コロナ禍きっかけに半数が「口の健康見直したい」  オーラルケアと健康調査

 P&Gジャパン合同会社が11/8「いい歯の日」に先駆けて実施した‟オーラルケアと健康について”の調査結果において、半数以上が「コロナ禍きっかけに口の健康見直したい」 と回答していることが判った。
 20~60代の男女800人にオーラルケアと健康について調査したもので、マスク生活をきっかけに大きく変化するオーラルケア事情が判明した。同調査では、「口の健康を見直したい」と考えてオーラルケア意識が高まっている一方で、‟全身の健康と深く関連する口腔環境、健康を意識してオーラルケアをしている人”はたったの1割と低かった。
今回の調査概要及び調査結果次の通り。

【調査概要】
・実施時期:2021年10月14日~15日 
・調査手法:インターネット調査  
・調査対象:全国の20〜60代の男女800人+電動歯ブラシユーザー200人

【調査結果】

コロナ禍で高まるオーラルケア意識

半数が「お口の健康を見直したい」、4人に1人は「オーラルケア意識が高まった」

 20〜60代の男女800人と電動歯ブラシユーザー200人を対象に、口の健康に関する調査を行った。まず、800人を対象に新型コロナウイルスの流行をきっかけとした口の健康の見直しについて意向を聞いた。その結果、44.0%が「見直したい」または「まあ見直したい」と答え、年代別では20代が最も高く53.8%が見直したいと答えた。[図1]。
 また、オーラルケアに対する意識の変化を聞くと、24.6%と4人に1人は新型コロナウイルス感染症の流行前と比べ「意識が高まった」と答えている[図2]。

マスク生活で自身の口臭が気になる

 オーラルケア意識が高まったと答えた197人にその理由を聞くと、「マスク生活で自身の口臭が気になるから」(54.3%)、「手洗いやうがいをよくするようになったから」(41.1%)が多く、3割は「自身の健康を意識するようになったから」(29.4%)と答えた。また、「口腔内のウイルス増殖が気になるから」と答えた人も14.2%いた[図3]。

コロナ禍でオーラルケア費用を「追加」した人が2割以上 オーラルケア市場も拡大傾向に

 コロナ禍をきっかけにオーラルケアに追加した費用を聞くと、全体の22.0%が「追加で費用をかけた」と答えた。費用を追加した176人の金額を見ると、「600円未満」が43.1%と多いものの、「1000円以上」かけている人も34.6%いた[図4]。

 コロナ禍でオーラルケア意識が高まり、自宅でできるセルフケアにお金をかけるようになったと考えられる。

カラダの健康を考えてオーラルケアに取り組む人は、まだ1割

 口の菌のカラダへの健康リスクは7割近くが理解しているもののカラダの健康を意識してオーラルケアに取り組んでいる人は1割しかいなかった。
 次に、カラダの健康とオーラルケアの関係について聞いた。口の中の菌が体内に入ると全身の健康リスクとなるが、このメカニズムを知っているかと聞くと、56.1%が「なんとなく知っている」と答えた。「詳しく知っている」(9.9%)と合わせると、全体の7割近く(66.0%)が、オーラルケアとカラダの健康について認知している[図5]。
 だが、日頃のオーラルケア意識を聞くと、「全身の健康を意識して、オーラルケアを行っている」と答えたのは12.9%と少なくなっている[図6①]。この結果を、自分は健康意識が高いと答えた人(368人、全体の46.0%)と高くないと答えた人(432人、全体の54.0%)で見ると、健康意識が高いと自覚している人でも24.2%と4人に1人で[図6②]、健康意識が低いと自覚する人ではわずか3.2%しかいなかった[図6③] 。

< コラム1 >日本のオーラルケア習慣の課題は自覚されている

 日本より海外の方がオーラルケアが進んでいると思うかと聞くと、51.9%は「海外の方が進んでいる」、48.1%は「海外の方が進んでいるとは思わない」と答え、両者拮抗する結果となった。
 歯科医院に通う頻度について1年に2回定期的に通う割合は、アメリカ(56%)やドイツ(50%)が5割を超えるのに対し、日本は1割強(14%)にとどまる。
 一方、何か問題が起こったときにだけ行く割合が日本は約4割(44%)と他国に比べて圧倒的に高く、いまの日本の習慣では、予防のための正しいオーラルケア習慣を取り入れる機会が比較的得づらい状況といえる。

