「デジタル×バイオ」時代の新事業モデル構築でバッカス・バイオイノベーションに出資  ロート製薬

 ロート製薬は3月31日、神戸大学発バイオベンチャーのバッカス・バイオイノベーション(本社:神戸市)の第三者割当増資を引き受けると発表した。
 今後、同社は、日本初となる生物を資源とした有用物質を生産するシステムである統合型バイオファウンドリーの実現を目指して、将来の循環型社会へ寄与すべくバッカス・バイオイノベーションとの連携を進めていく。
 これまでロート製薬は、一人ひとりの顧客を、そして世の中を健康にするために、既存のヘルス&ビューティー事業はもちろん、食、再生医療をはじめとした新しい挑戦を続けてきた。
 近年、世界では最新のテクノロジーと生物資源を用いて、地球規模の課題解決と経済発展の共存を目指す「バイオエコノミー」という考え方が台頭している。
 また、技術革新によるゲノム編集や DNA 合成といった技術に基づく「バイオテクノロジー」と、ビッグデータ、AI、自動化技術、IoT などが統合化された「デジタルプラットフォーム」との融合が急速に進んでいる。
 一方、日本ではバイオテクノロジー分野において専門性の高い技術革新に集中する傾向があり、統合型バイオファウンドリーが存在していないのが現状だ。
 そこで、「デジタル×バイオ」時代をリードする新たな事業モデル構築を目指すバッカス・バイオイノベーションへ出資し、研究においても共同で取り組みを深めることで、優先的に最新のバイオ技術・知財を取り入れ、ロート製薬の既存ビジネス領域の深化及び新規ビジネス領域への展開を推進していく。
 バッカス・バイオイノベーションは、昨年3月に設立された神戸大学発バイオベンチャー。神戸大学はバイオテクノロジー分野において国内有数の研究拠点を形成し、卓越した研究成果と経験豊富な人材を多数生み出してきた。
 その研究成果である先端バイオテクノロジー関連の知的財産権および人材をパッケージとして広義の技術移転を受け、微生物等による有用物質生産に関する受託サービスや自社プロダクトの開発等を行い、国内初の本格的な統合型バイオファンドリーの実現を目指す。事業化の先にバイオエコノミーの推進に貢献し、「デジタル×バイオ」時代における新たな産業を創造していく。


 バイオファウンドリーとは、最先端のバイオ工学分野の技術等を用いて遺伝子改変微生物を効率的に開発し、従来とは異なる持続可能な方法で有用な物質を生産する一連のシステムを指す(図参照)。
 その開発サイクルは、デザイン(D:遺伝子設計)・ビルド(B:微生物作成)・テスト(T:生産物質評価)・ラーン(L:学習予測)の頭文字をとって「DBTL」と呼ばれている。バイオテクノロジー、デジタル技術(IT・AI)、自動化ロボティクスを統合することで開発サイクル(DBTL)を高速に回転させ、合理的かつ効率的に遺伝子改変微生物の開発が行われる。
 たとえば、通常の酵母菌は糖を原料にアルコールを生産するが、酵母菌の遺伝子に人為的に手を加えれば、アルコールではなく、医薬品・香料・化学製品の原料をはじめ様々な有用物質の生産など有用物質を生産させることなどが既に実用化されている。

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