塩野義の新型コロナワクチン開発が厚労省の「ワクチン生産体制等緊急整備事業」に採択

 塩野義製薬は7日、厚生労働省が公募する「ワクチン生産体制等緊急整備事業」に採択されたと発表した。同社では今後、自己資金に加えて、同採択により厚生労働省から獲得した約223億円、経済産業省からの150億円の助成金を活用して、生産体制の構築・増強を加速していく。
 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の世界的な蔓延による社会の混乱が続く中、塩野義製薬は、医薬品の安定供給に努めるとともに、感染症を重点疾患領域に掲げる製薬企業として、公的機関やアカデミア、パートナー企業と連携し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬やワクチン、診断薬の開発に鋭意取り組んでいる。 今回の「ワクチン生産体制等緊急整備事業」に採択に伴い、予防ワクチンに関する進捗状況を次の通り公表した。

1.ワクチン開発に向けた取り組み
 同社は、グループ会社のUMNファーマが有するBEVS(昆虫細胞などを用いたタンパク発現技術)を活用した遺伝子組換えタンパクワクチンを開発している。2020年内の臨床試験開始に向けて、現在、共同研究先である国立感染症研究所において、タンパク抗原候補およびワクチンに添加されるアジュバント候補の免疫原性試験が実施されている。抗原およびアジュバントを選定後、臨床試験開始に必要な安全性試験等を速やかに実施する予定である。
 塩野義製薬は、これらの開発計画と並行して、国内で唯一BEVS技術を用いた遺伝子組換えタンパクワクチンの製造実績を有するアピ(本社:岐阜市)ならびにそのグループ会社であるUNIGEN(本社:岐阜県揖斐郡)と提携し、早期提供の実現に向けた生産体制の立ち上げを進めている。同社は、2021年末までに3000万人分以上のワクチン生産を目標に、自己資金に加えて本年7月17日に採択された経済産業省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金(150億円)」および、今回の厚生労働省からの助成金(約223億円)を活用して、生産体制の構築・増強を加速していく。

2.治療薬の創製に向けた取り組み
 北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターとの共同研究において見出された新型コロナウイルス株に対する有望な化合物群をはじめ、後続化合物の薬効、安全性等の探索的な評価を順次実施し、最終候補化合物を選抜中。同社は、引き続き2020年度内の臨床試験開始を目指して、ワクチン開発とともに同創薬研究を最優先で進めていく。

3.診断薬の開発に向けた取り組み
 同社は、日本大学、群馬大学、および東京医科大学とのSARS-CoV-2を含むウイルスの新規迅速診断法に関するライセンス契約に基づき、同共同研究チームが開発した革新的核酸増幅法(SATIC法:Signal Amplification by Ternary Initiation Complexes)を用いたSARS-CoV-2感染に対する迅速診断の実用化に取り組んでいる。SATIC法は、検出機器を必要とせず、目視かつ25分程度という短時間で感染の有無を判定できる手法で、PCR法と同等の高い感度で、採取容易な唾液や喀痰サンプルからの検出を可能とする優れた特徴を有している。現在、本年9月の提供開始を目標に、体外診断用医薬品としての承認申請準備と製品化検討を実施している。
 これらと並行して、より簡便かつ多検体の迅速診断を可能とする改良型(キット)の早期提供に向けた製品開発ならびにスケールアップ検討を進めていく。
 なお、塩野義製薬は、既感染者数の把握を目的としたSARS-CoV-2/COVID-19の疫学調査や研究などを目的とした新型コロナウイルスIgG/IgM抗体検出キットを研究用試薬として販売している。
 同社は、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として「感染症の脅威からの解放」を特定し、治療薬の研究・開発だけにとどまらず、啓発・予防・診断ならびに重症化抑制といった感染症のトータルケアに対する取り組みを進めている。

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