アストラゼネカは29日、セルメチニブについて、叢状神経線維腫を有する神経線維腫症1型の小児患者を対象とする治療薬として、欧州連合(EU)で条件付き製造販売承認を取得したと発表した。
適応症は、術不能かつ症候性の叢状神経線維腫(plexiform neurofibromas、以下、PN)を有する 3 歳以上の小児の神経線維腫症 1 型(neurofibromatosis type1、NF1)。NF1は、世界中で 3000人に1人が罹患している消耗性の遺伝性疾患である。
NF1 患者の30~50%には、神経鞘に腫瘍が発現し(PN)、外見の変形、運動機能障害、疼痛、気道機
能障害、視覚障害および膀胱/腸の機能障害などの病的状態を引き起こす可能性がある。
欧州委員会による今回の承認は、米国国立がん研究所(NCI)の米国癌治療評価プログラム(CTEP)による SPRINT 試験P2相パート層1の結果に基づくもの。
同試験において、セルメチニブは小児患者さんの手術不能な腫瘍を縮小するとともに、疼痛の軽減および生活の質を改善したことが示された。今回の承認は、EUにおいてPNを有するNF1に対する医薬品として初の承認であり、本年4月の欧州医薬品庁の医薬品評価委員会よる承認勧告に従うものである。
なお、承認条件の一つとして、SPRINT 試験P2相パートのより長期の追跡調査における安全性および有効性のデータを提供する予定である。
SPRINT試験P2相パート層1における客観的奏効率(ORR)は、セルメチニブ単剤を1日2 回経口投与された PNを有するNF1の小児患者において66%(50 例中33 例が確定部分奏効例)であった。
ORRは、完全奏効(PN の消失)または部分奏効(20%以上の腫瘍縮小を評価基準とする)が確定された患者の割合と定義されている。
なお、同試験の結果は The New England Journal of Medicine 誌に掲載された。
セルメチニブは、手術不能かつ症候性のPNを有するNF1小児患者さんに対する治療薬として、米国をはじめとする数か国においてKoselugoの医薬品名で承認されており、その他の国および地域においても承認申請を進めている。
PNを有するNF1成人患者を対象としたセルメチニブの臨床試験、および小児患者における年齢に適した代替の製剤の臨床試験を今年中に開始予定である。ちなみに、セルメチニブは本邦では未承認である。
◆SPRINT 試験の治験責任医師・NCI小児腫瘍科チーフの Brigitte C. Widemann氏(医学博士)のコメント
NF1の小児患者さんにおいては、PNの増殖や発症が著しく、消耗性疾患となることがある。SPRINT試験では、セルメチニブは66%の患者さんにおいてPN を縮小させ、PN関連症状に対して臨床的に意義のある改善を示した。
◆アストラゼネカエグゼクティブバイスプレジデント兼オンコロジービジネスユニット責任者のDave Fredrickson氏のコメント
セルメチニブは、EU で初めてNF1患者さんを対象に承認された医薬品として、PNの治療法を変革する可能性を秘めている。
SPRINT 試験のデータでは、セルメチニブが一部の小児患者さんの腫瘍を縮小するだけでなく、疼痛を軽減し、生活の質も改善することを示した。今回の承認は、重要なマイルストーンとなる。