ラツーダ特許切れを底に2024年度からの増収・増益基調予測を改めて強調 大日本住友製薬野村社長

野村氏

 大日本住友製薬は7日、Webでの「社長記者会見・個別質問会」を開催した。医薬通信社の個別取材に応じた野村博社長は、大型主力製品ラツーダの特許が切れる2023年度を底に、2024年度以降は、米国でのレルゴリクス(前立腺がん、子宮筋腫)ジェムテサ(過活動膀胱)、マイフェンブリー(子宮筋腫治療剤)の伸長を中心に増収・増益基調が予測されることを改めて強調した。
 野村氏は、「2033年のありたい姿として目指している‟グローバル・スペシャライズド・プレーヤー”に向けて、成長の布石は確実に打ってある」と断言し、「我々は、将来をしっかりと見据えて成すべきことを実行し、私自身も率先して行動して行きたい」と抱負を述べた。
 野村氏は、2024年度以降の増収・増益基調予測の要因として、レルゴリクス、ジェムテサ、マイフェンブリーの3製品の伸長を挙げる。加えて、大塚製薬と共同開発および共同販売の契約を締結した自社製品「ウロタロント」(統合失調症)の上市や効能拡大、2024年度上市予定の再生・細胞医薬(パーキンソン病)などを指摘する。
 2021年には、米国では小児先天性無胸腺症向け「リサイミック」の承認を取得し、日本では2型糖尿病治療剤「ツイミーグ」を発売した。
 「2024年は、ラツーダの後を埋めるまでには行かないが、2025年には米国で3製品のブランドを浸透させたい。数年先に楽しみな好材料がたくさんある」と明言する野村氏。
 その上で、「全社で‟CHANTO”こだわりを持って個々の仕事を仕上げていくことで、我々の計画は実現できる」と言い切った。
 大日本住友製薬では、2023年2月のラツーダの特許切れを見据えて、自社製品のナパブカシン(抗がん剤)開発を推進してきたが成功しなかった。
 そこで、ナパブカシンに代わる大型製品として、レルゴリクス、ジェムテサ、マイフェンブリーの3製品をロイバント社と戦略的提携によって上市した経緯がある。
 自社製品のナパブカシンとライセンス製品とでは利益面での懸念があるが、野村社長は、「原薬を自ら作っているので、一定の利益を稼げる」と明言。さらに、「将来的に3製品は、売上高・利益ともにラツーダを補って余りある大型商品に成長する」と断言する。
 2021年度は、在庫調整による出荷減や価格の下振れにより減収が見込まれるラツーダについても、「2022年度は、その心配がない。ラツーダの特許の最終年度となるので、利益最大化を図るための様々な施策を展開したい」と話す。
 野村氏は、2月に稼働した再生・細胞医薬製造施設(通称「FORCE」)にも言及し、「iPS細胞を大量に生産して販売するのではなく、アカデミアやベンチャーが開発している付加価値の高いiPS細胞の事業化を目的としたものである」と説明した。
 大日本住友製薬は、4月に社名を「住友ファーマ」に変更する。来年半ばには、東京本社を「東京日本橋タワー」に移転する。
 社名変更については「2005年の大日本製薬と住友製薬との合併以来、グローバル化やがん領域への進出など、会社の事業内容も変容してきている」と指摘。
 その上で、「企業ブランドを世界共通ブランドとして明確にすることで、全社員に一体感と住友ブランドに対するプライドをもって仕事をして貰えると信じている。これから来るラツーダの特許切れも一丸となって乗り切りたい」と訴求した。

小田切氏


 一方、小田切斉代表取締役専務執行役員(営業本部担当、営業本部長兼CNS営業本部長、Head of Japan Business Unit)は、国内事業について、「ツイミーグ(2型糖尿病治療薬)、ラツーダ、ロナセンテープ(統合失調症)の新製品の拡大が我々にとって最も大きな課題である」と力説した。
 加えて、「CNSは、大塚製薬との提携や将来を見据えたR&Dなどの強化を図っている部門なので、営業においてもしっかりとした基盤作りに注力したい」との考えを強調した。
 新製品では、ラツーダは、「総じて高い評価を得ている」と明言し、「双極性障害で順調に伸びている。統合失調症の急性期については、これからディテールをしっかりと展開していきたい」と述べた。
 既存の経口血糖降下剤とは異なる構造と2つの血糖降下作用をもつ、新しいクラスの経口血糖降下剤のツイミーグは、「大学病院や大規模病院、糖尿病専門クリニックなどの専門医にしっかりと浸透させた上で、様々な普及活動を図る」
 ロナセンテープは、「錠剤と比べて血中濃度が安定する利点について、さらなるリテール活動を展開していく」
 本年2月15日付けで武田薬品に販売を移管するリプレガル(ファブリー病)にも言及し、「15年間地道に疾患の啓発活動を展開して患者さんに薬剤を届けてきた。それが功を奏して年間売上高約130億円の薬剤に成長した」と説明。
 その上で、「リプレガルの移管は国内事業にとって大きなマイナスであるが、その分もツイミーグ、ラツーダ、ロナセンテープの3新製品を中心に補いたい」と語った。

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