*P&G「オーラルケアの意識」に関するオンライン調査(2019年)(調査対象:アメリカ・イギリス・日本・ドイツ・フランス・スペインにおける12歳未満の子供を持つ男女2020人)

< コラム2 >いつも以上に健康を気遣う妊婦さんもオーラルケアへの意識は希薄

 妊娠中はつわりで歯磨きがしづらくなったり、女性ホルモンの影響で歯周病菌が増殖しやすくなる。そのため、妊娠中の健康維持には、普段以上にオーラルケアが重要となっている。
 だが、妊婦の健康維持対策の一つとしてオーラルケアが重要なことを知っていたかと聞くと、「知っていた」と答えたのは26.3%で、出産経験者でも34.2%のみであった。妊婦の歯周病は、早産や低体重児出産のリスクを高めることも報告されている。妊娠中は、いつも以上に歯の健康管理を心掛けよう。

100年時代をサポートするヘルステックとオーラルケア

 ヘルステック(HealthTech)とは、Health(健康)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた造語で、AIやIoT、ウエアラブルデバイス、クラウドなどさまざまなデジタル技術を組み合わせ、医療や創薬、介護、予防、QOLといった領域の課題を解決する企業や技術の総称だ。
 人生100年時代を迎える日本では、医療費の高騰や医療格差の是正、QOLや健康寿命の向上など、医療と健康を担うヘルステックアイテムが注目されている。

オーラルケアで使用するアイテム 健康意識が高い人ほど「電動歯ブラシ」使用率が高い

 自身の健康意識が高いと自覚する人と、そうでない人に対してそれぞれ日頃のオーラルケアで使用しているアイテムを聞いた。「歯ブラシ」(健康意識高い84.0%/低い81.5%)や「歯磨き粉」(健康意識高い64.9%/低い57.2%)は健康意識を問わず使用されているが、ヘルステックである「電動歯ブラシ」の使用率は、健康意識が高いと自覚する人では20.9%となり、健康意識が低いと自覚する人(10.9%)と比べ10ポイント高くなっている[図7]。

人生100年時代、注目のヘルステックアイテム 年代が高い人ほど利用

 次に、スマホのアプリや血圧計など身近なヘルステックアイテムを挙げ、所有状況を聞くと、58.5%が何らかのヘルステックアイテムを所有し、60代が77.5%と最も高くなっている[図8①]。
 40代、50代、60代と年代が高い人ほど最新のヘルステックを活用し、自身の健康管理に生かしている様子がうかがえる。アイテム別では「血圧計」(23.8%)を所有する人が多いようだ[図8②]。

過半数がヘルステックアイテムに「興味」があり、その力で自身の「健康を向上」させたいと望んでいる

 ヘルステックアイテムへの興味を聞くと、54.9%が「興味がある」と答え、興味があるアイテムは、「体組成計・スマート体重計」(20.3%)、「体調管理機能付きスマートウォッチ」(16.6%)、「血圧計」(15.9%)、「電動歯ブラシ」(14.4%)の順となった[図9]。
 また、自身の健康管理について意見を聞くと、51.8%が「ヘルステックの力で自身の健康を向上させたい」[図10]、51.0%が「健康のためであればお金をかけてもいい」[図11]と答えており、いずれも健康意識が高い層、電動歯ブラシ使用者でスコアが高くなっている。
 人生100年時代、健康長寿をサポートするヘルステックへの注目が高まる中、成長するオーラルケア市場でも、電動歯ブラシなどのヘルステックアイテムが浸透し始めている。

