オプジーボ 2021年度売上収益1000億円突破を予想  小野薬品相良暁社長

 小野薬品の相良暁社長は11日、Webによる2021年3月期決算説明会で会見し、オプジーボについて、「8月に薬価改定があるものの、2021年度は1000億円突破が見えてきた。オプジーボの効果を最大限に臨床現場に提供するため適用拡大を進めてきたが、その成果が着々と出てきている」と力説。その上で、オプジーボの増収要因として、「肺がんの一次治療の伸長と、今期後半に見込んでいる胃がんの一次治療の効能効果取得」を挙げた。
 基礎論文で新型コロナウイルス感染症に効果があると報告された「フオイパン」(慢性膵炎・術後逆流性食道炎治療薬)のP3相試験にも触れ、「5月中に結果が出るようにスピードアップしている。6月に結果分析して良ければ申請する。できるだけ早く進めたい」と明言した。
 小野薬品では、オプジーボの2021年度売上予想を1200億円としているが、この予想には8月1日の薬価引き下げを織り込んでいない。オプジーボの薬価引き下げ率は11.5%の見込みで、12日の中医協で審議される。
 相良社長は、「オプジーボは、上市した時から1/4の薬価になり、そこからさらに11.5%引き下げられる。薬価引き下げはルールに基づいて実施されているが、ルールにはまだ色々と議論の余地があると思う」と明言。さらに、「薬価制度全体から考えると色々なところで見直せるところがある。薬だけでなく、もっと広く医療費の財源を考えてほしい」と訴えかけた。
 一方、がんの中で最も患者数が多くオプジーボ増収要因の一つである非小細胞肺がんの直近(2021年1月~3月)の国内シェアは、オプジーボ16%、キイトルーダ62%である。シェア争いは今後も肺がんの一次治療が勝負になって来るが、「オプジーボとヤーボイ、化学療法の組み合わせにより一次治療のシェア30%を目指す」
 オプジーボ拡大の現況と課題についても「小野薬品のテリトリーである日・韓・台に多い消化器がんでは、胃がん、食道がん等で成果が出ており、新たな市場構築の見込みが立ってきた」と報告。
 その一方で、「消化器分野の中でも、膵臓がん、肝臓がん、大腸がんは、PD-1抗体でしっかりと効果を出せていない。オプジーボとの併用薬の組み合わせをリサーチしていくことが現在の課題である」と明かした。

売上収益3000億円突破も道半ば さらなる発展目指す

 相良氏は3000億円を突破(3093億円)した2020年度売上収益実績にも言及し、「従来の規模の2倍以上に伸長してきている。とはいえ、我々の保有する化合物でさらなる成長を続けられると考えている。まだまだ道半ばで、目標はもっと先にある」と言い切る。
 加えて、「現在の成長は、オプジーボの売上高によるところが大きいので、10年後のクリフに対してどう備えていくかという大きな課題も背負っている」とコメントした。
 相良社長は、今後の成長の大きなポイントとして「米国展開」を挙げる。小野薬品は、4月27日に米国現地法人であるONO PHARMA USA, INCをマサチューセッツ州ケンブリッジに移転し、新オフィスを開設した。新オフィス開設は、「米国での臨床試験展開、承認取得、販売」を目的としたもの。
 現在、開発チームの陣容構築中で、いくつかの化合物候補の中から、既に臨床試験入りしているものや、臨床試験準備段階のものがあるが、相良社長は、「大きなマーケットだが、まずは、ニッチなところから承認を取得する」考えを示す。
 4月21日に新発売した期待の新製品「エドルミズ(がん悪液質)」にも言及し、「2年間審査が進まない時期があり、難産の末に承認取得できた」と振り返る。その上で、「がん悪液質は、がんに伴う体重減少(特に筋肉量の減少)や食欲不振を惹起して体力が落ち、体も小さくなってくる」と説明。
 さらに、「抗がん剤投与中の患者さんは、エドルミズにより前向きに治療に取り組む気力が出てくる。残念ながら終末期を迎えている患者さんは、食事、入浴、トイレなどできるだけ長く日常動作が行えることで役立ってほしい」と期待を寄せる。
 また、今期の売上収益300億円(対前年比34.2%増)を見込んでいるSGLT2阻害剤「フォシーガ」の内訳についても、「糖尿病240~250億円、それ以外は心不全で、慢性腎臓病も少し寄与してくる」と述べた。
    

タイトルとURLをコピーしました