「遠隔手術指導プログラム」開発で手術中リアルタイムでの指導が実現  ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル カンパニー

Koo Foundation Sun Yat-Sen Cancer Center(台湾)をオンラインでつなぎ、千葉大学病院で行われた手術の様子
 

 ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル カンパニーは16日、オンラインシステムを使った遠隔手術指導プログラムの提供を開始すると発表した。同プログラムは、手術中リアルタイムでの指導を可能とするもので、本年4月27日に千葉大学医学部附属病院呼吸器外科で実施された胸腔鏡手術で、有用性と実効性が実証された。
 同症例は、肺がんの治療においてより患者の負担の少ない単孔式胸腔鏡手術によるもので、執刀経験が豊富な台湾のLiu Chia-Chuan氏(Koo Foundation Sun Yat-Sen Cancer Center、胸部外科シニアメンバー)と千葉大学病院の手術室をオンラインで繋ぎ、Liu氏のテレメンタリング(遠隔指導)のもと、千葉大学病院では初となる単孔式胸腔鏡手術での手術を成功させた。
 同プログラムによる遠隔手術支援は、同社のアジア太平洋地域では今回が初の実施例となる。
 同遠隔指導プログラムは、5Gなど高速回線を用いなくても配信遅延がほとんどない、リアルタイムな通信を可能にする。同プログラムには、映像通信システムと、指導医の紹介を含めた教育ソリューションの有償提供が含まれる。
 同システムの活用により、移動を伴うことなく遠隔地にいる経験豊富な医師による手術への立ち会いや指導が可能となる。医療リソースへの負担を軽減しながら、より難易度の高い手術の成功率の向上に寄与するだけでなく、地域間の医療格差解消も期待でき、医療従事者にも患者にも貢献できるソリューションだ。

 同プログラムの革新性は次の通り。

指導医の手を上からカメラで映し、手術映像に合成するイメージ図
 
  1. ほぼリアルタイムでの遠隔指導が可能(医療従事者側のメリット)  これまでは、インターネットの通信速度が良好な環境下でも、映像伝達にわずかな遅れが生じてしまい、遠隔での高度な手術支援は難しいとされてきた。だが、同プログラムで使用するシステムでは、最先端の動画圧縮技術の採用によって、既存の院内ネットワーク環境下、または同社が提供するwifiシステムの環境下でも、視覚的には影響がない、ほぼリアルタイムでの指導が可能になった。
  2. 高度な手技をもつ医師の立ち合いが、場所を限定せず可能(患者さん側のメリット)  高度な手術において、その手技・手法の経験豊富な医師に遠隔で立ち会ってもらうことができ、患者にとって、場所の制限なく、より高度な手術を受けられる環境の整備が可能になる。

3.汎用性・拡張性がある

手のAR映像(右)を共有している手術画面に重ねて表示するイメージ図

 同プログラムは、あらゆる分野での手術に適応可能である。日本国内のみならず、国外にも広く展開可能であり、このシステムの提供開始をきっかけに、世界の医療技術の向上スピードの加速にもつながり得ると考えられる。

 ◆プログラムを利用した吉野一郎千葉大学病院呼吸器外科教授のコメント
 我々は患者さんにより良い医療を提供すべく、日々研鑽している。だが、術式は日進月歩である。最新術式の導入においては、既にその分野で経験豊富な先生に直接指導いただくことができれば、手技の導入スピードは格段に上がる。
 今回指導いただいたLiu先生は、大変教育熱心な先生で、指示も明確なので、私たち執刀チームも迷うことなく手技を進めることができた。リアルタイムで配信遅延のないこのシステムを使えば、患者さんに提供できる医療レベルは確実に上がり、さらには日本の医療の発展に繋がると考える。

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