肺がん患者の根治手術前・後の心理状態調査結果発表  アストラゼネカ

 アストラゼネカは、過去10年以内に肺がんの根治手術を受けたステージⅡ-Ⅲ期の肺がん患者131名を対象に実施したWEBアンケート調査結果を発表した。
 同アンケートは、手術前後に抱く不安や心情を理解するとともに、患者が術後補助化学療法の実施を検討する際に何を重視し、影響を受けるかを把握することを目的としたもの。
 調査結果から、患者の治療選択における情報入手先として医師が80%を占めており、術後補助化学療法実施の意思決定は、患者が医師からの説明をどのように受け止めたかに大きく左右されることが明らかになった。
 また、患者は、根治手術を受けたとしても再発の可能性があることを理解しており、手術前後から術後補助化学療法実施時にいたるいずれの過程においても、再発の可能性に不安を感じていた。
 患者の70%が術後補助化学療法に対して、たとえ再発時期を遅らせるだけになったとしても、「再発を避けるためにやれることはやっておきたい」という考えを持っていることも判明し、再発までの期間の延長が、治癒への期待や個人的な人生のイベント達成、再発後の新たな治療法への期待などにつながっていることが考えられた。
 ◆同アンケート調査の監修をした岡田守人氏(広島大学腫瘍外科教授)のコメント
 根治切除を受けた患者さんが抱える不安や、治療選択時の希望が、調査結果から明らかになった。患者さんの多くは、生存の延長に加えて、再発しない期間(DFS: Disease Free Survival)を重要視していることがわかった。
 患者さんの希望を理解したうえで、医師を中心とした多職種連携チームによる患者サポートが非常に重要である。
 調査概要、調査結果、考察の詳細は、次の通り。
【調査概要】
調査期間:2020年10月9日~11月19日
調査対象:肺がんの根治手術10年以内に受けたステージⅡ-Ⅲ期の患者:合計131名
医師から術後補助化学療法の説明を受けた患者:101名
医師から術後補助化学療法の説明を受けていない患者:30名
調査方法:Webアンケート調査
監修:岡田守人氏(広島大学 腫瘍外科 教授)、里内美弥子氏(兵庫県立がんセンター 呼吸器内科 部長)、田丸弥生氏(肺がん患者会ワンステップしゃちほこ)、長谷川一男氏(NPO法人肺がん患者の会ワンステップ代表)、松本晃一氏(三重肺がん患者の会)
 調査結果の詳細レポートは次のURLより閲覧できる。
https://www.astrazeneca.co.jp/content/dam/az-jp/press-releases/pdf/20210511.pdf

【調査結果の概要】
医師とのコミュニケーションと患者の意思決定について
・根治手術を受けた肺がん患者が、がんと診断された後に治療選択を判断する際の情報入手先は、医師からの説明が80%であった。患者の多くは医師からの説明を頼りに判断をしていた。
・医師からの説明は、手術前後、術後補助療法実施時のいずれにおいても、その時点での病状や治療などの短期的な項目に関する割合が70%以上と高く、生活への影響、再発の可能性といったやや長期的な項目の割合は前述の項目と比べると少し低かった。
 一方、患者は短期的とやや長期的のいずれの項目も詳しく説明を聞きたいと考えていた。

根治手術を受けた肺がん患者さんの手術前後の心理について
・患者は、根治手術を受けた肺がん患者は、肺がんの手術前後、術後補助化学療法実施時のいずれの過程においても、再発の可能性(83.1%, 77.2%, 71.9%)と今後の生活(63.4%, 60.4%, 60%)に不安を感じていた。術後補助化学療法実施時においては、77.3%の患者さんが副作用に対する不安を感じていた。

術後補助化学療法に対する患者の考えについて
・根治手術を受けた肺がん患者は医師から術後の説明として、腫瘍のサイズ、ステージ、リンパ節転移の有無等を受け、術後の病状を認識していた。多くの患者さんはがんを切除できたとしても再発の不安を感じていた(69%)。
・「手術だけで治る可能性があるが、手術だけでは再発する可能性が一定の割合ある。術後補助化学療法によって、再発の割合を下げることができなくても再発の時期を年単位で遅らせる可能性がある」とした場合、「術後補助化学療法を受ける」意見に共感した患者は70%、「術後補助化学療法を受けない」意見に共感した患者は30%であった。
・「術後補助化学療法を受ける」意見に対する共感部分は、“やれることはやっておきたい”が100%、“再発による生活・気持ちへの影響”が94%であった。
 また、“抗がん剤の副作用”は93%が許容していた。
・「術後補助化学療法を受けない」意見に対する共感部分は、“抗がん剤の副作用による生活・気持ちへの影響”が83%、“手術だけで治る可能性/術後補助化学療法によらず再発する可能性”が90%、“抗がん剤は再発してからでよい”が80%であった。

 【考察】
・患者が診断から手術、術後補助化学療法と治療選択の意思決定をサポートするために、医師からの説明に加え、適正な情報へのアクセスをサポートすることが重要と考えられた。
・患者さんは治療の経過を通じて、再発への不安など様々な不安を感じており、患者のサポートには医師を中心とした多職種連携チームや患者会へのアクセスが重要と考えられた。
・患者の多くは、再発の割合を下げることができず、再発の時期を遅らせるだけだとしても、再発しない期間(DFS: Disease Free Survival)を大切に考えており、術後補助化学療法を受ける考えに共感していた。
・患者の多くは、再発によって自分の生活や気持ちが大きく変わってしまうことを防ぐために、やれることはやっておきたいという考えを持っており、患者にとって、普段の生活(仕事、家庭、人間関係、趣味など)を送れることは、治療に対する意思決定の重要な因子であると考えられた。
・ 患者にとって再発しない期間は、治癒への期待、個人的な人生のイベントの達成(子供の独立など)、健康寿命の延長、再発後の新たな治療法への期待につながっており、患者にとって重要な期間と考えられた。

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