ボストンに研究開発用の細胞医薬品製造施設を新設   武田薬品

 武田薬品は16日、米国マサチューセッツ州ボストンの研究開発拠点内に、研究開発用の細胞医薬品製造施設(cGMP施設、2万4000㎡)を新設したと発表した。cGMP施設の新設は、同社の細胞療法におけるリーダーシップ力を強化し、グローバル臨床試験に向けて革新的な細胞医薬品の製造能力拡張を目的としたもの。5つのがん領域の細胞療法共同プログラムにおいて、2021年度末までに臨床開発を実施する予定だ。
 新施設では、エンド・ツー・エンドの研究開発を行い、当初はがん領域に重点を置き、他の疾患領域への拡大の可能性を探りながら、武田薬品の次世代細胞療法開発に向けた取り組みをさらに加速する。
 がん領域の細胞療法は、免疫細胞の遺伝子ががん細胞を認識して破壊することができるように遺伝子操作を加えた免疫療法の一種だ。細胞医薬品は、生きた細胞の操作を行うため、清浄度と一貫性のあるコンタミネーションコントロール(汚染管理)が維持できる厳しい管理下の環境で製造する必要がある。新cGMP施設のがん領域の細胞療法プラットフォームは、調製、製造、輸送、さらには最終的な患者への投与に対しプロセスごとに満たすべき独自の要件を有している。
 次世代細胞療法は、武田薬品ががん領域において免疫系のリダイレクトに重点を置いて研究を進めている基盤技術の1 つ。先天性免疫を利用した多様ながん免疫療法プログラムを有する武田薬品のパイプラインには、革新的な細胞療法や免疫関与プラットフォーム、先天性免疫の調節、新たな基盤となる免疫チェックポイントプラットフォーム、腫瘍溶解性ウイルスが含まれている。
 今回開設した研究開発用の細胞医薬品製造施設では、創薬段階からP2b相臨床試験までの臨床評価に用いる細胞医薬品を製造する。現行のGMP(cGMP)を取得した同施設は、米国、欧州および日本の規制当局が課す細胞医薬品の製造要件を満たすよう設計されており、同社が世界各地で行う臨床試験を支援する。
 新施設により、同社の細胞医薬品の可能性と生産能力が強化され、ノーベル賞受賞者である京都大学の山中伸弥教授(iPS細胞)、Gamma Delta Therapeutics の Adrian Hayday Ph.D(γδT 細胞)、ノイルイミューン・バイオテック(ノイル社)の玉田耕治教授(武装化 CAR-T)、Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSK)Michel Sadelain, M.D., Ph.D.(次世代CAR)、The University of Texas MD Anderson Cancer Center(MD Anderson)の Katy Rezvani, M.D., Ph.D.(CAR-NK)と連携して進めている複数の次世代がん免疫療法プラットフォームやプログラムの開発のさらなる加速が期待される。
 武田薬品とMD Anderson は、ベスト・イン・クラスの他家細胞療法となる可能性のあるTAK-007の開発を進めている。同剤は現在P1/2 試験段階にある CD-19 標的キメラ抗原受容体導入ナチュラルキラー(CAR-NK)細胞医薬品で、既製化細胞医薬品となる可能性について、再発または難治性の非ホジキンリン パ腫(NHL)と慢性リンパ性白血病の患者を対象とした試験が行われている。
 また、2つの同社細胞療法プログラムのP1相試験を開始しも見逃せない。1 つは、MSKと共同開発している再発または難治性 B 細胞がんを対象とした次世代 CAR-Tシグナル伝達ドメインである19(T2)28z1xx CAR-T細胞(TAK- 940)の試験で、もう1つは、ノイル社と共同開発している治療歴のあるGPC3発現固形がんを対象としたサイトカインとケモカインを産生する武装化 CAR-T(TAK-102)の試験だ。
 次世代細胞療法の開発と提供においては、研究開発と商業生産との間に積極的かつ密接な連携が重要となる。武田薬品のCell Therapy Translational Engine(CTTE)により、臨床におけるトランスレーショナルサイエンスと、製品設計、開発、そして製造が、研究開発および商業化の各段階を通じて連携する。
 また、CTTEにより、バイオエンジニアリング、CMC(化学・製造・品質管理)、データ管理、分析、臨床およびトランスレーショナルサイエンスの専門家の能力が結集し、細胞療法の開発において直面する多くの製造の課題に取り組んでいく。

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