580万人のデータを用いて特定健診・保健指導の効果を検証 関西大学

関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構(RISS)の中尾葉子研究員(リーズ大学心血管代謝研究機構)、本西泰三研究員(関西大学経済学部)らは、580万人のデータを用いて特定健診・保健指導の効果を検証した結果、保健指導対象と指摘された人はそうでない人と比較して、男女ともに肥満指標がわずかに改善し、血圧、ヘモグロビンA1c、中性脂肪値も短期的な改善が見られたと発表した。
 心血管リスクや生活習慣も改善が認められ、実際に保健指導を受けた人の改善効果は、受けていない人より大きい可能性があるものの、その効果は年々減衰することも判った。
 厚生労働省より提供を受けた匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データ(ナショナルデータベース)を用いて分析したもの。
 生活習慣病である高血圧、糖尿病、脂質異常症は、増加の一途をたどっている。これら生活習慣病の罹患による動脈硬化の進行により、循環器疾患を発症する危険が増大する。循環器疾患は、国民医療費や要介護の原因の大きな割合を占めており、生活習慣病の予防と治療は不可欠である。
 特定健康診査(特定健診)・特定保健指導は、他国に類を見ない全国規模で実施されている日本独自の予防政策である。特定健診・保健指導で収集したデータは厚生労働省において蓄積され、匿名化された「匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データ(ナショナルデータベース)」は研究利用されている。
 同研究では、このナショナルデータベースを用いて、特定健診・保健指導により、その後の腹囲・体重等の肥満指標や心血管リスク、生活習慣に改善が見られるかを縦断的に検討した。データ分析に際しては準実験的手法の一つである、回帰不連続デザインを採用した。
 分析結果では、2014年に特定健診を受診した581万9041人(男性:349万0112人、女性:232万8929人)のうち、保健指導対象と指摘された人は、1年間で肥満指標がわずかに減少した(腹囲:男性 -0.27 cm(95% 信頼区間 [CI] -0.29 ~ -0.26);女性 -0.34 cm(-0.41 ~ -0.27)、体格指数:男性 -0.07 kg/㎡(-0.075 ~-0.066);女性 -0.11 kg/㎡(-0.13 ~ -0.10)、体重:男性 -0.21 kg(-0.22 ~ -0.19);女性 -0.28 kg(-0.32 ~ -0.24))。
 ただしこれらの効果は、時間の経過とともに減衰した。男女ともに、血圧、ヘモグロビンA1c、空腹時血糖、中性脂肪にも短期的な改善が見られた。
 さらに、その後保健指導を受けた人では、保健指導を受けなかった人より大きな改善が見られた可能性がある(腹囲:男性 -5.0 cm(95% 信頼区間 -5.3 ~ -4.6);女性 -5.7 cm(-7.0 ~ -4.4)、体格指数:男性 -1.3 kg/㎡(-1.4 ~ -1.2);女性 -1.9 kg/㎡(-2.1 ~ -1.6)、体重:男性 -3.8 kg(-4.0 ~ -3.5);女性 – 4.7 kg(-5.3 ~ -4.0))。
 また、保健指導は男性の血圧、ヘモグロビンA1c、空腹時血糖、中性脂肪、およびHDLコレステロールの改善と関連していたが、関連の大きさは女性でより小さくなった。

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