オミクロン株拡大は不可避であるが適度に恐れての拡大スピード遅延にも意義 新宿区 さこむら内科院長 迫村泰成

 オミクロン株によると思われる感染者増加が止まらない。しかも想像を超える速さで。一方で、重症者や死亡は既存株に比べて、かなり少ないことも報告されている。
 これって、毎年冬に来る季節性インフルエンザの流行と同じじゃん。だったら、行動制限なんてしないで、マスクと手洗いくらいで日常生活を送ればいいんじゃない。そういう意見も、もちろんあるでしょう。
 総人口の8割の国民が重症化を抑えるワクチン接種を終えた。半年で効果が半減するかもしれないけど、それでも皆が免疫力ゼロだった昨年夏ごろに比べればずいぶん安心度は増したといえる。
 ただ、まだ気がかりなのは(医療者はいやがうえにも慎重になる職種ですが)、オミクロン株に関し、小児への流行状況と、ワクチン未接種のハイリスク高齢者が罹患したときの重症化率が現時点で不明であることです。
 11才以下の小児へのコロナワクチン接種は非適応ですし、この年代のコロナ自然感染の抗体保有率などの報告もさまざまなようです(https://www.forth.go.jp/topics/20210915_00001.html)。
 小児は、軽症や無症状が多く、無症状の感染者(不顕性感染)からも2次感染が生じることから、「あらゆる年齢層の子供がSARS-CoV-2に感染し、他者にウイルスを拡散する可能性があることは確認」されているとのことです。
 季節性インフルエンザは、毎年保育園や学校などから流行し、拡大していきます。今回のオミクロン株が季節性インフルエンザと同様の動態をとるのであれば、家庭内感染を通じて、ワクチンの行き届いていない高齢者などに到達する可能性は依然としてあります。
 私の外来にも、何度お勧めしてもワクチン接種を希望しない高齢ハイリスクの方がおられます。ウィルスは入り込みやすい人間を土台(宿主)として次々と飛び石のように拡がっていきます。オミクロン株の感染力の高さは、残された抵抗力の弱い人間を落穂拾いのように見逃さず狙い撃ちするかもしれません。
 また、インフルエンザであれば発熱後5日間の自宅待機ですみますが、新型コロナの場合は陽性者は10日間、濃厚接触者に至っては14日間の自宅待機が命じられます。
 医療施設、介護施設を始め、学校、会社、個人商店などすべての場で社会が止まってしまう可能性があります。沖縄では実際に病院機能が感染のために止まった事例が報道されていました。オミクロン株の詳細がわかれば、今後待機基準の見直しも必要かもしれません。
 それでも、年末年始2週間の感染者増加のスピードは恐るべきものがあります。外来で抗原検査あるいはPCR検査を行い早期診断し、きちんと自宅で休んでいただく。もちろん、自宅療養中の健康観察はかかりつけ医が責任もって行う。そうすることで、感染スピードを鈍化させ、第5波のような病床ひっ迫を抑え、社会防衛につながると信じています。また、これが杞憂に終わることを願っています。

写真はだれかが医院の駐車場に作ってくれた雪だるま

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