妊娠高血圧腎症の短期発症予測マーカーが国内初の保険適用 ロシュ・ダイアグノスティックス

 ロシュ・ダイアグノスティックスは、ハイリスク妊婦における妊娠高血圧腎症(PE)の短期発症予測の補助マーカーとして、「エクルーシス試薬PlGF」および「エクルーシス試薬sFlt-1」の測定値比が、1日付けで、国内で初めて保険適用されたことを明らかにした。
 PEとは、妊娠高血圧症候群の一つで、妊婦の約5%で発症する。無症候性か、浮腫または過度の体重増加を起こすことがある。発症から増悪までの期間が極めて短く、重症化の場合は、けいれん発作(子癇)や肝臓や腎臓の機能障害、常位胎盤剥離、HELLP症候群など緊急を要する合併症を引き起こし、母子ともに危険な状態になる場合がある。
 治療の基本は、安静と入院で、降圧治療等が行われるケースもあるが、胎児への影響から慎重にならざるを得ず、根治的な治療は妊娠を終わらせること、すなわち分娩となる。
 症状の重さ、発症時の妊娠週数、胎児の状態などを総合的に判断して、早産のリスクとのバランスを取る必要があるが、このタイミングの見極めは困難とされてきた。
 「エクルーシス試薬PlGF」は、血清中の胎盤形成に関わる血管新生因子(胎盤増殖因子)であるplacental growth factor(PlGF)を、「エクルーシス試薬sFlt-1」は、抗血管新生因子である可溶性fms様チロキシンキナーゼ1(sFlt-1)をそれぞれ測定する体外診断用医薬品だ。PEを発症する妊婦は発症前に血清中のsFlt-1のPlGFに対する比率(sFlt-1/PlGF比)の上昇が明らかになっており、sFlt-1/PlGF比はPE発症を予測する指標として注目されている。
 従って、今回のsFlt-1/PlGF比の保険適用は、妊娠高血圧腎症の管理において大きな意義があると考えられる。sFlt-1/PlGF比とその他の臨床状態等の組み合わせにより、PEの1週間以内の非発症と4週間以内の発症を高い確率で予測することができ、ハイリスク妊婦の適切な入院管理が可能となる。母子ともにより安全な分娩につながるよう、この検査の貢献が期待される。
 険収載の内容は、次の通り。
◆測定項目:sFlt-1/PlGF比*sFlt-1、PlGFを測定し比を算出した場合に算定できる
◆保険点数:340点
◆準用保険点数:D008内分泌学的検査 31副甲状腺ホルモン(PTH)2回分
留意事項
 本検査は妊娠18週から36週未満の妊娠高血圧症腎症が疑わる妊婦であって、以下のリスクの因子のうちいずれか1つを有するものに対して実施した場合に、原則として一連の妊娠につき1回に限り算定できる。
 なお、リスク因子を2つ以上有する場合は、原則として当該点数は算定できない。
・収縮期血圧が130mmHg以上または拡張期血圧80mmHg以上
・蛋白尿
・妊娠高血圧腎症を疑う臨床症状または検査所見
・子宮内胎児発育遅延
・子宮内胎児発育遅延を疑う検査所見
 当該妊婦が有したリスク因子を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。また、リスク因子が妊娠高血圧腎症を疑う臨床症状または検査所見であった場合若しくは子宮内胎児発育遅延を疑う検査所見であった場合は、その医学的根拠について診療報酬明細書適用欄に記載すること。
 なお、医学的な必要性から、リスク因子を2つ以上有する妊婦において算定する場合、又は一連の妊娠につき2回以上算定する場合は、その詳細な理由を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。本検査の実施に際し、本区分の「31」副甲状腺ホルモン(PTH)の所定点数2回分を合算した点数を準用して算定する場合は、本区分の「注」に定める規定は適用しない。

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