4月1日より田辺三菱製薬社長に就任する上野裕明取締役常務執行役員は19日、大阪市内のホテルで会見し、第3四半期の主力製品の進捗状況について言及。国内は、「レミケード、シンポニー、ステラーラの免疫・炎症領域、テネリア、カナグル、カナリアの糖尿病領域、ワクチン領域」、海外は「ラジカヴァ(米国)」のいずれもが「計画通り順調に推移している」と報告した。また、三菱ケミカルホールディングス(MCHC)による同社の完全子会社化については、「2月26日に東京証券取引所最終売買日となり27日を以て上場を廃止、3月2日にMCHCの完全子会社となる」スケジュールを示唆。現在、三菱ケミカルホールディングスグループ各社間で議論しているグループシナジー創出や時期経営計画は、「本年10月に発表する予定にある」と語った。
主力製品の第3四半期累計は、レミケード424億円、ステラーラ203億円(通期予想203億円)、テネリア120億円、カナリア55億円。SGLT-2阻害薬のカナグルは、「糖尿病性腎症に対する国際共同治験 CREDENCE試験で好結果」を得ており、4月1日付けで糖尿病腎領域部(約50名)を設置して2020年度上市予定のMT-6548(腎性貧血)、テネリア、カナリアとともに「適正な情報提供による製品価値向上」を図っていく。カナグルは、「本年1月に第3回日本医療研究開発大賞/内閣総理大臣賞を受賞した」
ワクチンの2019年度4-12月マーケットシェアは、22.8で国内トップを誇る。インフルエンザは、シーズン前の出荷開始により第3四半期累計124億円となった。
米国のラジカヴァは、第3四半期累計173億円で、計画通り推移している(通期予想220億円)。
グローバル開発品の状況は、ALS治療薬MT-1186(ラジカヴァ経口剤)が昨年11月にグローバルP3試験を開始。すでに、日本、米国で発売しているラジカヴァは、各国・地域への承認申請を並行して進め、市場拡大中で、11月にインドネシア、12月にタイで申請した。
ニューロダム社で実施しているND0612(パーキンソン病)の長期安全性試験(BeyoND試験)は、昨年10月に1年投与計画を終了して現在データを解析中で、グローバルP3試験(BouNDless試験)も推進している。MT-2271(季節性インフルエンザワクチン)は、米国での承認申請に向けてFDAと協議中。
上野氏は、今後の上市計画についても「2020年以降MT-6548(腎性貧血・国内)を始め、自社開発品の製品が日本・中国、グローバルで毎年発売されていく」と断言。その中で、2022年度上市予定のMT-7117(赤芽球性プロトポルフィン症・グローバル)は、「既にPOCを取得しており、光過敏症発現予防薬として開発を進めており、2018年にはFDAよりファーストトラック指定を受けている」と説明した。さらに、「現在、後期開発準備中で、2020年度にP3試験を開始し、2021年に米国申請を予定している」と述べ、同品上市に向けて期待を寄せた。
MCHCが次期中期経営計画として策定を進めている「KV30(快適ビジョン、2030年ポートフォリオの柱)」にも言及し、「田辺三菱製薬が、プレシジョンメディシン、再生医療、予防医療、などをキーワードに今後もグループのヘルスケアビジネスをけん引していく」と意気んだ。
現在、MCHCでは、シナジー創出委員会を設置して、グループ(三菱ケミカル、田辺三菱製薬、生命科学インスティチュート、大陽日酸)各社間におけるバイオテクノロジー、化学、デジタル分野技術と人材の機動的かつ柔軟な活用によるグループシナジー発現に向けた議論を展開している。
上野氏は、「グループシナジー創出の具体的な施策や時期経営計画を本年10月に発表する」スケジュールを明かした。
新型コロナウイルス対策では、「天津、上海、北京の事業所に派遣した日本人は一旦帰国させている。現地の従業員は基本的に自宅勤務をベースとしており、幸い感染者は出ていない」と報告。その上で、「中国子会社の事業継続に必要な最小限の日本人は職務内容を検討して陣頭指揮に当たらせる」考えを示した。日本での対応は、「時差出勤、テレワークを推奨している」と述べた。