新型コロナウイルスに対する有望な化合物を確認   塩野義製薬

 塩野義製薬は、新型コロナウイルス感染症に対する創薬研究を北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターと協業で開始している。19日に開催したR&D説明会で明らかにしたもの。社内に有する候補化合物の中から、新型コロナに対して有望な化合物を確認している。
 同社は、従前より北海道大学内に自社の研究所を保持しており、産学創出分野制度を利用した北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターとの協業を長く行ってきた。コロナウイルスに対する治療薬の探索研究についても、今回の騒ぎが始まる前から実施している。
 北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターは、「国内屈指の感染症研究施設」、「様々な分野の専門家が結集」、「アフリカにも拠点を持ち、人獣共通感染症に特化した研究・教育を推進」を特徴とする。一方、塩野義製薬は、「感染症領域の疾患研究」、「低分子・中分子などの様々なモダリティを用いた創薬力」、「予防、診断、治療までを対応」などが強みだ。
 これらの強み・特徴を併せることで、過去の研究プログラムで得た知見をもとに新興再興感染症に関する創薬や、新型コロナウイルス株を使用した創薬研究を進めている。
 具体的には、国立感染研から分与された新型コロナ株を使ったアッセイ系の構築を早急に推進。3月半ばにこのウイルスを使った信頼のおける試験系を構築し、16日の週から化合物の探索を実施している。
 塩野義製薬は、ドルテグラビル、ゾフルーザなど独自の抗ウイルス薬をこれまで研究開発してきた実績を持ち、非常にバリエーション豊かなライブラリーを保有している。そういった化合物の中から研究者の経験に基づいて化合物を選抜し、in vitro試験結果により、新型コロナウイルスに対する有望な化合物の確認を行っている。
 その一例として、社内化合物1が、新型コロナ株に対して0.1µMという非常に強い薬効を示すことを見出した(既存のコロナ株には0.4µM)。まだ、スループットが悪いため、現段階では結果公表はできないものの、化合物1とは全く化学構造が異なる化合物2、化合物3についても、既存のコロナ株に対してそれぞれ0.22µM、0.25µMの薬効を示しており、新型コロナ株にも期待が持てる。
 現在、新型コロナウイルス感染症に対する臨床試験が進められているカレトラ(抗HIV薬)や、アビガン(抗インフルエンザ薬)と比べても、塩野義製薬は遜色のない化合物を所持している。
 同社では、「SARS、MERS、SARS-CoV-2がもたらした社会への不安、経済への影響を踏まえ、感染症をコア領域とする創薬型製薬企業の使命として、今後のパンデミックに備えた創薬を展開する」考えを示している。
 一方、診断薬についてもマイクロブラッドサイエンスと、新型コロナウイルスIgG/IgM抗体検査キット(COVID-19抗体検査キット)製品の導入に向けた業務提携の協議を開始している。同キットは、先指血1滴で測定でき、10分で結果が得られる感度94%、特異度97%の高性能を誇る。
 国が進めているPCR法は、患者特定に必須の検査方法であるが、その一方で性能が悪いところがある。塩野義製薬は、「COVID-19抗体検査キットはPCR法に置き換わるものではない。それぞれの強みを活かして、上手くすみ分けることで社会の混乱を鎮静化していきたい」としている。

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