新型コロナウイルス等感染症領域下水モニタリングで島津製作所と業務提携  塩野義製薬

 塩野義製薬は2日、島津製作所と、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含む感染症領域の下水モニタリングの早期社会実装を目指した業務提携に関する基本合意書を締結したと発表した。同提携により、PCR検査などによる下水モニタリングの早期社会実装を目指して、両社で共同事業体の設立の協議を進めていく。
 SARS-CoV-2による感染が今なお蔓延しており、その感染状況の把握に寄与する技術として、下水疫学を用いたモニタリングが注目されている。SARS-CoV-2感染者の糞便中には、発症の前段階からウイルスが存在する可能性が指摘されており、米国やオランダでは、施設や都市の下水に含まれるSARS-CoV-2を定期的にモニタリングすることで、流行状況の早期検知や収束判断などを行っている。
 なお、現在のところ、下水から検出されるSARS-CoV-2について感染性を有する報告はない。
 島津製作所は、グループ会社の島津テクノリサーチを通じて、下水モニタリングとヒト検査の2階建てPCR検査システム「京都モデル」を高齢者施設や教育機関、宿泊施設などの個別施設に向けて提供している。
 「京都モデル」については京都大学、金沢大学、富山県立大学の技術指導を受けて、京都府・京都市の協力による実証試験においてその有効性を確認している。
 塩野義製薬は、北海道大学との共同研究において、高感度ウイルス検出法の開発に成功した。日本においては、米国や欧州の一部の国・地域と比較して、人口当たりのSARS-CoV-2感染者数が少なく、下水中のSARS-CoV-2濃度が低いため、都市の下水からウイルスを検出するためには、感度の高い検出法が必要とされていた。
 現在、この検出法を活用して、大阪府の協力のもと、北海道大学と共同で下水処理場の流入下水を使用した、流行状況のモニタリングを開始している。
 今後、両社はそれぞれの強みを融合し、アカデミアやパートナー企業とも連携し、下水中のウイルスの自動検出、モニタリングデータを基にした感染状況や変異株の発生動向などを早期に検知可能とする下水モニタリングの社会システム構築を目指していく。

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