低中所得国の薬剤耐性感染症治療における抗菌薬へのアクセスで基本合意書締結 塩野義製薬とGARDP、CHAI

塩野義製薬は13日、GARDP(本部:スイス、ジュネーブ)、CHAI(本部:米国マサチューセッツ州)との間で、低中所得国で治療選択肢が限られる薬剤耐性(antimicrobial resistance: AMR)感染症患者に対して、必要とされるセフィデロコルへのアクセスに関する基本合意書を締結したと発表した。
 セフィデロコルは、「トロイの木馬」と呼ばれる新しいメカニズムにより、多剤耐性菌を含むグラム陰性菌の外膜を通過して抗菌活性を発揮する新規のシデロフォアセファロスポリン抗菌薬である。
 同薬は2019年11月に米国FDA(製品名:FETROJA)および2020年4月に欧州委員会(EC、製品名:FETCROJA)より承認を取得している。
 今回の基本合意書の締結を通じて、低中所得国でのセフィデロコルのアクセスにおける様々な障壁を克服するために、塩野義製薬、GARDPおよびCHAIは、医師向けの臨床ガイダンス作成やトレーニングの実施等、適正使用を確実に実施するための手段を用いて対象となる各国政府やパートナー企業を支援するために、それぞれの専門知識を駆使していく。
 一方、AMRは、細菌、ウイルス、真菌、または寄生虫に対して薬剤が効かなくなり、感染症の治療が困難または不可能になる。
 特に、大腸菌、緑膿菌、肺炎桿菌、アシネトバクター・バウマニなどは、肺炎、尿路感染症、血流感染症、敗血症などのさまざまな重症細菌感染症を引き起こす原因菌であり、多くの場合、現在利用可能なほとんどの抗菌薬に耐性を示す場合がある。
 これら耐性の感染症例の場合、セフィデロコルが有望な治療薬として期待されている。適応症と用法、または警告と注意を含む服用情報は、FDAおよび欧州医薬品審査庁の医薬品表示に記載されている。
 AMRは、世界的に拡大している公衆衛生上の脅威であり、毎年70万人以上死亡している。WHOは、AMRを健康と経済の発展に対する主要なリスクであり、SDGsを達成するうえでの障壁であると特定していっる。
 2021年6月に開催されたG7保健大臣会合では、抗菌薬の持続的な供給や供給網の多様化、イノベーションの確保など、AMRを重要な戦略分野と位置づけた行動に関する宣言が採択された。
 現在、世界中で警戒が叫ばれているCOVID-19とは異なり、AMRは気付かれることなく国や病院で流行しているサイレントパンデミックと言われている。
 薬剤耐性感染症の脅威が増え続ける一方、近年、新たに開発された新規抗菌薬はごく僅かだ。新規治療薬に対する認識と特定地域での承認の欠如、経済的および規制上の課題、または医薬品の供給不足を含むアクセスへの障壁が、あらゆる発展段階の国でのアクセスに大きな影響を与えており、これらの課題は低中所得国において特に重要となっている。

◆GARDP Medical Director Subasree Srinivasan博士のコメント
 薬剤耐性感染症は単なる統計上の話しではない。それは、しばしば人生の暗転、大切なものの棄損や喪失を意味する。薬剤耐性菌は、年齢、場所を問わず、誰にでも感染する可能性があるが、最初に最も強く影響を受けるのは最も脆弱な人々である。
  CHAIと塩野義製薬とのこのコラボレーションは、低中所得国において治療の選択肢が限られている重症細菌感染症で苦しむ人々に対して、抗菌薬を届ける能力を向上させ、適切かつ持続可能な方法でアクセスできるようにすることを目的としている。

◆澤田拓子塩野義製薬 取締役副社長兼ヘルスケア戦略本部長のコメント
 我々は、AMRを含む感染症領域におけるアンメットニーズの解決を図っている。AMRは、現在世界中で70万人の人が亡くなっており、新規の治療薬が必要とされている。
 一方、本領域では、アクセスを考慮するだけでなく、治療薬適正使用のために診断や医学・衛生環境の改善なども並行して進めて行く必要がある。GARDPならびにCHAIは現地における規制や医学環境に関して造詣が深く、今回のコラボレーションはAMRの難しい課題を解決する大きな一歩になると考えている。

◆CHAI Chief Science Officer and Executive Vice President Infectious DiseasesのDavid Ripin博士のコメント
 低中所得国における抗菌薬アクセスに貢献する、GARDPおよび塩野義製薬とのこのコラボレーションに喜びと期待を感じている。このイニシアチブを通じて、毎年数千人の命を救い、革新的な抗生物質の開発に拍車をかける可能性がある。

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