新型コロナウイルスに関する電話メンタル相談件数・内容の推移を分析 ティーペック

 ティーペック(本社:東京都)は26日、同社が提供する電話によるメンタルヘルス相談の分析結果を公表した。本年3月1日から5月12日の期間に受けた全ての相談データから「新型コロナウイルス」をキーワードに抽出した相談件数と内容の推移を分析したもの。
 その結果、「相談件数は緊急事態宣言発令前後で急増」、「最も相談件数の多かった期間(4月22日~4月28日)で全メンタルヘルス相談件数に占める40%以上が新型コロナウイルス関連」、「自粛生活長期化により、DVや自殺リスクの顕在化」、「4月に入りハラスメント相談事例が急増」、「自治体や事業主の対策課題も浮き彫りに」、「アフターコロナに向けて、適切な相談先確保が急務」などが判明した。
 データの詳細は次の通り。


 ◆新型コロナウイルス関連電話によるメンタルヘルス相談件数=3月より、同社の電話によるメンタルヘルス相談の中から「新型コロナウイルス」をキーワードにして抽出した。4月7日の緊急事態宣言の後で、件数が増加し、4月22日から4月28日は相談に占める割合が40%以上となったが、国内の新規感染者数の増加が緩やかになるに伴い、相談件数も徐々に減少している。


 ◆新型コロナウイルス関連電話によるメンタルヘルス相談内容の推移


  緊急事態宣言発令の4月中旬より暴力行為(DV)発生や悪化など相談内容の深刻さが増している。相談の中には、コロナの影響による失業など大きなストレスによって、自殺のリスクが高まっているものもあった。孤独感が高まれば一層リスクが高まるので、相談先の確保の重要性がが示唆された。 緊急事態宣言が延長となってからは、感染の不安や心身の不調に関する相談に加え、宣言解除の見通しが持てないことによる「自粛疲れ」や「収入減」、「失業」など、経済的な不安に関する相談が増えている。
 また、新しい取り組みとして、オンライン形式での業務や会議、授業への不慣れさや、疲労に関する相談も散見される。家族間の暴力行為(DV)や、自殺リスクのある相談は、継続しているため、引き続き支援が必要である。連休明け以降、国内の新規感染者数の増加が緩やかになってくると、相談の内容の広がりも落ち着いてきている。
 ◆主な相談内容についての考察
・メンタルヘルス不調の悪化・感染の不安=ストレスがかかることにより、元々持っていたメンタルヘルスの不調や身体的な症状に関する不安などがより表に現れてきている。さらに、ウイルスは目に見えず、感染者がどこにいるかも分からないため、「自分も感染してしまうのではないか」と不安に思う気持ちも多く語られている。
 また、今までできていたストレス発散の方法が、「特に3密になりやすい趣味や気分転換を中心にできなくなる」、または「制限がかかることにより、ストレスが溜まりやすくなっている」ことが窺える。
 電話によるメンタルヘルス相談では、新型コロナウイルス問題はいつまで続くか不明確であるため、現状でできるストレス発散の方法について、「新たに見つけたり、既存の方法を工夫したりして、自分のストレス解消法のレパートリーを増やす」ことも重要と伝えている。
・家族間の問題・孤独の問題=家族間の問題では、問題があってもこれまでは物理的な距離を取ることで、感情的にぶつかり合うことを避けてきた家族においては、外出自粛により夫婦・親子・親戚間の問題が表面化してきているようだ。さらに、外出自粛が長期化するにつれ、葛藤が積み重なり、イライラ感が増加している状況と考えられる。
 また、これまで問題を抱えていなかった家族においても、感染症に対する受け止め方、感染症への家庭での対策についてなど、価値観の差が明らかになることにより、もめごとが増えている様子が見受けられる。
 一方、一人暮らしの人から、「孤独問題の発生」、もしくは「悪化している」相談も増加している。これは、今まであれば外出して気分転換を図っていたところ、今は気軽に外出できないことや、友人や趣味を共有する仲間との交流を得る機会が乏しくなっていることが要因に挙げられる。
・経済的な問題による不安や自殺のリスク=緊急事態宣言発令による自粛要請が長期化するにつれ、収入の減少や失業など経済的な問題が顕在化している。収入の減少により、日々の生活、住宅ローンの返済や子どもの学費の支払いへの影響を不安に感じる気持ちが多く語られている。
 特に、事業主や非正規労働者の方の相談は、失業や失職の危機に直面し、切迫している様子が窺える。失業や失職は、自殺リスクとの関連性も示唆されているため、メンタルヘルスのケアに加え、適切な相談先を用意することが重要であると考えられる。
・ハラスメントに関する問題=ハラスメントに関する相談の中で、新型コロナウイルス関連の内容の相談は、全国的に、会社や大学などの教育機関の自宅勤務・自宅勤務指示がはじまった4月から急激に件数が増えた。
 在宅勤務になり、同僚同士の自発的な情報共有のグループに入れてもらえないなど、対人関係の問題の表面化、および改善のための行動が起こし辛いことが影響する例も散見される。
【総括】
 新型コロナウイルスによるメンタル不調は、ストレスが多くかかる(入ってくる)だけでなく、自粛等の制限により今までのストレスを発散する(出す)ことができなくなりストレスが非常に溜まりやすくなることが特徴である。
 今後、今の状況が長期化するにつれて、どのような人でもメンタルヘルスの不調をきたす可能性が高まることが考えられる。そのため、適切な相談先をもつことが重要となる。

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