がんのスクリーニング検査および診断検査のリーディングプロバイダーであるエグザクトサイエンス(米国)は8日、オンラインで開催された2020年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表したオンコタイプDX乳がん再発スコア検査に関する3つの研究の結果を公表した。
これらの研究で得られた所見は、オンコタイプDX検査がホルモン受容体陽性、HER2陰性乳がん女性の術前治療実施における判断の個別化および改善に役立つことを強調するもの。ASCOでは、オンコタイプDX乳がん再発スコア検査について、新規に診断された患者における術前化学療法の指針としての有用性を、新たなデータおよび学会ガイドラインが支持した。これらの結果は、世界中の医療システムで待機的手術の遅延を引き起こしている新型コロナウイルスパンデミックにおいて有用性を発揮するものとして注目されている
オンコタイプDX検査の 新型コロナウイルスパンデミックにおける有用性についてアンソニー・ルッチ氏(M.D.アンダーソンがんセンターの乳腺腫瘍外科教授)は、まず、「世界中の医療システムにおいてCOVID-19パンデミックに対応するために、腫瘍のスクリーニングと診断、さらには待機的手術を延期する決定が下されている」現状を指摘する。
さらに、「ASCO20で発表された新しいデータに基づき、オンコタイプDX 検査は術前化学療法が奏功する可能性が低い女性を特定した。このような女性は手術を待っている間に、在宅での術前内分泌療法などの代替的なアプローチを行うことで恩恵を得られるかもしれない」とコメント。
その上で、「このアプローチは、公衆衛生上の危機の中、私たちと患者が現在直面している特別な課題のいくつかを克服する可能性がある」と訴えかけた。
ASCO20で発表された研究の一つには、Young Women’s Breast Cancer Studyの多施設前向き群から、乳がんと診断され術前化学療法を受けた40歳以下の76人の女性が含まれている。手術前に患者から採取したコア生検の腫瘍検体にオンコタイプDX検査が実施された。
その結果、再発スコア結果が高い患者ほど、化学療法で病理学的完全奏効(pCR:残存浸潤性腫瘍なし)を達成する可能性が高いことが明らかになった。殆どのpCRは、再発スコア結果が26以上の患者で達成された。対照的に、再発スコア結果が0から25の患者でpCRとなったのは2人のみであり、その再発スコア結果はいずれも21から25の間であった。これらの所見は、過去に発表された高齢の乳がん患者を対象とした術前治療の研究と一致している。
2つ目の研究はスペインで実施され、コア生検の腫瘍検体に対しオンコタイプDX検査を実施した後、術前化学療法を受けた63人の患者群を前向きに分析したもの。この分析でも、pCRと再発スコア結果との間に強い相関関係が示された。特に、再発スコア結果は、Ki67(代表的な予後因子)、エストロゲン受容体の状態、初診断時の腫瘍径などの他の因子と比較して、最も有意なpCRの予測因子であった。再発スコア結果が0から25の患者はいずれも、pCRに達しなかった。
3つ目の研究では、オンコタイプDX検査を手術前に実施し、再発スコア結果が0から30の患者は術前化学療法を行わずに術前内分泌療法のみを受けた。4か月の治療を受けた142人の患者のデータより、97%に臨床的奏功または安定が認められ、再発スコア結果が31未満の患者では増悪のリスクは最小限であり、術前内分泌療法を単独で安全に実施できることが示唆された。
既存のエビデンスに加えて、ASCO20で発表された新しいデータは、最近の新型コロナウイルスパンデミックにおける勧告の観点からも、オンコタイプDX検査の価値をさらに高めるものである。コア生検検体数は、全オンコタイプDX乳がん再発スコア検査実施数の14%を占め、その検査成功率は98%以上である。
オンコタイプDX検査は、早期乳がんにおける化学療法の効果と再発リスクを予測できることが検証された唯一の多遺伝子検査である。乳がんは日本の女性に最も多いがんであり、多くの女性が仕事や家庭に一生懸命な時期に発症するす。化学療法は日常的に行われているが、実際には化学療法の恩恵を受けている早期乳がん患者は少数派であることが研究で示されている。
オンコタイプDX検査は、個々の乳がんの生物学的情報を提供することで、個別化された臨床的意思決定を容易にするように設計されており、医療システムに経済的な利益をもたらす可能性がある。