アカラブルチニブ 新型コロナを対象とした治験開始 アストラゼネカ

 アストラゼネカは22日、血液がん治療薬の次世代選択的BTK阻害剤「アカラブルチニブ」について、新型コロナウイルス感染症を対象としたCALAVI試験を開始したと発表した。CALAVI試験は、新型コロナウイルス感染症の重症患者に関与すると考えられている過剰免疫反応(高サイトカイン血症)に対して、アカラブルチニブの効果を評価する無作為化国際共同試験。ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の炎症性サイトカイン産生へのかかわりを実証した強い科学的エビデンスおよび良好な初期臨床データに基づいて設計された。
 新型コロナウイルスによる致死的症状を示す患者において、死亡率の低下と人工呼吸器の必要性の低減を目的に、ベストサポーティブケアの補助療法としてアカラブルチニブ追加による有効性、安全性の検証を目的に実施されている。アカラブルチニブは、現在いくつかの血液がんの治療薬として治験中の高選択性の次世代BTK阻害剤だ。
 CALAVI試験は、BTK阻害による炎症抑制が、新型コロナウイルス感染による呼吸窮迫症状を軽減することを示した、アカラブルチニブの初期臨床データに基づいたもの。この大規模な多施設無作為化国際共同試験では、対象患者を2つのPartに分けるデザインを採用しており、早期にデータの抽出および分析ができるよう、記録的な速さで準備された。
 Part1は、集中治療室(ICU)に入室していない新型コロナウイルス感染症の入院患者を対象に、ベストサポーティブケア単独療法とベストサポーティブケアにアカラブルチニブを追加した併用療法を比較・評価する。
 Part2では、ICU 入院患者を対象に、ベストサポーティブケア単独療法とベストサポーティブケアにアカラブルチニブを追加した併用療法を評価する。
 アストラゼネカ・オンコロジー研究開発エグゼクティブバイスプレジデントのJosé Baselga氏は、「本試験は、サイエンス・コミュニティで発見された新しいインサイトを活用したものである。アカラブルチニブをベストサポーティブケアの補助療法として加えることで、人工呼吸器の必要性の低下、生存率の向上が実証されると期待している」とコメント。さらに、「アストラゼネカがこれまで行ってきた試験の中で、この試験は最も速いスピードで準備された」と明かす。
 米国国立がん研究所(NCI)リンパ性悪性腫瘍科の責任者のLouis M. Staudt氏は、「炎症の抑制におけるBTKタンパクの役割が十分立証されてきたことを踏まえれば、アカラブルチニブによるBTK阻害は新型コロナウイルス性の重度肺疾患患者にとって有益な治療となる可能性がある」との考えを示している。

タイトルとURLをコピーしました