地域全体のスマート・ホスピタル構想実現へGEヘルスケアと清水建設が協業開始

患者に対する新しい価値の創造目指したデジタル化を推進

 GEヘルスケアと清水建設は24日、病院運営と施設運営の両面からDXを追求したスマート・ホスピタルの構築に向けてた協業に合意したと発表した。
 その第一弾として、GE ヘルスケアと誠光会淡海医療センター(滋賀県草津市)が協働で国内版の導入を行った日本初の「コマンドセンター」と、清水建設の建物 OS「DX‐Core」のデータ連携を図り、「医療サービスの質向上」「医療従事者の業務効率化」「患者の利便性向上」に向けたサービスの提供に取り組む。
 日本では現在、全就労人口の約13%が医療や介護に従事している。超高齢化と労働人口の減少が進む中で既存の医療提供体制を維持しようとすれば、その割合は約20%に増加すると試算されている。
 その一方で、医療・介護従事者の人材確保は困難で、十分な医療・介護サービスの提供が難しくなることが懸念されている。
 こうした中、超高齢化が進む日本では、適正な医療を効率的に提供する体制を整えることを目的とする『地域医療構想』の実現に向けた動きが活発化している。
 地域医療構想とは、地域に存在するそれぞれの病院が担当する医療機能を選択し、この機能を持ち寄って地域全体の医療を完結させることを目指す取り組みだ。
 誠光会、GEヘルスケア、清水建設の三者は、この取り組みを実現するための病院運営と施設運営のデータ連携によるDX挑戦を決定した。
 淡海医療センターで展開するデータ連携のプラットフォームは、データドリブンの病院運営を支援するコマンドセンターだ。昨年4月から稼働しているコマンドセンターでは、医療情報システムから収集する電子カルテなどのデータをリアルタイムに分析し、病床の稼働状況やスタッフの業務を画面上で見える化して病床の割り当てやスタッフ配置などの迅速な意思決定を支援している。
 今回の協業により、GEヘルスケアがこれまで医療機関に提供してきたデータ分析・運営改善支援サービス「Brilliant Hospital」、関連するコンサルティング実務を提供することで院内の改善サポートを手掛け、清水建設は、「DX-Core」を通じて医療施設内の設備の情報を集約するためのプラットフォームを提供。両システムのデータ連携により、医療施設全体のデジタル化による予見性の高い分析能力の強化、運営全体の効率化・最適化を図り、最終的には医療の生産性向上およびアウトカムに寄与するスマート・ホスピタルの構築を目指す。
 将来的には新築・改築案件を対象に、“トータルプロデュースサービス”として、設計から施工〜医療システム〜機器最適配置、運用モデルまでデジタルサービスを基軸とした共同提案を目指す。
 その中で、協業のフェーズⅠは、事前準備であり、淡海医療センターの既設設備機器を集中監視するプラットフォームを DX‐Core により構築し、コマンドセンターとのデータ連携を図るとともに、病院運営の効率化に向けた課題を抽出する。
 今後のフェーズⅡでは、両システムのデータ連携実証を行う。
 例えば、DX‐Core が監視カメラ画像から院内の混雑具合を判断しコマンドセンターがスタッフの配置変更を提案、或いはコマンドセンターが新規入院患者の受入病棟を割り当てれば、DX-Coreが制御する案内ロボットが患者を当該病棟まで案内するといった実証だ。
 最終的にはフェーズⅢとして、フェーズⅡでの実証成果を踏まえ、地域医療連携推進法人湖南メディカル・コンソーシアム(滋賀県草津市)に加盟する31法人99施設を対象に、コマンドセンターとDXCoreを連携させたシステムの展開を目指す。

◆北野博也誠光会理事長のコメント
 現在、誠光会では医療の質向上や医療従事者の働き方改革を目的とした様々な取り組みに着手している。
 これらの取り組みにデジタル化は必要不可欠となっているが、我々は、単に業務の効率化を図るだけでなく、患者さんに対する新しい価値を創造するためにデジタル化を推し進めていきたいと考えている。
 すなわち、これまで蓄積されてきた膨大な医療関連データの活用や医療従事者と患者さんとの双方向コミュニケーションの強化など、所謂スマート・ホスピタルを目指した取り組みを加速させていく。
 今回、清水建設と GE ヘルスケアという強力なサポーターを得たことで、私たちの将来構想の実現可能性が大きく高まったと考えている

◆多田荘一郎GEヘルスケア代表取締役社長兼CEO のコメント
 新型コロナ感染症の蔓延も含め刻一刻と患者さんの症状が変わるという状況の中で、これまで以上にリアルタイムの状況把握と適切な需要予測に基づいたキャパシティ管理(医療資源の分配)が求められている。
 長年にわたる誠光会との共創を通じて、昨年4月には淡海医療センターでコマンドセンターの稼働を開始した。人の稼働効率を含む医療資源の分配において目覚ましい成果が出ている実績からも、稼働を単独施設に限定せずに、地域全体に拡大し運営していくことで、地域における医療連携に貢献できると確信している。
 清水建設とも新たに連携し、誠光会とこれまで築いてきた共創を深化拡大させ、課題解決に取り組んでいきたい。

◆井上和幸清水建設代表取締役社長のコメント
 リアルなものづくりの知恵と先端デジタル技術により、ものづくりをデジタルで行い、リアルな空間とデジタルな空間・サービスを提供する建設会社を「デジタルゼネコン」と定義し、当社が目指すゼネコン像としている。
 DX‐Core はデジタルな空間・サービスを提供する技術の代表格で、すでにオフィスビルを中心に採用が進んでおり、顧客に喜ばれている。誠光会、GE ヘルスケアとの協業により培った知見を展開させていただくことで、医療施設への DX‐Core の採用が進み、医療サービスの質向上や業務効率化へに寄与を祈念している。

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