19日に「酸素センシング調節機構を標的としたがん・炎症性疾患の制御」テーマにオンラインセミナー開催 iCONM

 ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)は、今年度初めてとなる iCONM 学術セミナーを5月19日午後2時半よりオンラインで開催致する。
 セミナーでは、「酸素センシング調節機構を標的としたがん・炎症性疾患の制御」をテーマに、今年度よりiCONMの客員研究員となった坂本毅治関西医科大学附属生命医学研究所・学長特命教授が講演する。

正常細胞は通常、ミトコンドリアを介した好気的呼吸により活動エネルギーの源となるATPを産生するが、疾患に罹患して低酸素状態に置かれると解糖系を主体とした嫌気的呼吸を行うように調整される。坂本氏の講演では、そのメカニズムや制御について解説する。オンライン参加には、事前登録が必要で、事前申込みURLは、 https://forms.gle/ELLkovrVgPKe76WQ7、申込締切日は5月15 日15 時。講演要旨は、次の通り。

坂本氏

 酸素は生命機能の維持に必須であり、多くの細胞ではミトコンドリアによる酸化的リン酸化を介して効率よくATPが産生されている。正常臓器では比較的安定した酸素分圧環境にあるが、がんや急性炎症など病的な組織では、限りなく無酸素に近い領域から比較的酸素が豊富な領域まで様々な酸素分圧が存在するため、細胞は酸素分圧に応じたエネルギー代謝適応をする必要がある。
 多くの研究により、細胞がどのように酸素分圧を感知し、その酸素分圧に適応していくかについての分子機構が明らかとなり、その中心的な役割を果たす転写因子 hypoxia-inducible factor (HIF)とプロリン水酸化酵素(PH) を発見・解析した3名の科学者に2019年のノーベル医学生理学賞が受賞された。
 さらに、 HIF-PHを標的とした腎性貧血や一部の遺伝性がんに対する薬剤も開発され、臨床現場で使用され始めている。一方で、HIFの制御機構の多様性や、HIFの生体ホメオスタシスへの重要性も明らかになってきているため、より疾患特異性の高いHIF制御機構を標的とした創薬が期待される。
 同セミナーでは、HIF-PH を中心とした酸素分圧への適応機構を簡単に紹介したのち、坂本氏らが同定した細胞種特異的な HIF 活性化分子 Mint3 について、Mint3 による HIF 活性化のメカニズムと、特にがん細胞とマクロファージでの役割を中心としたがん・炎症性疾患の悪性化機構を紹介。最後にMint3を標的とした創薬の可能性とMint3阻害化合物のマウスレベルでの効果についても報告される。

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