島津貴咲歯科医師が語る「全身の健康を考えた正しいオーラルケア」

島津氏

 お口の健康は、全身の健康と大きく関わっており、歯周病菌が心臓血管疾患、脳卒中、肝疾患、糖尿病の悪化、早産などの原因になっている。
 今回の調査では、コロナ禍をきっかけとした自身の健康やオーラルケアへの関心の高まりに加え、実際に費用を増やして行動している人がいることまで明らかになった。せっかくの良い習慣をステイホーム中だけでなく、これからも続けて頂きたい。
 感染予防の観点からも、お口の中が不潔だとインフルエンザウイルスに感染するリスクが高まるという研究結果が報告されている。調査では、「全身の健康を意識して、オーラルケアを行っている」と答えたのは12.9%しかいなかった(図6)。
 だが、ウイルスの感染は主に喉や鼻の粘膜から起こり、特に歯周病菌は強力なタンパク分解酵素を使って細胞膜の一部を破壊するため、ウイルスが細胞内に入るのを手助けしてしまう。唾液の中に混ざった細菌が誤って気道から気管支、肺の方に入ると、気管支炎、肺炎(誤嚥性肺炎)の原因にもなる。
 さらに、歯周病原菌や歯肉の炎症によって作られた炎症性物質が、歯肉の毛細血管を通じて全身に搬送されると、心臓血管疾患、脳卒中(脳梗塞)、肝疾患、糖尿病の悪化、早産・低体重児出産などを引き起こす危険性を高めることが分かってきた。最近では、歯周病と肥満との関連性についても研究が進められている。

ホームケア第一だが、生涯自分の歯で楽しく過ごすには歯科定期健診の受診を

 家庭で行うオーラルケアでは、お口の中の細菌は特に寝ている間に増えやすく、むし歯にもなりやすいため、寝る前に念入りに歯を磨くことが大切である。唾液には自浄作用や再石灰化効果があるがが、寝ている間は唾液の分泌量が減るためである。
 1日3回適当に磨くよりも、1日1回念入りに磨く方が予防効果が高いと考えられる。また、お口の乾燥もむし歯や歯肉炎の原因となるため、口をぽかんと空けて寝ていると、それらのリスクを高めてしまう。

長いマスク生活による呼吸数の増加も口臭原因に

 加えて、長く続くマスク生活の影響で口呼吸が増えると、口臭の原因にもなる。マスクをしていても常にお口を閉じて、鼻呼吸を心掛けよう。歯磨きやフロスの際に歯肉から出血があった場合、そこは磨き残しやすい箇所だと思ってほしい。自分が磨き残しやすいところを意識して、鏡で歯肉の状態をチェックしながら磨くのが、正しいオーラルケアである。
 人生100年時代、高齢者の楽しみとなる「食べる」「話す」「笑う」にはお口の健康が欠かせない。だが、むし歯予防ケアの先進国であるスウェーデンと日本での大きな違いは歯科定期検診の受診率である。
 スウェーデンは80%以上、日本は10%未満といわれている(日本臨床歯周病学会調べ)。自宅で行うセルフケアが第一であるが、それを定期的なプロケアでカバーすることができる。歯間や歯肉の際、歯周ポケット内にあるプラークは、日頃の歯磨きだけではなかなか落としきれない。放置されたプラークがお口の疾患の原因になるので、プロケアにより自分では落としきれない部位をしっかりキレイにしてもらうことが重要である。
 また、自分の歯並びや磨く癖を診てもらうことで、自分に合った歯ブラシの選び方や、磨き方、フロスなど補助器具の使い方を学び、セルフケアの質を高めてほしい。受診頻度は、お口の状態により変わってくるので歯科医師・歯科衛生士に相談してほしいが、お口に疾患がない場合でも3ヵ月から6ヵ月に一度の歯科受診を推奨したい。

電動歯ブラシも正しい使い方が重要 50歳代までに使い方の習得を

 今回の調査では、電動歯ブラシを使う人の方が使わない人よりも「ヘルステックで自身の健康を向上させたい」「健康のためならお金をかけてもいい」など健康意識のスコアが高めであった(図10、図11)。
 ただし、電動歯ブラシも正しく使うことが重要である。電動歯ブラシはもともと、手の不自由な人のために開発されたため、手の不自由な人や、その他障がいをお持ちの人、手の動きが鈍くなっている高齢者には特に向いていると思われる。
 とはいえ、高齢になってからいきなり使い方を習得しようとしても、なかなか難しい。そのため、50歳代までに電動歯ブラシの使い方の習得が望ましいといわれている。また、電動歯ブラシはプラークの除去効率が良いため、勉強や仕事、子育てなど忙しい世代にとって、時短でしっかり磨けるうれしいアイテムだと思われる。あくまでも正しく歯面に当てる必要があるため、ぜひ一度、歯科医院で磨き残しチェックと、正しい電動歯ブラシの使い方を相談してみてほしい。

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