機能性ペプチドや治療ワクチン開発でアンメットメディカルニーズに対応  ファンペップ

三好氏

 ファンペップは19日、「次世代医薬品がもたらす未来」をテーマにメディア説明会を開催し、三好稔美代表取締役社長が、独自のペプチド技術で開発を進めている機能性ペプチドの「アンメットメディカルニーズやコストパフォーマンスに対する有用性」を強調した。
 同社は、大阪大学およびアンジェスと提携して新型コロナDNAワクチンの共同開発を推進しているが、「変異株への対応をペプチドを通して協力している」ことも明らかにした。
 続いて、中神啓徳氏(大阪大学大学院医学系研究科健康発達医学寄附講座教授)が、「抗体誘導ペプチドを用いた治療ワクチンの開発とポストコロナ時代の出口戦略」をテーマに講演。
 大阪大学とファンペップが進めている治療ワクチンの共同研究の成果として、「疾患の要因となる生体内タンパク質を標的とするコンジュゲートワクチン(WO2017/164409)」、「S100A9を標的とする免疫原性組成物(WO2018/155457)」を紹介した。
 ファンペップは、2013年10月11日の創設以来、大阪大学大学院医学系研究科の研究成果である機能性ペプチドを用いた医薬品の研究開発を推進しており、昨年12月25日、東京証券取引所マザーズに上場した。
 ファンペップの機能性ペプチドの研究は、大阪大学が新規血管新生因子の探索研究で創製した抗菌ペプチドAG30を基盤とするもの。パイプラインとして、機能性ペプチド「SR-0379」(皮膚潰瘍治療薬、P3試験準備中、日本)、機能性ペプチド「AJP001」(抗体誘導ペプチド創薬プラットフォーム技術STEP UP」)などがある。
 機能性ペプチド「AJP001」は、既存の生物由来「キャリア」が課題とする「反複投与時に効果が減弱する可能性」、「製造上の品質確保の難易度が高い」、「期待しない免疫反応を引き起こす懸念」を全て解決した優れものだ。
 ファンペップでは、この6年間に、代替可能な多数の抗体医薬品が存在する医薬品候補の抗体誘導ペプチドを3品目創出している。その一つのIL-17A抗体誘導ペプチド「FPP003」について三好氏は、「乾癬を適応症に豪州でP1/2試験を実施しており、大日本住友製薬と北米のオプション契約を結んでいる」と説明する。
 また、抗体誘導ペプチドの将来性にも言及し、同ペプチドの特徴として、「高い効能」、「小さい副作用」、「比較的低い薬価」、「長く続く効果」を指摘。
 その上で、「低分子医薬品に不満のある患者層(効能が不十分、副作用がつらい)や、抗体医薬品を使いたいが薬価が高すぎる、軽症で適応外の患者層」、「抗体医薬品に不満のある患者層(薬価が高くて負担、投与の通院が負担)」からのニーズにより、「幅広い患者層への浸透で、新しい市場開拓が期待できる」と意気込む。

中神氏


 一方、中神氏は、まず、世界の新型コロナワクチンの開発状況に触れ、「従来のウイルス不活化ワクチンに加えて、アデノウイルスベクターワクチンやRNAワクチンなどの新しい技術が導入された」と明言。
 加えて、「こうした技術は、これまで高い安全性が求められて実用化までの壁が高かったが、新型コロナが大きな技術変革の切っ掛けになった」と強調した。
 生活習慣病や慢性疾患に対する抗体誘導型ワクチンについても、「1990年から2000年にかけて、アミロイドベータワクチンによるアルツハイマー病治療、アンジオテンシンIIワクチンによる降圧効果の確認などの報告が続いた」と紹介。
 さらに、「大阪大学では、生活習慣病や慢性疾患、がん、網膜症、老化細胞に対して、T細胞(細胞性免疫)を活性化し、B細胞(液性免疫)が抗体を強く誘導して自己免疫力の抗体を産生する新モダリティとしての治療ワクチン開発実績を持っている」と報告した。
 生活習慣病(高血圧・脂質異常症・糖尿病・認知症)の抗体誘導型ワクチンでは、高血圧・脂質異常症等に対する経口薬連日投与を、年に数回の治療ワクチンに変更することで、「高齢化に伴うポリファーマシー(多剤服用)の解決」、「服薬管理・薬剤アドヒアランスの改善」などが期待できる。
 その一方で、「通院回数の減少による在宅での健康管理」や、「免疫の多様性に対応するための個別化医療」が必要となる。
 また、がん・慢性炎症疾患などに対する抗体医薬の維持療法を数回の治療ワクチンに換えれば、「通院間隔の延長による患者のQOL改善」、「医療費の削減」などのメリットが生じるとともに、「在宅での健康管理や、免疫の多様性に対応するための個別化医療」が課題となる。
 中神氏は、抗体誘導型ワクチンの基盤技術確立にも言及し、「生活習慣病・慢性疾患は新型コロナウイルスのような外敵ではなく、内因性分子を標的とするため、免疫寛容を解除する必要がある」と指摘。
 加えて、「細胞性免疫を制御しての自己免疫疾患回避や、抗体誘導して中和することで高親和性の持続抗体産生が求められる」と説明した。
 こうした背景から治療ワクチンの3要素として、「抗原配列設計」、「キャリア(担体)活用」、「アジュバントの適切な選択」を列挙。さらに、ファンペップが有する他社には無い技術として、「AI活用による抗原配列(B細胞エピトープ)の決定」、「ヘルパーT細胞活性化配列(エピトープ)選定に関する独自のペプチドキャリアAJP001を保有」、「アジュバント選定における自然免疫活性化ペプチドの同定」を挙げ、これらの技術を駆使した抗体誘導型ワクチン開発に期待を寄せた。また、「ワクチンで老化細胞除去治療にチャレンジ」する考えも示した。

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