2022年度のグローバルCSRプログラムの実施にあたり、その一部を世界各地の人道的支援に充当する。そのパートナーとして国際移住機関 (the International Organization for Migration、IOM)への3億円(約214万米ドル)の拠出を決定した。これにより、紛争や危機により避難を余儀なくされた人々のためにIOMのデジタル版個人健康記録(electronic Personal Health Record、e-PHR) の拡充を支援する。
 e-PHRは、コロンビア、エクアドル、エチオピア、ケニア、ウガンダ、イエメンで展開し、国境のみならず保健システム、言語の壁を越えて、個々人の病歴や診断、症状を記録し、またそれらにアクセスすることができる。
 さらに、このデジタルソリューションが8万3000 人以上の受益者に届くことを目指し、人々が通過および到着した国々で、健康状態の記録が利用できるようになるだけでなく、非難を余儀なくされた人々の保健ニーズに関する知識を高め、国内や国境をまたぐ疾患の監視能力とその対応力の強化に繋がる。
 各プログラムは、独自の方法で保健システムの強化を支援しており、各国の国家的な保健ニーズと合致している。途上国における保健システムが直面している最も複雑かつ長期的な課題の一部を即座に解決する方法がないため、こうした4~10年間にわたる長期的な支援を行っている。

◆大薮貴子武田薬品チーフ グローバル コーポレート アフェアーズ&サステナビリティ オフィサーのコメント
 今回、当社のグローバルCSRパートナーとして、Ipas、プラン・インターナショナル、Pure Earth および国連人口基金(UNFPA)の4団体とのパートナーシップを新たに締結することができた。
 当社のプログラムを通じて、システムおよびその基盤となるインフラストラクチャーを構築するという根本的な原因に取り組み、権利を最も剥奪されている人々に直接的な支援を届けられることを大変光栄に思う。
 これらのパートナーシップは、生命を脅かす喫緊の課題を低減し、人々の日常生活や地球に変化をもたらす一助となる。240年以上の歴史を持つ企業として、持続可能なインパクトをもたらすためには時間がかかること、さらには長く活用されるいくつかの革新的なソリューションはパートナーシップを通じて実現されることを認識し、長期的な視点を持って取り組みを進めている。
 我々は、当社の価値観(バリュー)に基づき、世界的に重要な保健医療に関する課題への取り組みを支援しており、その取り組む方法を当社の従業員による投票で決定している。支援を届けたコミュニティが将来に備える力をつけるとともに、その発展の一助になることを期待したい。

◆Ipasの代表兼 CEOの Anu Kumar氏のコメント
 私たちは、孤立した地域で暮らす女性と少女を対象に、質の高い持続可能な性と生殖に関する健康ケアへのアクセスを拡大するために、すべての人々のための健康的で公正な世界に向けたコミットメントを武田薬品と共有し、ともに取り組めることを大変光栄に思っている。
 このパートナーシップは、エチオピア、インドネシア、パキスタンの医療従事者、保健システムおよびコミュニティの能力を強化するものである。

◆池上清子プラン・インターナショナル・ジャパン理事長のコメント
 プラン・インターナショナルと武田薬品との新たな5年間のパートナーシップは、巡回診療ガイドラインとFGM臨床ガイドラインの作成を通じてソマリアの保健システムを強化するだけでなく、ソマリアの女の子と女性が啓発活動やトレーニングを通じて、自身の性や身体に関する意思決定をできるように後押ししたい。

◆Pure Earth CEOのRich Fuller氏のコメント
 Pure Earth は武田薬品のパートナーとして取り組めることを光栄に思う。我々は、協働して未検出および未確認の鉛中毒に罹患している子どもを診断し、特定する能力が5カ国に備わり、治療を開始できるように支援する。
 官民パートナーシップがソリューションをいかに加速することができるかを示す、説得力のある実例である。子どもの鉛中毒危機に関する武田薬品のリーダーシップは、力強いインパクトあるモデルとなる。

◆Natalia Kanem国連人口基金事務局長(医師)のコメント
 ジェンダーに基づく暴力は、世界で最も蔓延している人権侵害の 1 つであり、女性の3人に1人が一生のうちに身体的または性的虐待を受けていると推測される。社会的、経済的または国家的な境界はない。
 武田薬品からの支援により、UNFPAは女性と少女に対する暴力のパンデミックに取り組む活動を拡大し、ジェンダーに基づく暴力の発生率が最も高い国々において専門性の高い保護や対応のサービスを提供する。
 我々は、この世界的な蔓延を完全に終わらせるために共に活動する武田薬品のパートナーシップに感謝している。

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