T-CiRA研究成果のiPS細胞由来心筋および膵島の実用化に向けてオリヅルセラピューティクスが始動

 武田薬品は10日、同社と京都大学iPS細胞研究所の共同プログラムT-CiRAの事業展開戦略拡充オンライン記者説明会を開催。T-CiRAの研究成果であるiPS細胞由来の心筋細胞および膵島細胞の実用化目指して、新会社の「オリヅルセラピューティクス(本店:京都市、OZTx)が、6月より始動したと発表した。
 OZTxの出資金は総額60億円超で、従業員は約60名。2026年には、これら2プロジェクトの結果を踏まえての株式上場を予定している。また、T-CiRAの研究成果として得られたALS治療薬候補化合物や、iPS細胞から作製したT細胞によるがん免疫細胞療法(iCART)の基礎技術を武田R&Dに移管し、臨床試験実施へ向けた課題解決を行っていることも明らかにした。

梶井氏


 記者説明会では、梶井靖氏(T-CiRAディスカバリー ヘッド)が、まず、T-CiRAについて、「武田薬品と京都大学iPS細胞研究所(CiRA)を中心とした10年間(2016-25)の産学連携プログラムである」と改めて紹介。その上で、「iPS細胞技術がもたらす研究成果を迅速に実用化することで医療イノベーションの実現を目指している」と訴求した。
 現在、アカデミアと武田を併せて100名を超える研究者が湘南ヘルスイノベーションパークの創薬設備をフル活用して研究を加速している。
 実働10年間に亘るT-CiRAプログラムの責任者は、山中伸弥京都大学教授(CiRA所長兼京都大学iPS細胞研究財団理事長)が務め、武田薬品は年間20億円(総額200億円)の研究資金提供および湘南アイパークにおける人的/施設提供等のサポートを行っている。
 T-CiRAにおける5年間の研究成果として梶井氏は、「運動ニューロンの細胞死を抑制するALS治療薬候補化合物や、iPS細胞から作製したT細胞によるがん免疫細胞療法(iCART)」を挙げ、「これらの成果は、武田R&Dに移管し、既に臨床試験実施へ向けた課題解決を実施している」と述べた。
 加えて、それ以外の臨床応用段階にある成果として、「iPS細胞由来膵島(iPIC)による重症I型糖尿病治療とiPS細胞由来心筋細胞(iCM)による重症心不全治療」を挙げた。
 さらに、「迅速かつ最善の形で臨床現場に届けるには、湘南ヘルスイノベーションパークのエコシステムの積極的な活用が事業展開戦略上最適と判断し、外部資金も活用して新会社のOZTxを設立した」と明かした。
 こうしたT-CiRAの研究成果については、基本的にニューロサイエンス、消化器、遺伝性希少疾患は武田薬品、重症心不全、I型糖尿病はOZTxで実用化を目指すが、梶尾氏は「今後、研究成果が臨床応用段階になればOZTxや他の製薬企業も含めて実用化する上最適なパートナーに受け渡す」考えを強調した。
 これまでのT-CiRAプログラムの進捗状況については「5年目で10プロジェクトのうちの半分で成果を出しており、予定通り進んでいる」と評価した。
 一方、新会社のOZTxは、iPS細胞由来の再生医療等製品の開発事業とiPS細胞技術の利活用事業に特化した研究開発型企業として、湘南アイパークで本年6月1日より業務を開始している。
 T-CiRAプログラムにおける‟iPS細胞由来心筋細胞”と‟iPS細胞由来膵島細胞”の2つの細胞治療プロジェクトの非臨床試験での有効性が検証されたことに基づき、CiRAと武田薬品はこれら2つのプロジェクトの研究資産を、新たに設立されたOZTxに移管することに合意した。
 OZTxは、約60名の従業員は、それぞれが最先端のiPS細胞に関する技術やノウハウ、あるいは卓越した医薬品研究開発の経験を有しており、2つの大きな事業を柱にスタートする。
 1つ目の柱は、T-CiRAプログラムで非臨床試験での有効性が検証された吉田善紀プロジェクトリーダー(CiRA准教授)が開発したiPS細胞由来心筋細胞および、豊田太郎プロジェクトリーダー(CiRA講師)が開発したiPS細胞由来膵島細胞を臨床応用に導くことだ。
 なお、OZTxは、iPS細胞由来心筋細胞とiPS細胞由来膵島細胞の知財を保有する京都大学と武田薬品工業との間で、両プロジェクトの再生医療等製品の研究開発および提供を行うための特許権譲渡・研究資産使用許諾契約を締結している。
 2つ目の柱は、iPS細胞の分化、培養、精製等に関する卓越した技術の利活用を通じ、創薬研究支援や再生医療研究基盤整備を行いiPS細胞技術の社会実装を強力に支援するもの。
 京都大学と武田薬品から継承した高い科学技術力と事業化のための工業力がOZTxの強みおよび、公益的使命に賛同した投資者による出資での経営がOZTxの特徴である。

野中氏


 記者説明に出席した野中健史OZTx代表取締役社長兼最高経営責任者は、「山中先生のiPS細胞の社会実装を目的に当社が設立された時、心が震えた。全社員が、iPS細胞を何とか実用化しなければいけないと危機感を持って取り組んでいる。創設時の心の震えを忘れずに保ち続け、再生医療を患者さんに届ける目標を達成したい」と抱負を述べた。
 OZTx の始動に際し、T-CiRAプログラムの責任者である山中教授は「アカデミアと武田薬品の研究者がワンチームとなり取り組むT-CiRAプログラムから得られた革新的なiPS細胞研究の成果が、その早期社会実装に向けて、OZTxに受け継がれることを非常に嬉しく思う」と述べている。 T-CiRAからの研究開発の継続性を考慮し、山中教授をOZTxにおける科学技術諮問委員会の議長に招聘している。
 また、梶井氏は「OZTx設立により、T-CiRAの研究成果を具体的な治療手段として難病に苦しむ患者へ届ける道筋が強化された」と強調し、「革新的なiPS細胞研究成果の社会実装へ向けて協力して取り組んで行く」意向を示した。
 

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