新型コロナ重症肺炎症の細胞製剤治療薬 P2試験開始  ロート製薬

 ロート製薬は15日、新型コロナ感染症による重症肺炎症患者を対象とする他家間葉系幹細胞を用いた再生医療等製品(ADR-001)の企業治験について、P2相試験を開始したと発表した。昨年8 月から開始しているCOVID-19重症肺炎症患者を対象とするP1相試験において一定の安全性が確認されたため、次の段階となるP2相試験を開始したもの。
 新型コロナ感染症に関するこれまでの報告では、およそ2割が重症化する。この重症化には、感染者の免疫細胞がウイルスと戦うために作るサイトカインが制御不能となって放出され続ける「サイトカインストーム」と呼ばれる現象が関わっていると言われており、新型コロナウイルスそのものの排除のみならず、「サイトカインストーム」に対する治療が必要と考えられている。
 重症化した新型コロナ感染症に対して、間葉系幹細胞を用いた治療が世界中で試されており、効果があると推測できる報告が複数されている。
 間葉系幹細胞は、複数のメカニズムによる抗炎症効果があると言われており、国内で承認された 新型コロナ感染症治療薬が奏功しない患者に効果が期待されるため、同社では、間葉系幹細胞を用いた治療法の国内での確立が新型コロナ感染症及び今後の感染症対策に有用であると考え研究を進めている。
 ロート製薬が開発を進めている、「ADR-001」は他家脂肪組織由来幹細胞を構成細胞とする細胞製剤である。動物由来のウイルス感染のリスクを考え動物由来原料を含有せず、脂肪組織由来幹細胞の能力を引き出す独自の無血清培地で脂肪組織に含まれる幹細胞を培養している。
 脂肪組織は組織中に多くの間葉系幹細胞を含み、採取時の侵襲性が比較的低く、手術時など余剰組織となるケースもあるので比較的入手が容易で、他家脂肪細胞による移植のため、必要な患者に迅速に提供できるメリットがある。
 同社では、先行して進めている、肝硬変患者を対象とする治験に続き、COVID-19 重症肺炎患者での安全性を確認する「ADR-001 のP1試験」を進めていた。
 今回、P1相試験において一定の安全性は確認されたため、主要評価項目を有効性としたP2相試験を計画した。同試験では、ADR-001投与群とプラセボ群を設定し、2群間の比較試験を予定している。

 ◆SARS-CoV-2感染に起因する重症肺炎症患者を対象とした ADR-001のP2相臨床試験の概要は、次の通り。
・対象疾患:SARS-CoV-2 感染に起因する重症肺炎
・試験デザイン:ランダム化プラセボ対照二重盲検群間比較試験
・主要評価項目:有効性
・投与方法:静脈内点滴投与
・予定症例数:20 例
・治験実施予定期間:2021年6月~2022年9月

タイトルとURLをコピーしました