新中期経営計画初年度として成長基盤の強化を推進  塩野義製薬手代木社長

 塩野義製薬の手代木功社長は11日、オンラインによる決算説明会で会見し、「新中期経営計画の初年度となる2020年度は、新型コロナによる非常事態対応を生産性向上のための機会と捉え、成長基盤の強化推進に尽力する」考えを強調した。
 その具体策として、「新型コロナ流行の長期化を見据えたサプライチェーンマネジメントによる安定供給の徹底」、「ストリーム・アイのツールやe-detailによる医師のアンメットニーズの把握と情報提供の効率化」、「症例数の国ごとの配分の見直し、バーチャル臨床試験の検討」、「テレワーク期間を活用した“捨てる業務”の選別と、マネジャーの管理・育成力の強化」を挙げた。
 2020年度は、売上高3235億円(対前年比3.0%減)、営業利益1103億円(同16%減)、当期純利益1036億円(同15.3%減)の減収・減益予測からスタートする。GSKや、クレストール(アストラゼネカ)のアライアンスに関連する一過性の減収を、新製品の売上拡大で補えず減収減益を予測したもの。
 「売上収益がマイナスになるのに対して、海外のセフィデロコル(抗菌薬)、日本ではインチュニブ(ADHD)を始めとする新製品の拡大や、新型コロナ治療薬・ワクチンの開発で販管費、研究開発費が上昇する」とその要因を指摘する手代木氏。さらに、「為替水準も相当円高にするなど、悪材料についてはかなり織り込んで2020年度の予測を作成した」と説明する。その一方で、「中国平安保険との業務提携や新型コロナワクチンを含めたプラス要因は加味していない」
 塩野義製薬では、「2011年以降公表してきた数字は決して下回ることなく、固めの予想を出してマーケットの期待に応えてきた」実績がある。
 だが、2019年度の業績は、売上高3350億円(対前年比7.9%減)、営業利益1252億円(同9.6%減)、当期純利益1213億円(同8.6%減)と予想を下回った。これに対し手代木氏は、「忸怩たる思い」とした上で、「2019年度は、インフルエンザファミリーの国内売上減少の影響が大きく、計画を大幅に下回った。インフルエンザファミリーを除くと、売上高は修正予想通りに着地した。ビジネスそのものが崩れている状態ではない」と分析した。
 一方、2020年度は、「新中期経営計画(6月1日発表予定)の初年度に当たるため、そこを含めて結構固めのスタートを切る」と断言。その上で、「着地の仕方によっては、減収減益ではなく、横ばい、上振れも狙っている」と意気込んだ。
 2019年度は不調に終わったゾフルーザについても、「低感受性・耐性ウイルスは、昨年9月初めから国内外で殆ど出ていない。一昨年の一番高いデータで8%くらい出たが、この2冬を通すことで一定の見解が伝わるのではないか」と強調。「ガイドライン等をもう一度見直して頂いて普通に使える環境に持っていくのが我々の役割である」と訴えかけた。
 併せて、「副作用が少なく短期で効く薬剤へのニーズは、今回の新型コロナウイルスの拡大で非常に感じている。ゾフルーザの出番が増えているのではないか」との見解を示した。
 開発中の新型コロナウイルス予防ワクチンにも言及し、「全く同じ抗原タンパクを用いるわけではないが、サノフィとGSKが共同開発しているものと概念的に似ている」と述べた。
 同社が開発するワクチンも、抗原タンパクを作成して昆虫細胞で増やし、それを抗原として接種するもの。海外ではインフルエンザワクチンなどがこの手法で製造されており、「既に実用化されているメリットがある。製法としては、かなり確立されている方法で、チャレンジしたい」と抱負を述べた。なお、同社のワクチンは、2020年内の臨床入りを目指している。
 また、IgG/IgM抗体検査キットは、診断薬としてではなく疫学調査等で使用されるため、当局の承認を得るステップは踏まなくて良い。「色々なデータを集めて使い方を提示すれば販売可能なため、1カ月以内での上市を予定している」
         

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